時にはシュールな日本画はいかがでしょうか?

2022/4/27 20:10 yamasan yamasan

こんにちは、いまトピアート部のyamasanです。

今回は、2年前(2020年)の秋に開催された京都国立近代美術館第3回コレクション展(10/8-12/20)でパンリアル美術協会の作品を見て、「こういう日本画もありなのか!」と大きな衝撃を受けたので、その時の様をご紹介したいと思います。


展示風景

パンリアル美術協会は、戦後、京都で活動した若手日本画家、三上誠、山崎隆、星野眞吾、大野俶嵩(ひでたか)、下村良之介らが当時の日本画界に新風を吹き込んだグループのことです。

その画風は、花鳥風月を愛でた今までの日本画と違って、ご覧のとおり、抽象画や、キュビズム風の作品があったり、素材も日本絵具だけでなく、麻袋や紙粘土を使ったりとさまざま。


展示風景

上の写真の左は、下村良之介《祭》。

画面いっぱいに描かれているのは、おびただしい数の人、人、人。 いくつもの顔や手足が入り乱れ、右上には神輿が見えて、祭の熱気が伝わってくる作品です。


下村良之介《祭》1949年 京都国立近代美術館蔵

素材もさまざまとお伝えしましたが、下の写真左は、麻袋を多用した大野俶嵩の作品。


展示風景

画面下のこげ茶色の三角形の部分が麻袋なのです。


右から 大野俶嵩《縦緋A》《縦緋B》 1963年 京都国立近代美術館蔵

こちらも大野俶嵩の作品ですが、麻袋は使わずに紙本着色のオーソドックスな材質を使った《雑草》。
材質はオーソドックスですが、描かれているのは雑草が生える様ではありません。
まるで西洋の鎧を身に付けた兵士がこちらに突進してくるような、不思議な迫力が感じられる作品です。



大野俶嵩《雑草》1956年 京都国立近代美術館蔵

さらにシュールな作品が続きます。


展示風景

上の写真右の作品は画面全体が真っ黒に見えますが、何かが描かれているようです。


下村良之介《鳥不動》1965年 京都国立近代美術館蔵

作品のタイトルは《鳥不動》なのですが、画面中央に描かれているのは、泳いでいる魚のようにも、海老のようにも見えます。
近くでよく見ると輪郭線が盛り上がっていますが、これは紙粘土に着色をしたものなのです。

この作品は、今ならスマホをかざしてピッと読み取りたくなってしまいますが、文字が描かれた小さい四角形の紙を画面一面に貼りつけたような不動茂弥の《黒い祭》。


不動茂弥《黒い祭》1967年 京都国立近代美術館蔵

続いて、リアルのようでリアルでない、まさにシュルレアリスムな世界が広がる鈴木吉雄の作品。

右から、鈴木吉雄《敗北》1949年頃 《JAZZ》1950年頃 京都国立近代美術館蔵


日本の農村の風景を描いた川合玉堂のこの作品のように、郷愁を感じさせてくれる「正統派日本画」ももちろん好きなのですが、斬新さにハッとさせられるパンリアル美術協会の作品もとても刺激的した。


川合玉堂《山村初夏》個人蔵

パンリアル美術協会は、この年(2020年)の4月に惜しくも解散しましたが、京都国立近代美術館では彼らの作品を多く所蔵しているので、コレクション展で展示されるときはぜひまた見に行ってみたいです。

京都国立近代美術館の公式HP⇒https://www.momak.go.jp/

独立行政法人国立美術館(東京国立近代美術館、京都国立近代美術館ほかを所管)の検索サイト(https://search.artmuseums.go.jp/)で検索したところ、パンリアル美術協会の作家たちの作品は東京国立近代美術館でも所蔵しているので、同館のコレクション展もこれからは要チェックです。

東京国立近代美術館の公式HP⇒https://www.momat.go.jp/