本を読む仕事って大変ですか?重版決定!「校正者」が書いた本が話題!

2022/8/19 19:40 KIN KIN



「校正」「校閲」などの言葉を聞いたことがあるでしょうか?2016年のドラマ、石原さとみ主演『校閲ガール』でその言葉を耳にした人も多いかもしれませんね。

新聞や書籍、その他のコンテンツにおいて、誤植や誤字脱字などを確認したり、表記の揺れの統一、事実関係の誤りなどのチェックを行うことを「校正」や「校閲」などと言います。



担当する会社や人によってどこまで何をチェックをするかが違ったり、校正と校閲という言葉を作業内容で使い分けているところもあるようなので、一概にこれが「校正」です、「校閲」ですと言い切れない点もあります。



ただし、校正や校閲を通したコンテンツはミスが少なく、読みやすく、結果として品質が高くなることが多いということは言えると思います。

そんな校正を仕事としている方の本が出版されました。


『文にあたる』牟田都子(著) 亜紀書房 amazonより

作者の牟田都子さん、図書館員から出版社の校閲部へ、そして現在はフリーランスで校正という仕事をしている方です。赤鉛筆で間違いをなおすと言うよりも鉛筆で尋ねかけるような校正をするという牟田さん。



牟田さんのその丁寧な仕事ぶりは、過去にテレビ番組『セブンルール』でも取り上げられたことがあります。現在でも多くの著者や編集者が牟田さんのファンだというのも納得。

そして、こちらの本、なんと1週間で重版が決まったそうです。おめでとうございます。



校正についての考え方は校正者それぞれ、コンテンツの種別や会社によってやり方も変わってくる。それなので、「これが校正」と言う内容ではなく、あくまでも「こう言う校正もある」と言う様な牟田さんならではの考え方をまとめたとのこと。

ただ、その内容がとても魅力的で、「誠実」「丁寧」なのです。とても魅力的な内容。この本を読んで校正の仕事を目指しました、という人が増えそうな気がします。あと、表紙のデザインもとてもかっこいい。帯までかっこいい。

天職を探す、と言う項目が本の中にあります。幾つかの仕事を経験した牟田さん、今の仕事もまだ天職と言えるのか、そもそもむいていないのでは?などと考えることもある様です。人から必要とされ、様々なタイミングと出会い、人と出会い、それらを経てたどり着いた今でも天職とは言い切れない。そう言うものなのかもしれません。

また、最も印象に残ったのが、本の中に出てくる「かんなをかけすぎてはいけない」という言葉。元々は翻訳家の岸本佐知子さんや柴田元幸さんの言葉の様ですが、この言葉、牟田さんの仕事の仕方、そして校正者でない私たちの仕事の仕方などにも繋がってくる様にも思えました。



本の最後をチラッとみてみると、主要参考文献の数が多いのが分かります。これ、本文を読んでみるとそれが何故かがわかるのですが、ある仕組みが故の参考文献の多さなのです。この本のこの仕組み、全てを実現させるには結構大変だったのではないかなぁ、と思いますがとても面白いので是非実際に読んでみてください。

校正の仕事は本が完成すると目に触れないことになります。最終的には紙面に残らないやりとり。本にもありますが「この校正は素晴らしい」と読者から言われることはないでしょう。ただし、もし本を読んでいて「この文章読みやすいな」と思った裏には校正者の苦労があるのかもしれません。


現在、荻窪の本屋さん「Title」の2階ギャラリーで『文にあたる』の出版記念展が開催されています。


牟田都子『文にあたる』出版記念展 校正者の仕事部屋
https://www.title-books.com/event/10255
荻窪 本屋 Title 2階ギャラリー
2022/8/6-2022/8/23



会期終わりも近くなっておりますが牟田さんが実際に使用している道具や、今回の本『文にあたる』での牟田さんの指示入れなどが展示されています。

校正に関しては別の方が入っているとのことで今回はあくまでも著者としての指示入れだとのことですが、とても校正者っぽい視点なのが面白い。普段であれば人の目に触れない、完成に至るまでの過程をみることができる貴重な展示でした。


展示以外にも出版記念イベントも各種あります。オンライン参加もできるものもあるので気軽に参加できますね。


亜紀書房『文にあたる』
https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=1074

以下、亜紀書房『文にあたる』ホームページより抜粋

■8月20日(土)19:00~21:00

『文にあたる』発売記念 牟田都子トークイベント

会場…………ブックスキューブリック箱崎店(福岡)

出演…………牟田都子さん、大井実さん(聞き手・ブックスキューブリック店主)

参加方法……会場参加、オンライン配信



■8月24日(水)19:00~20:30
『文にあたる』刊行トークイベント

会場…………ひるねこBOOKS (東京)
出演…………牟田都子さん

参加方法……会場参加


■9月10日(土)19:00~20:40
『文にあたる』刊行トークイベント
会場…………ポルベニールブックストア(神奈川)

出演…………牟田都子さん、岸本佐知子さん(翻訳家)

参加方法……会場参加、オンライン配信



■9月24日(土)19:00~21:00
『文にあたる』刊行記念トークイベント「本を質(ただ)す、新聞を閲(み)る」
会場…………Readin’ Writin’ BOOK STORE(東京)

出演…………牟田都子さん、平山泉さん(毎日新聞・校閲記者)

参加方法……会場参加、オンライン配信




校正者はゴールキーパーに例えられることもあるそうです。失点がないのが前提になるお仕事。

それでも、どれだけベテランの校正者でも誤字を見落とすこともある、詳しいジャンルだからと言って完璧にできるとは限らない、それが校正の世界とのこと。もちろん、ミスを無くしていくために頑張る必要はあります。間違いに対しての反省や間違いを繰り返さない工夫は必要です。

ただし、結局はどんなのことでも人のやること、間違いはあり得ます。その間違いを徹底的に許さないだけの世の中では生きていくにも少し肩身が狭くなります。ちょっとした間違いを楽しみながら生きていくこともできる様な世の中なら良いですね。