スーパークローン文化財でゴッホの謎に迫る!名探偵コナンに登場した幻の向日葵も登場!!

2021/8/8 17:15 yamasan yamasan

こんにちは、いまトピアート部のyamasanです。

今年の夏も東京藝術大学の「スーパークローン文化財」がやってきました。
場所は、横浜駅東口、横浜そごう6階にあるそごう美術館
今回のタイトルは、謎解き「ゴッホと文化財」展

本物そっくりのゴッホの作品を見ることができて、ゴッホの描き方、色使いの秘密の謎を解くこともできる、とても楽しい展覧会なのです。


開 催 概 要

謎解き「ゴッホと文化財」展 つくる文化∞つなぐ文化


会 場  そごう美術館(横浜駅東口 そごう横浜店6階)
会 期  2021年7月31日(土)~8月31日(火) 会期中無休
開館時間 午前10時~午後8時(8月18日(水)は午後7時閉館)
     (入館は閉館の30分前まで)
     ※そごう横浜店の営業時間に準じ、変更になる場合があります。
入館料  一般 1,100円、大学・高校生 900円、中学生以下無料
※事前予約不要
※展示作品はすべてクローン文化財・スーパークローン文化財。(調査研究に基づく再現・復元。部分・拡大縮小の作品を含む)
※ご入館前に、そごう美術館ホームページ・会場入口掲示の「ご入館の際のお願い」をご確認ください。
※展覧会・イベントの中止や延期、一部内容が変更になる場合があります。
※最新情報は、そごう横浜店そごう美術館ホームページをご確認ください。

※展示室内は、一部を除き撮影可です。(フラッシュ・動画・器材使用不可)



会場でお出迎えしてくれるのは、わずか10年ほどの短い画業の中でゴッホが数多く描いた自画像。
ゴッホの自画像は約37点残されているとのことですが、これは療養所で静養中の37歳の時に描いたもの。亡くなる前年の作品です。


フィンセント・ファン・ゴッホ《自画像》
原本年代 1889年 原本所蔵 オルセー美術館

療養中なので、あまり元気がない様子がうかがえますが、全体の淡い青色の色調が暗さを感じさせないところが不思議です。今回の展覧会のチラシのセンターを飾っている作品です。


謎解き1 筆触分割

初めの謎解きは、よく知られた傑作《オーヴェルの教会》。


フィンセント・ファン・ゴッホ《オーヴェルの教会》
原本年代 1890年 原本所蔵 オルセー美術館

《オーヴェルの教会》の手前には、ゴッホが身につけていた帽子、パイプ、洋服、ゴッホが使っていたパレット(複製)などが展示されていて、まるでミニ「アトリエ」のようです。



そして、気になるのが手前にあるオーヴェルの教会を描いた作品。
ゴッホと同じ構図、同じ色を使って描かれているのですが、ゴッホが描いたものとは、どこか違った印象を受けます。

さてここからが「謎解き」です。答は、ゴッホの色彩の秘密を詳しく解説したパネルをご覧ください。
ヒントは「筆触分割」です。


次の部屋に入ると、そこにはまるでパリのオルセー美術館に迷い込んだような光景が広がってきました。

マネ、ドガ、モネ、セザンヌ、ゴーギャン、ボナール。
ゴッホと同時代に活躍した巨匠たちの作品がずらりと並んでいます。


右から、エドガー・ドガ《ダンスのレッスン》原本年代 1873-76年、クロード・モネ《睡蓮の池 緑のハーモニー》原本年代 1899年、クロード・モネ《サン・ラザール駅》原本年代 1877年 いずれも原本所蔵 オルセー美術館


右から、ポール・ゴーギャン《アレアレア》原本年代 1892年、ピエール・ボナール《格子縞のブラウス》原本年代 1892年、ポール・セザンヌ《台所のテーブル》原本年代 1888-90年頃、ポール・セザンヌ《サント・ヴィクトワール山》原本年代 1890年、いずれも原本所蔵 オルセー美術館

新型コロナウイルス感染症の影響で気軽に海外のミュージアムに行かれない今となっては、こういった空間を国内で見ることができるのは、とてもありがたいことです。

笛を吹く少年も立体になって再現されています。少年と並んで記念に2ショットを!

右から、エドヴァール・マネ《笛を吹く少年》原本年代 1866年、《笛を吹く少年》立体再現、フィンセント・ファン・ゴッホ《医師ガシェの肖像》原本年代 1890年 原本所蔵 オルセー美術館

画家の筆のタッチだけではありません。経年劣化による表面のひび割れまで再現されているので本物そっくり。額縁も高級感が出ています。ぜひ近くでご覧ください。


謎解き2 夜の光とジャポニズム

ゴッホは夜の景色を好んで描きましたが、当時、闇夜を照らすのは月、星。
ゴッホはこられの明かりをどのような色を用いて表現したのでしょうか。

フィンセント・ファン・ゴッホ《星月夜》
原本年代 1889年 原本所蔵 ニューヨーク近代美術館

画面左には、ゴッホが晩年よく描いた糸杉と渦を巻く空、そして、月や星に照らされて、まるで昼間のように明るい村の集落。
月や星は黄色、そして空や山は青系の色で描かれていて、月や星の明るさが引き立っています。

ゴッホはなぜこのような色で表現したのでしょうか。

この作品の反対側の壁にはクイズのパネルが展示されていて、そこにヒントが隠されています。

続いて先に進むと暗室のような部屋が見えてきました。


足元の矢印に沿って歩いていくと、見えてくるのはゴッホの《ローヌ川の星月夜》。

フィンセント・ファン・ゴッホ《ローヌ川の星月夜》
原本年代 1888年 原本所蔵 オルセー美術館

ゴッホはこの作品を薄明るいガス灯の下で描きました。この部屋では、ちょうどゴッホが描いた時と同じ暗さを体験することができるのです。


ゴッホも日本の浮世絵の影響を大きく受けた画家の一人で、歌川広重の『名所江戸百景』の作品を油絵で模写しています。
雨の風景でよく知られているのが、『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』。


左 フィンセント・ファン・ゴッホ《ジャポネズリー 雨の大橋》原本年代 1887年 原本所蔵 ファン・ゴッホ美術館、右 歌川広重『名所江戸百景 大はしあたけの夕立』原本年代 1857年 原本所蔵 ボストン美術館スポルディング・コレクション

広重が垂直な線と斜めの線で雨の勢いを表現しているのに対して、ゴッホは縦と斜めの筆の運びでそれを表現しているのがわかります。そして、原本にはありませんが、絵の周囲に漢字を描いて日本趣味的な雰囲気を出しています。

このように所蔵美術館が異なる作品を並べて比較できるのもクローン文化財ならではです。


謎解き3 芦屋のひまわり

ゴッホは数多くのひまわりの絵を残していて、国内では東京・新宿のSOMPO美術館が所蔵していることはよく知られていますが、いまからおよそ100年前の大正時代にも日本にゴッホの《ひまわり》があったことはあまり知られていないかもしれません。

それもそのはず、今では失われてしまったからなのです。

ところが、兵庫県の芦屋市にあったことから「芦屋のひまわり」と呼ばれていたゴッホの《ひまわり》ですが、なんとかつての姿がここに再現されているのです。


フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》原本年代 1888年 1945年焼失

なぜ、100年前の大正時代にゴッホの「ひまわり」が日本にあったのでしょうか。
なぜ、「芦屋のひまわり」は失われてしまったのでしょうか。

15年以上に渡りブログ「青い日記帳」でアートを身近に感じてもらえるよう毎日発信し続けているカリスマアートブロガー青い日記帳さんによる、わかりやすい「謎解き解説」のパネルが展示されているので、ぜひご覧ください。

再現の過程がわかる解説パネル「(よみが)るひまわり」も展示されています。まさにスーパークローン文化財だからこそ実現できる「名作の復活」と言えるでしょう。

「芦屋のひまわり」は、青い日記帳さん監修『失われたアートの謎を解く』(ちくま新書 2019年)でも紹介されています。文化財保護にとっての難敵は経年劣化だけではありません。盗難、戦争、災害などにも備えなくてはならないのです。

『失われたアートの謎を解く』(ちくま新書)


夏休み特別企画もあります

(1)ジュニアスペース

観賞の課題学習のための自習席「ジュニアスペース」が利用できます。小・中学生優先ですが、空ているときは小中学生以外の方でも利用できます。

鑑賞の参考になるジュニアガイドも用意されているので、会場内で夏休みの自由課題をまとめることだってできるのです。

ジュニアガイド

(2)東京藝術大学移動研究室

会場に東京藝術大学の研究員の方が来られて、展示作品のこと、クローン文化財のことなど、ジュニアのみなさんの質問にお答えします。大人の方も大歓迎です。

 開室日 8月1日(日)、15日(日)、22日(日)、28日(土)、29日(日)
 時 間 各日2回 ①午前10時30分~午後0時30分
           ②午後2時~4時

子どもたちの夏休みの自由課題もできて、大人も楽しめる展覧会です。みなさま夏休みの思い出にぜひご来場ください!