寛一郎と池松壮亮と共演した主演作『せかいのおきく』の黒木華はある意味「最強の女子」だった!

2023/5/3 22:00 龍女 龍女


(『せかいのおきく』のポスター。 撮影by龍女)

筆者は5月1日にメインの上映館であるテアトル新宿へ行ってきた。
15:00からの回であった。
あらすじは公式サイトの記述に筆者が補足する。

22歳のおきく(黒木華)は、武家育ちでありながら今は貧乏長屋で父(佐藤浩市)と二人暮らし。
毎朝、便所の肥やしを汲んで狭い路地を駆ける中次(寛一郎)のことをずっと知っている。
ある時、喉を切られて声を失ったおきくは、それでも子供に文字を教える決意をする。
雪の降りそうな寒い朝。やっとの思いで中次の家にたどり着いたおきくは、身振り手振りで、精一杯に気持ちを伝えるのだった。
江戸末期(安政5年から文久元年。1858~1861)、東京の片隅。おきくや長屋の住人たち(石橋蓮司ら)は、貧しいながらも生き生きと日々の暮らしを営む。
そんな彼らの糞尿を売り買いする中次と矢亮(池松壮亮)もまた、くさい汚いと罵られながら、いつか読み書きを覚えて世の中を変えてみたいと、希望を捨てない。
お金もモノもないけれど、人と繋がることをおそれずに、前を向いて生きていく。
そう、この「せかい」には果てなどないのだー。


となっている。
序章から終幕まで9つの章に分れている、テンポの良い構成になっている。


(『せかいのおきく』の1シーンから イラストby龍女)


映画は主に
おきく(黒木華)
中次(寛一郎)
矢亮(池松壮亮)
の3人の話である。

第5章の「ばかなおきく」で、おきくが長屋の自分の部屋で一人「ちゅうじ」と好きな男の文字を書いて、はしゃいでいるシーンを観て
筆者は
「女子中学生か!」
と思って笑ってしまった。
中学時代に某アイドルに夢中になって、自分の名字を好きなアイドルの名字に変えてはしゃぐ同級生を観てドン引きしたのを思い出したからだ。
おきくは22歳で、当時では「いきおくれ」と言われる年である。
黒木華自身はインタビュー(パンフレットを参照)によると、
「私はおきくと違ってドライなので、あそこまではしないと思います(笑)」
筆者は朝ドラ『純と愛』(2012年10月~2013年3月)で黒木華が計算女を演じていたのを一瞬思い出してしまった。


(映画館ロビーに展示してあった寛一郎と池松壮亮の衣装と小道具 撮影by龍女)

この映画の話題をする場合、糞尿を扱っているので、これまでの常識としては食事中の話題にしにくい。
それに対して問題を提起する。
リサイクルをテーマとしている。
セットや小道具もこの作品限りではなく、今後の時代劇に使えるように考えられているそうだ。
更に後半におきくは喉を切られて喋られなくなるので、黒木華はサイレント映画のようなパントマイム的な演技をする。
映画本編の舞台となる江戸末期当時は手話が無かったそうで身振り手振りを本人が考えなければ無かったので、黒木華の演技力が試されているシーンが数多くあった。

監督・脚本の阪本順治(1958年10月1日生れ)は下町の貧乏長屋が登場するところは『人情紙風船』(1937)
背景になる時代が幕末なのと、落語の世界観を持ち込んだところは『幕末太陽傳』(1957)を参考にしている。

またおきくのキャラクター造形は、時代に翻弄されて、体の一部の機能を失いながらも淡々と日常を送る『この世界の片隅に』(2016)のヒロインすずとも共通している。
タイトルのなかの「せかい」に大きな影響を当てている。
パンフレットの後半に『この世界の片隅に』の原作者こうの史代によるイラストが添えられている。
温故知新を実践しており、日本映画の歴史の奥深さを感じた。


黒木華は『小さなおうち』の家政婦役の以降も、NHKドラマ『みをつくし料理帖』(2017年5月~7月、SPが2019年12月に2週連続)と料理を作る役柄を演じた。
筆者も調理師の免許を持つので、ついつい俳優の料理を作る手つきに注目してしまう。
『せかいのおきく』では、おきくが中次のために握り飯(おにぎり)を作るシーンがあった。
全身が映る画面なので実際にやっているのがわかる。
ご飯を握る手つきが美しくて感心した。
ただ、握る回数は少しだけ多くて、近年のふんわりとしたおにぎりとは違う作り方をしていた。

それにしても、可愛くて、料理が上手って最強の女子じゃないですか。
筆者は歯ぎしりしてしまった。


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