「芸術は爆発だ!」岡本太郎を今こそ観るべき理由とは?
《太陽の塔(1/50)》1970 川崎市岡本太郎美術館
「一番好きな芸術家は誰ですか?」
美術ライターをしていると、とてもよく質問されます。私が節操なしに「あの画家も良い、この画家も良い」と褒める八方美人だからかもしれませんが。
展示風景
一番なんて決められないので困ってしまうのですが、日本の芸術家だったら、岡本太郎(1911-1996)さんと迷わず答えることができます。中学生の頃から好きなので、ファン歴は15年ほどになるでしょうか。
太郎さんは絵画や彫刻、パブリックアートに書籍の刊行とさまざまな仕事を手がけましたが、すべてが命を燃やしたエネルギーで溢れています。人間とは何か、生きるとは何かを問い続け、命の炎を大きくしていった芸術家です。
展示風景
そんな太郎さんの芸術は、現代人の心にこそ美しい音で響くのではないでしょうか。透明な不安に包まれた社会を生きなければならない私たちのために、太郎さんの芸術があるのだと思います。
この記事では、太郎さんの「ここに痺れる!」と思うところを、岡本太郎大好きな筆者が紹介していきます。
■エネルギーに満ちた絵画
展示風景
太郎さんの作品といえば、1970年の大阪万博を象徴する《太陽の塔》や、渋谷駅に設置された幅約30メートルの壁画《明日の神話》がよく知られています。ほかにも沢山の絵を描いており、鮮やかな色を用いた動きのある画面が特徴です。
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画面の中でモチーフや色彩が対決するように描かれ、絵画が今にも爆発しそうなエネルギーをたたえています。不安定、破綻、破壊……そうした印象の絵画なのに、なぜか惹かれて目を離せない。
誰もが胸の内に秘めているけれど、普段は抑え込んでいる「衝動」と共鳴する何かが、太郎さんの作品にはあるように思います。
■茶目っ気のある「顔」
《犬の植木鉢》1955 川崎市岡本太郎美術館
太郎さんは絵画や彫刻によく「顔」を取り入れました。強いエネルギーを秘めた顔や、我が道を行く素朴な顔など、いろいろなバリエーションの顔があります。
展示風景
太郎さんは「顔は宇宙だ」と言いました。ひとつの顔は、宇宙のようにさまざまな感情を持っています。太郎さんの作品を見ることは、対話のような気がしているのですが、さまざまな顔と対面しているからかもしれません。
■色あせない名言たち
常識や権威に戦いを挑み続け、命を激しく燃やした太郎さんは、発する言葉にも重みがあります。不安がまん延する現代において、彼の言葉は一層きらめいているように感じます。
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例えば、太郎さんのメッセージをまとめた書籍『孤独がきみを強くする』(編集・平野暁臣)からひとつ引用してみましょう。
「人生は他人を負かすなんて、
ケチくさい卑小なものじゃない。
大切なのは、自分自身に打ち勝って、
自分の生きがいをつらぬくこと。
それがいちばん美しいことなんだよ。」
展示風景
太郎さんの残した言葉たちを咀嚼していると、人生に真剣になるほど孤独になるのだな、と思います。孤独には悪いイメージがあるかもしれませんが、そんなことはない。後悔しない人生とは、馴れ合いよりも孤高をつらぬく人生ではないでしょうか。
それにしても、最後の「だよ。」が良い味を出しているなあ……。
■『展覧会 岡本太郎』
展示風景
写真で紹介してきたのは、大阪中之島美術館で開催中の『展覧会 岡本太郎』です。
太郎さんの作品約300点を一度に鑑賞できる大規模な回顧展で、作品から溢れ出すエネルギーを全身で受け止めることができました。
本展は東京と愛知にも巡回予定。
ぜひ太郎さんの芸術に触れてみてくださいませ。
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展覧会 岡本太郎
会期:2022年7月23日(土)~10月2日(日)
休館日:月曜日(9月19日を除く)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
会場:大阪中之島美術館 4階展示室
https://taro2022.jp/
【巡回予定】
・東京都美術館(2022年10月18日~12月28日)
・愛知県美術館(2023年1月14日~3月14日)