夢中で遊び、夢中で作る。『庵野秀明展』に見る一流の秘密

2022/4/27 21:00 明菜 明菜


展示風景

逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ……

『新世紀エヴァンゲリオン』の主人公、碇シンジの名台詞ですね。傷を負った綾波レイを抱き、自分に言い聞かせるように「逃げちゃ駄目だ」と繰り返し、初号機に乗る決意を固める名場面です。全国民が一度は真似したことがあるのではないでしょうか、受験とかプレゼンとかの直前に。


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「襲来する使途(敵)と戦う」というシンプルなストーリーで始まったはずが、謎が謎を呼ぶ展開や、奥行きのあるキャラクターに魅了されるうちに、あれよあれよと最終話まで一気見してしまう本作。私の高校時代の国語の先生のように、エヴァに人生を狂わされてしまった人も多いのではないでしょうか?

そんな素晴らしい作品を監督した庵野秀明さんの展覧会『庵野秀明展』が、大阪・あべのハルカス美術館で開幕しました。国立新美術館、大分県立美術館を巡回した本展、一部内容が変更され、大阪では6月19日(日)まで開催されています。


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「庵野秀明をつくったもの
庵野秀明がつくったもの
そして、これからつくるもの」

をコンセプトとする本展では、庵野さんがアマチュア時代から現在までに手掛けた仕事のみならず、幼少期に影響を受けた作品まで紹介されているのがおもしろいところ。作り手になる前の庵野さんが、どんな作品に感化されたのかもわかってしまうのですね。


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プロのアニメーターとして活動を始める前から、アマチュア離れした作品を制作していた庵野さん。例えば学生時代に自主制作したオマージュ作品『ウルトラマン』では、自らウルトラマンを演じています。


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キレの良いカットや絶好のタイミングで挟まれるスローモーション、フィルムに直接描き込まれた特殊効果(CGが無い時代)など、どこを取っても百点満点の力作。楽しく鑑賞できるクオリティで、本当に学生時代に制作したのか疑わしくなってしまうほど。

もちろん『新世紀エヴァンゲリオン』や『シン・ゴジラ』、『ふしぎの海のナディア』などプロとしてチームを率いた作品も素晴らしいですが、アマチュア時代の作品も負けず劣らず魅力的です。特撮やアニメにかける庵野さんの振り切れた喜怒哀楽が伝わってきて、見ているほうも楽しくなってしまうのです。


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影響を受けた作品群には、『ウルトラマン』、『仮面ライダー』、『宇宙戦艦ヤマト』、『機動戦士ガンダム』などがあり、本展ではこれらの資料が展示されています。なんと、実際の撮影に使われたウルトラマンの衣装も展示されていました!

ほかにも膨大な数の作品に感化された庵野さん。本人が挙げた作品数は100を超え、本展で紹介しきれないほどあるのだとか。一流の作り手が誕生したのは、数多くの優れた先行作品があり、それを消化する能力が庵野さんにあったからなのでしょう。


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「これからつくるもの」としては、今後公開予定の作品『シン・ウルトラマン』と『シン・仮面ライダー』も資料を交えて紹介されていました。5月13日(金)に公開予定の『シン・ウルトラマン』は、最新の予告編を展示室で見ることができます。


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さて、本展は庵野秀明展ですが、創作全般に共通する大切なことを学べる内容でした。それは、どれだけ夢中になれるか、ということ。受け手として夢中で楽しむことでインプットを蓄積し、作り手として夢中になり、魂を削ってアウトプットするのです。優れた創作はどのようにして生まれるのか、一流の作り手の覚悟とはいかほどのものなのか、思い知らされる内容でした。


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庵野秀明ファンはもちろんですが、特撮やアニメにあまり興味が無い人でも楽しめる展覧会です。絵でも文でも何でも、創作に関心があるなら本展を見て損はありません!

庵野秀明展
会場:あべのハルカス美術館
会期:2022年4月16日(土)~6月19日(日)
休館日:4月18日(月)、5月9日(月)
開館時間:火~金/10:00~20:00、月土日祝/10:00~18:00
※入場は閉館の30分前まで
公式ウェブサイト:https://www.annohideakiten.jp/