お魚大好きアナウンサーの愛あるツッコミ連発!『ツッコミたくなるおさかな図鑑』
夏休みですね!
とはいえ、今年のお盆はどう過ごしてよいやら、さっぱりわかりません。「帰省をして親族で集まるとか同窓会で集まるとか、絶対に避けていただきたい」と強調する大臣がいるかと思えば、方や「不要不急かどうかは本人が判断すべきだ」と正反対な発言をする大臣もいる。国民は魚(うお)う左往するばかり。「どっちやねん!」とツッコミたくなります。
こんなどっちつかずなお盆休みは、ステイホーム(死語?)して楽しい本を読むに限ります。
おススメの新刊を紹介する、この連載。
第62冊目は、海の生き物のユニークすぎる生態を紹介した『おもしろすぎる! 海の仲間たち ツッコミたくなるおさかな図鑑』です。
■魚に炸裂! 愛あるツッコミ
「夏休みの宿題で読書感想文を書かなきゃいけないんだけど、このクソ暑いのに漢字が多い本なんて読みたくねー!」
そんな学生さん、またはそんなお子さんをおもちの親御さん。ピッチピチにフレッシュで、なおかつ小骨が少なくてとっても読みやすい、それでいて肉厚でためになる新刊がありますよ。
その新刊とは、さかなのおにいさん「かわちゃん」著『おもしろすぎる! 海の仲間たち ツッコミたくなるおさかな図鑑』 (ワニブックス)。魚について書かれた本が、魚を主食とするワニの名を冠する出版社から発売されるとは。食物連鎖か! とツッコミたくなります。
そう、この『ツッコミたくなるおさかな図鑑』は文字通り「なんでやねん!」とツッコミたくなる魚および水中の生き物の生態を文章やイラスト、四コマ漫画などさまざまな手法を使って紹介した本なのです。
(C)さかなのおにいさん かわちゃん2021
■謎の著者の正体は魚大好きアナウンサー
確かに、読んでいてツッコミたくなるんです。
たとえば、2メートル先の獲物を狙い撃ちできる水のヒットマンこと「テッポウウオ」。けれども、実際はその能力を食べ物を獲るために使うケースはまれなのだそう。「じゃあ、なんでその能力あるねん。射撃が趣味なんか」とツッコみたくなります。
ほかには、脚を広げると4メートル近くにもなる「タカアシガニ」。脚が長くてカッコいいのですが、けれども長すぎてうまく脱皮できず死んでしまう場合が少なくない。脚が長すぎてちゃんと座れないことで知られる松田龍平か。
その他、先に生まれた子どもが次に孵化するはずの卵を食べてしまう、生まれた瞬間に競争社会突入な「ホホジロザメ」。空腹になると自分の身体を切り落として調整する「リュウグウノツカイ」。眼を守るために眼に3000本もの歯が生えており、それでいて口についている8000本の歯をほとんど使わない「ジンベイザメ」。あんなに大きなコブがひたいにあるのに「メガネをかけているみたいな模様だから」とメガネモチノウオと名づけられていた「ナポレオンフィッシュ」(あ、これは命名者へのツッコミか)などなど、U(魚)‐1グランプリやキングオブフィッシュのファイナリストが勢揃い。
(C)さかなのおにいさん かわちゃん2021
続々とつまびらかになる魚のトリビアが楽しい楽しい。これはもう読む「おさかな天国」。お笑いにおいてツッコミはボケへのリスペクトですからね。著者「かわちゃん」、ツッコミながらも魚への愛がほとばしっています。文章とイラストのテンポがいいので、まるでダイビングするように深く読みふけってしまうのです。
著者の「さかなのおにいさん かわちゃん」の正体はイケメンアナウンサー川田一輝さん。魚好き、釣り好きとしても知られ、テレビ番組『ガッ釣り関西』(TVO)などアングラーとして出演する番組も多い人です。おしゃべりのみならず文章が得意。イラストは味があり、Instagramでは水を得た魚のように魚LOVEっぷりを発揮しています。
https://www.instagram.com/kawayanfishing/
(C)さかなのおにいさん かわちゃん2021
■ツッコミながらも「じゃあ人間はどうよ」と考える
この新刊『ツッコミたくなるおさかな図鑑』は、笑えるだけではなく「ハッ!」とさせられる、考えさせられる部分も多々あります。
たとえば、ヒラメとカレイの見分け方。つい「眼の位置が左向きなのがヒラメ。右向きなのがカレイ」と憶えがちです。でもこの「左ヒラメ。右カレイ」はワールドワイドな視点で言うと、はずれている。特にカレイはアメリカでは約半数が右で、眼の位置では判断できない。輸入されるカレイもいますので、先入観のまま「左ヒラメ。右カレイ」をそのまま子どもや他人に教えてしまうのって、けっこう怖いですよね。
また、魚たちの生態や行動が人間社会に当てはまる点が数多くあり、そこにツッコミを躊躇してしまうほどの哀愁も感じます。
例を挙げると「コバンザメ」がそう。サメ、ウミガメ、イルカ、マンボウなど大きな体躯の水棲動物にくっついて移動する「コバンザメ」。大物に貼りついて泳ぎ、身を守られ、さらにエサのおこぼれを食べて生きています。この「片利共生」な生態が人間界の「取り巻き連中」に似ていることから、大物にくっついて生きる人々を「コバンザメ」と呼ぶのです。
ところがコバンザメって、決してラクではないんです。実はくっついている宿主から離れた瞬間に宿主から食べられてしまう危険性をはらんでいるんですって。コミュニティから外れればたちまち干され、窮地に陥る非情な人間社会と本当によく似ています。
(C)さかなのおにいさん かわちゃん2021
新幹線N700系の全長に匹敵する400メートル強の距離を飛ぶことができる「トビウオ」もある側面で、人間に似ています。敵から逃げるために驚異の飛行能力が身についたトビウオですが、海から空中へ華麗に羽を広げた瞬間に鳥に食べられてしまう。まるで鳥のエサになるために飛んだかのように。せっかく一流企業に勤めていたのにおかしなインフルエンサーに洗脳され、会社を辞めて情報商材の売り子になった哀しい意識高い系たちのよう。このように海中社会には我々の縮図があるのです。
■夏休みの宿題もこれでフィ(二)ッシュ!
この新刊『ツッコミたくなるおさかな図鑑』は笑ったり感心したり、かわちゃんと同じく「ウォイ!」とツッコミながら一気に読み終えられる本です。小・中学生でもわかるように平易な表現で書かれていますから、クラスのスズキくんにもサヨリちゃんにも喜んでもらえること請け合い。大人が読んでも、もちろんおもしろい。きっと親子のコミュニケーションツールにもなります。
それなのに読まずに通り過ぎれば「夏休み中にこの本を知っておけば、読書感想文をもっと楽しく書けたのに」「自由研究のヒントがもらえたのに」と悔やむことになるかもしれません。逃がした魚は大きいぞと。
おもしろすぎる! 海の仲間たち
ツッコミたくなるおさかな図鑑
さかなのおにいさん かわちゃん著
本村浩之 監修
定価 : 1,100 円+税
ワニブックス
その生態、ツッコミ待ち!?
「いや、さかなやのに歩くんかい!」
「生まれて0秒で弱肉強食かい!」
「もはや地球外生命体やん!!」
おさかなたちのおかしすぎる生態にツッコミを入れながら紹介する、世界一おもしろい「おさかな図鑑」です。
4コマ漫画でわかりやすく、おもしろい紹介文もたっぷりついていて、こどもから大人までみんなで楽しめます。
SNSで大反響!
「さかなのおにいさん」、かわちゃんの初著書。
【著者について】
さかなのおにいさん かわちゃん(川田一輝/かわた・かずき)
1990年、大阪生まれ。
さかなたちの“おかしな”生態や海の大切さをイラストや歌で伝えることで、子どもの好奇心を育てる活動をしている。
また、本名の川田一輝名義では、ラジオDJ・アナウンサーとしても活躍。
https://www.wani.co.jp/event.php?id=7019
吉村智樹
https://twitter.com/tomokiy