注目のギャラリー【Kanda & Oliveira】が西船橋に誕生!
千葉県生まれ、船橋育ち、農家をやってる人はだいたい友達──という環境で人生の大半を送ってきた生粋の船橋市民である私は、地元を大いに愛しているのですが、ひとつ大きな不満がありまして……。
それは、船橋市は(隣りの市川市に比べて)アートの話題が少ない!ということ。
しかしこの度、なんとギャラリーが、しかも現代美術を扱うギャラリーができるというニュースが舞い込んできたのです。
西船橋って、この西船橋⁉ ホントに⁉
そんなわけでオープンを間近に控え、幸運にも一足先に伺うことができたので、どのようなギャラリーなのかお伝えしようと思います!
ギャラリーの名前は「Kanda & Oliveira(カンダ アンド オリヴェラ)」。
不動産会社を営む株式会社西治によるこのギャラリーは、国道14号線沿いの西船橋エリアに位置します。今後は現代美術を中心に工芸や古美術などの分野も取り入れた展覧会プログラムを企画し、アート作品を展示・販売していくとのこと。
ギャラリーの創設者兼ディレクターであり、現在株式会社西治の代表取締役を務めていらっしゃる神田雄亮さんは、2013年に森美術館で開催された「会田誠展:天才でごめんなさい」を観て、「現代美術とは、なんて面白い世界なのだろう」と感銘を受けられたそうです。
それからの行動は早く、現代美術の企業コレクションを開始。2016年には一度都内でコレクション展を開かれています。
神田さんがコレクションされている作品の中でも、特に思い入れのあるのが、久松知子さんの《日本の美術を埋葬する》。
こちらは久松さんが東北芸術工科大学卒展に出品された作品で、のちに《日本画家のアトリエ》という作品と2点組で《レペゼン 日本の美術》とし、第18回岡本太郎現代芸術賞にて岡本敏子賞を受賞したものです。
「Kanda & Oliveira」のコレクションには、このような若手作家の作品も少なくありません。しかし才能はあっても、若手であるほど活動を続けることが難しくなってしまうということもありますよね。
そこで神田さんはコレクションを増やしていくだけでなく、西治の事業として長期的な視点から、作家の活動を支える架け橋になりたいと考えているのだそう。
たとえば所属作家の堀越達人さん。
アジアではもともと人気のあった作家ですが、より広く世界で活動していくにはどうすれば良いのか悩まれていました。そこで、堀越さんの作品をコレクションしていた神田さんに相談をされたそうです。
神田さんがフランスの友人が経営しているギャラリーを紹介したところ、堀越さんはアジア以外での展覧会を実現。そういった海外での展開をお手伝いをする中で、フランス人マネージャーのオリヴェラさんことウリエズさんが、マネージャーとして業務をバックアップするようになりました。
今では堀越さんの作品を求めて、世界中から問い合わせが来るような作家となっています。
「単に作品がたくさん売れれば良いというわけではなくて、そこには評価がついてこなければなりません。彼らが活動するためのサポートを行いながら、同時代を生きるアーティストと共に走っていきたい」
それがギャラリーを作ろうと思ったきっかけです、そう神田さんは仰っていました。
今回地元の人間として一番気になったのが「現代美術を扱うギャラリーが、なぜ西船橋をロケーションに選んだのか?」ということ。
西船はとても便利で住みやすい街なのですが、正直言って現代美術のギャラリーがありそうな街かと訊かれたら、「うーん……?」となってしまう場所なんですよ。
なので「嬉しい! ……けど、なんで西船に?」という気持ちが大きかったのです。
それを神田さんに伺ったところ、なんと西船橋こそが株式会社西治創業の地だそうで、代々ここに住んでこられたというお話を聞くことができました。
はじめは都内にオープンさせることも考えていたそうですが、やはり土地代が高いことや、自然光を取り入れた室内にを作るのが難しいことから、西船橋が理想に適しているのではないかという結論に至ったのだそう。
そうなんです。自然光が入るというのがこのギャラリーの大きな特徴で、とにかく窓が多い!
とりわけ美術品を美しく見せるといわれる「ノースライト(北側から入る光)」を鋸屋根からふんだんに取り込むことができる設計となっているため、時間帯によって作品の表情が変わっていくのを味わうことができるようになっています。
加えて背面には山野浅間神社の鎮守の森が控えており、ふと視線を移したときの良いアクセントになっているのです。
設計されたのは建築家の小室舞さん。小室さんは北京国家体育場やM+、そして日本ではプラダ青山店などで知られる「ヘルツォーク&ド・ムーロン」で活躍され、2018年に香港と東京に建築デザインスタジオ「KOMPAS」を設立されました。
香港のM+美術館の建築設計を担当するなど、大きなミュージアムを手掛けることが多かった小室さんですが、「株式会社西治が抱く地元地域への文化的貢献への思いや、わざわざ遠くから人々が訪れる存在にしたい」という志を込めて、これまでご自身が携わってきた建築プロジェクトに引けを取らない空間を目指したとのこと。
ギャラリーは3階建てとなっており、各フロアにバルコニーなどの中間領域が存在しています。
これは各フロアがねじれて重なるように積み上げられたことから生まれたスペースで、座って建物、鎮守の森、ガラス越しに見える室内の作品をゆっくり眺めることができるようになっています。
私以外にも作品を鑑賞したあと、しばし自問したくなる瞬間があるという人は多いと思うのですが、そういう人にとって展示室を出たところで風に当たりながら、ぼんやり考えることができる空間の存在というのは、本当に貴重なんですよ。
そういった場所をよくぞ作ってくださったと感激したのですが、加えてこの壁!
こちらは石が露出した状態を見せる「洗い出し」と呼ばれるコンクリートの仕上げの一種で、海が近い西船橋周辺の砂利を含んだものをわざわざ選んで壁に仕立てたのだそう。
冒頭にも書きましたがこの辺りは農家が多く、国道沿いはその屋敷を囲む立派な塀や石垣が並んでいます。この土地の地形や景観を踏まえて、地面から立ち上がる石垣のようなイメージを出すために地域にちなんだコンクリートを採用しているということで、そこまで考えて作られていることに地元民として目頭が熱くなる思いでした。
また、このギャラリーが建っている場所には、以前は蔵があったそうです。蔵には中のものを守るという役割がありますよね。蔵の持つ堅牢な印象を抱かせる外壁は、淡路島で焼かれた特注瓦を1万枚弱使用しています。
瓦の向きを変えることで光を取り入れる角度が作られているなど、とても面白い構造になっているので、ぜひ間近でその様子を見てみてください。
2月23日から始まる「NISHIJI COLLECTION」展は、会田誠、青木美歌、梅津庸一、加藤泉、工藤麻紀子(前期のみ)、塩田千春、志賀理江子(前期のみ)、田中武、中園孔二、久松知子、アブデルカダー・ベンチャマ、ヴィヴィアン・ホー、堀越達人、ライアン・マッギンレー、マーク・マンダース(後期のみ)、宮永愛子、森洋史、森村泰昌と、まさか西船橋で見られる日が来るとは……というくらくらするような作家陣の作品が並ぶコレクション展です。
展示の仕方もユニークで、階段の踊り場や書斎のようなスペースに作品が設置されているなど、ギャラリーでありつつ個人邸宅のような親密さを楽しむことができるようになっています。
なによりも出品作品を見ることで、「Kanda & Oliveira」がどういったギャラリーを目指しているのか、その方向性を感じられると思います。
こちらは3月12日(土)までの開催となっていますので、ぜひお見逃しなく。
西船橋は東京メトロの路線図を見ると端の方にあるので遠いように感じますが、大手町駅から東西線で約20分ですし、JR秋葉原駅からは30分と、そこまで遠くはないはず……!
アーティストの活動を支え伴走しながら、コレクションを形成していく「Kanda & Oliveira」。
西船橋から始まるこのギャラリーが、世界に向けて唯一無二の存在となることを、市民として強く応援していきたいと思います。
それは、船橋市は(隣りの市川市に比べて)アートの話題が少ない!ということ。
しかしこの度、なんとギャラリーが、しかも現代美術を扱うギャラリーができるというニュースが舞い込んできたのです。
西治プロジェクト開館展示、無事オープンしました。西船橋まで来ることを後悔させないハコと中身になっているハズなので、建築好きもアート好きも是非に〜
— Mai Komuro @KOMPAS (@komumai_KOMPAS) February 19, 2022
3月12日まで開催(水〜土)、来週23と26日は多分私も現地います。https://t.co/OgL7wg8YL9
Photo : Munemasa Takahashi pic.twitter.com/BUc9te7Pbh
西船橋って、この西船橋⁉ ホントに⁉
そんなわけでオープンを間近に控え、幸運にも一足先に伺うことができたので、どのようなギャラリーなのかお伝えしようと思います!
ギャラリー「Kanda & Oliveira」とは
▲「Kanda & Oliveira」外観
ギャラリーの名前は「Kanda & Oliveira(カンダ アンド オリヴェラ)」。
不動産会社を営む株式会社西治によるこのギャラリーは、国道14号線沿いの西船橋エリアに位置します。今後は現代美術を中心に工芸や古美術などの分野も取り入れた展覧会プログラムを企画し、アート作品を展示・販売していくとのこと。
ギャラリーの創設者兼ディレクターであり、現在株式会社西治の代表取締役を務めていらっしゃる神田雄亮さんは、2013年に森美術館で開催された「会田誠展:天才でごめんなさい」を観て、「現代美術とは、なんて面白い世界なのだろう」と感銘を受けられたそうです。
それからの行動は早く、現代美術の企業コレクションを開始。2016年には一度都内でコレクション展を開かれています。
▲手前:会田誠《滝の絵(下絵)》2006 奥:ヴィヴィアン・ホー《刹那的光輝不是永恆 Forever is a lie always》
神田さんがコレクションされている作品の中でも、特に思い入れのあるのが、久松知子さんの《日本の美術を埋葬する》。
▲左:久松知子《日本の美術を埋葬する》2014 右:加藤泉《Untitled》2018
こちらは久松さんが東北芸術工科大学卒展に出品された作品で、のちに《日本画家のアトリエ》という作品と2点組で《レペゼン 日本の美術》とし、第18回岡本太郎現代芸術賞にて岡本敏子賞を受賞したものです。
「Kanda & Oliveira」のコレクションには、このような若手作家の作品も少なくありません。しかし才能はあっても、若手であるほど活動を続けることが難しくなってしまうということもありますよね。
そこで神田さんはコレクションを増やしていくだけでなく、西治の事業として長期的な視点から、作家の活動を支える架け橋になりたいと考えているのだそう。
▲左:堀越達人《Imagination (She's hearing mountain voice)》2015 右:田中武《咲き乱れる情報》2021
たとえば所属作家の堀越達人さん。
アジアではもともと人気のあった作家ですが、より広く世界で活動していくにはどうすれば良いのか悩まれていました。そこで、堀越さんの作品をコレクションしていた神田さんに相談をされたそうです。
神田さんがフランスの友人が経営しているギャラリーを紹介したところ、堀越さんはアジア以外での展覧会を実現。そういった海外での展開をお手伝いをする中で、フランス人マネージャーのオリヴェラさんことウリエズさんが、マネージャーとして業務をバックアップするようになりました。
今では堀越さんの作品を求めて、世界中から問い合わせが来るような作家となっています。
▲左:堀越達人《Ghost》2010 次回展は堀越さんの新作個展、「小さい頃は神様がいて」が開催されます。
「単に作品がたくさん売れれば良いというわけではなくて、そこには評価がついてこなければなりません。彼らが活動するためのサポートを行いながら、同時代を生きるアーティストと共に走っていきたい」
それがギャラリーを作ろうと思ったきっかけです、そう神田さんは仰っていました。
西船橋にギャラリーをつくること
▲青木美歌《Bergaberg》2015
今回地元の人間として一番気になったのが「現代美術を扱うギャラリーが、なぜ西船橋をロケーションに選んだのか?」ということ。
西船はとても便利で住みやすい街なのですが、正直言って現代美術のギャラリーがありそうな街かと訊かれたら、「うーん……?」となってしまう場所なんですよ。
なので「嬉しい! ……けど、なんで西船に?」という気持ちが大きかったのです。
それを神田さんに伺ったところ、なんと西船橋こそが株式会社西治創業の地だそうで、代々ここに住んでこられたというお話を聞くことができました。
はじめは都内にオープンさせることも考えていたそうですが、やはり土地代が高いことや、自然光を取り入れた室内にを作るのが難しいことから、西船橋が理想に適しているのではないかという結論に至ったのだそう。
▲ライアン・マッギンレー《Taylor (Black & Blue)》2015
そうなんです。自然光が入るというのがこのギャラリーの大きな特徴で、とにかく窓が多い!
とりわけ美術品を美しく見せるといわれる「ノースライト(北側から入る光)」を鋸屋根からふんだんに取り込むことができる設計となっているため、時間帯によって作品の表情が変わっていくのを味わうことができるようになっています。
加えて背面には山野浅間神社の鎮守の森が控えており、ふと視線を移したときの良いアクセントになっているのです。
▲塩田千春《State of Being (Dress)》2012
塩田千春さんの作品は、時間帯によってさまざまな表情を変えます。日中は南からの日差しに照らされて神々しくもあり、夕暮れからは繊細な照明のおかげでドレスが浮かんでいるように見えます。作品に存在感があり、時に恐怖感さえ覚えるほどだとか。
塩田千春さんの作品は、時間帯によってさまざまな表情を変えます。日中は南からの日差しに照らされて神々しくもあり、夕暮れからは繊細な照明のおかげでドレスが浮かんでいるように見えます。作品に存在感があり、時に恐怖感さえ覚えるほどだとか。
設計されたのは建築家の小室舞さん。小室さんは北京国家体育場やM+、そして日本ではプラダ青山店などで知られる「ヘルツォーク&ド・ムーロン」で活躍され、2018年に香港と東京に建築デザインスタジオ「KOMPAS」を設立されました。
香港のM+美術館の建築設計を担当するなど、大きなミュージアムを手掛けることが多かった小室さんですが、「株式会社西治が抱く地元地域への文化的貢献への思いや、わざわざ遠くから人々が訪れる存在にしたい」という志を込めて、これまでご自身が携わってきた建築プロジェクトに引けを取らない空間を目指したとのこと。
ギャラリーは3階建てとなっており、各フロアにバルコニーなどの中間領域が存在しています。
これは各フロアがねじれて重なるように積み上げられたことから生まれたスペースで、座って建物、鎮守の森、ガラス越しに見える室内の作品をゆっくり眺めることができるようになっています。
私以外にも作品を鑑賞したあと、しばし自問したくなる瞬間があるという人は多いと思うのですが、そういう人にとって展示室を出たところで風に当たりながら、ぼんやり考えることができる空間の存在というのは、本当に貴重なんですよ。
そういった場所をよくぞ作ってくださったと感激したのですが、加えてこの壁!
こちらは石が露出した状態を見せる「洗い出し」と呼ばれるコンクリートの仕上げの一種で、海が近い西船橋周辺の砂利を含んだものをわざわざ選んで壁に仕立てたのだそう。
▲子供の頃にこの辺りで転んだことがある人にとっては、「この砂利の色、知ってる!」という懐かしさで胸がいっぱいになると思います。
冒頭にも書きましたがこの辺りは農家が多く、国道沿いはその屋敷を囲む立派な塀や石垣が並んでいます。この土地の地形や景観を踏まえて、地面から立ち上がる石垣のようなイメージを出すために地域にちなんだコンクリートを採用しているということで、そこまで考えて作られていることに地元民として目頭が熱くなる思いでした。
また、このギャラリーが建っている場所には、以前は蔵があったそうです。蔵には中のものを守るという役割がありますよね。蔵の持つ堅牢な印象を抱かせる外壁は、淡路島で焼かれた特注瓦を1万枚弱使用しています。
瓦の向きを変えることで光を取り入れる角度が作られているなど、とても面白い構造になっているので、ぜひ間近でその様子を見てみてください。
豪華で多様な作家が並ぶ「NISHIJI COLLECTION」展
2月23日から始まる「NISHIJI COLLECTION」展は、会田誠、青木美歌、梅津庸一、加藤泉、工藤麻紀子(前期のみ)、塩田千春、志賀理江子(前期のみ)、田中武、中園孔二、久松知子、アブデルカダー・ベンチャマ、ヴィヴィアン・ホー、堀越達人、ライアン・マッギンレー、マーク・マンダース(後期のみ)、宮永愛子、森洋史、森村泰昌と、まさか西船橋で見られる日が来るとは……というくらくらするような作家陣の作品が並ぶコレクション展です。
▲森洋史《Invincible Girl》2017 踊り場にある森洋史さんの作品。この場所だからこその鏡の反射を楽しむことができます
展示の仕方もユニークで、階段の踊り場や書斎のようなスペースに作品が設置されているなど、ギャラリーでありつつ個人邸宅のような親密さを楽しむことができるようになっています。
なによりも出品作品を見ることで、「Kanda & Oliveira」がどういったギャラリーを目指しているのか、その方向性を感じられると思います。
▲書斎のようなスペースにも作品が。手前:工藤麻紀子《かれ山》 奥:志賀理江子《Bethany》
こちらは3月12日(土)までの開催となっていますので、ぜひお見逃しなく。
西船橋は東京メトロの路線図を見ると端の方にあるので遠いように感じますが、大手町駅から東西線で約20分ですし、JR秋葉原駅からは30分と、そこまで遠くはないはず……!
アーティストの活動を支え伴走しながら、コレクションを形成していく「Kanda & Oliveira」。
西船橋から始まるこのギャラリーが、世界に向けて唯一無二の存在となることを、市民として強く応援していきたいと思います。
NISHIJI COLLECTION
会期:2022年2月23日(水・祝)~ 3月12日(土)
会場:Kanda & Oliveira
場所:千葉県船橋市西船 1-1-16-2
時間:13:00~18:00 ※展示期間中の水曜から土曜
Web:https://www.kandaoliveira.com/ja/
会場:Kanda & Oliveira
場所:千葉県船橋市西船 1-1-16-2
時間:13:00~18:00 ※展示期間中の水曜から土曜
Web:https://www.kandaoliveira.com/ja/