コロナ禍が生んだ展覧会。同じ作品、違う構成、しかもお得!

2021/7/28 20:10 KIN KIN

コロナの影響で美術館の臨時閉館があったり、展覧会の期間も短くなったり、館もアーティストも大変です。そんな逆境を利用して、素晴らしいアイデアで展覧会を開くアーティストが居ます。


マーク・マンダース《2つの動かない頭部》
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」展示風景

オランダ人アーティスト、マーク・マンダース。6月まで東京都現代美術館 企画展エリアで「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」という展覧会を開催していました。しかし、その展覧会も会期途中で臨時閉館があり、展示期間も大幅に短縮となりました。



他の併催展覧会と一緒にマーク・マンダースの企画展を見て、その展示に圧倒された人もいるのではないでしょうか?または、期間短縮の故に見に行けず残念に思った方もいたのではないでしょうか?


マーク・マンダース《乾いた土の頭部》
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」展示風景

そこで、館とマーク・マンダースが話し合い、企画展終了後も作品をこちらの館にしばらく残し、その作品を使いマンダース本人が考える別の構成で展覧会を開催することになったのです!


マーク・マンダース《4つの黄色い縦のコンポジション》
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」展示風景

もちろん、企画展は次の予定が決まっていますので、展示する場所はコレクション展エリアとなってしまいますが、それでも同じ美術館の中で、同じ作品を使って、構成を変えた二つの展覧会を続けて見ることができるのです。それがコレクション展示内で開催されている特別展示「マーク・マンダース 保管と展示」(2021/7/17-10/17)です。


マーク・マンダース《4つの黄色い縦のコンポジション》
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」展示風景

いろいろな幸運があったのは間違いありません。作品を所蔵館へすぐ返さなくても良い様に交渉がうまく行ったのでしょう。このあたりはコロナ禍だからこそ、相手先の美術館もすぐ返却は不要と判断したのかもしれません。作品単体ではなく、展示全体のコンセプトを大事にする作家だから出来た事でもあります。


マーク・マンダース《マインド・スタディ》
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」展示風景

コレクション展示エリアで広さを確保できる館だったということも良かったです。館もアーティストも、作品を見てほしいという思いを形に出来たのですね。コロナだからこそ出来た、この作家だからこそ出来た、この場所だからこそ出来た奇跡の展覧会です。


マーク・マンダース《マインド・スタディ》一部
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」展示風景

今回の展覧会のタイトル「マーク・マンダース 保管と展示」も深読みすると面白いです。企画展が終わり、返却待ちの作品を「保管」する必要があります。コロナ禍もあり返却に時間がかかるのでそれなら見えるところに保管=展示?という様な設定を妄想してしまいます。


マーク・マンダース《椅子の上の乾いた像》
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」展示風景

東京都現代美術館がマーク・マンダースの作品《椅子の上の乾いた像》を所蔵しているというのもおそらくアーティストと良い関係を築けている故なのでしょう。


マーク・マンダース《椅子の上の乾いた像》
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」展示風景

私が一番初めにマーク・マンダース作品を見たのがこの作品だと思います(同じ形の別作品かもしれませんが)。2015年に銀座のギャラリーで見たこの作品、手の跡が残る粘土で作られた彫刻かと思ったら、なんとこれがブロンズ像だというのだから驚きました。ブロンズには見えません。


マーク・マンダース《4つの黄色い縦のコンポジション》一部
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」展示風景


マーク・マンダース《像の習作》一部
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」展示風景

敢えて手の跡やヒビを残して生々しくみせているのだとおもいますが、そのトリックの様な技が凄いです。また、今回、海外から来た展示品の中にも木目や布目の様に見えるが、それも木や布では無くブロンズで作られているというのもある様です。実際の木も使っているのでどれが本物かわからない!


マーク・マンダース《乾いた土の頭部》一部
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」展示風景


マーク・マンダース《マインド・スタディ》一部
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」展示風景

どこまでがブロンズでどこまでが木や布やロープなのか。そういえばこのテーブルに脚が無く、イスで支えている構造と言うのにもびっくりしました。私はまだ今回の特別展示「マーク・マンダース 保管と展示」の方は見ていませんが、前の企画展とどう変わって見えるか、楽しみにしています。また、前回の企画展を見ることが出来なかった人はぜひ、今回の展示を見に行くのをお勧めします。


マーク・マンダース《記録された課題》
「マーク・マンダース ―マーク・マンダースの不在」展示風景

コレクション展の中での特別展示扱いなので、単独で見ればコレクション展チケット一般500円で見る事が出来るのですね。もちろん現在開催している企画展「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」と「MOT アニュアル 2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」と併せて見るの良いです。企画展チケットでコレクション展に入ることができるのでやっぱりお得!




MOTコレクション
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特別展示:マーク・マンダース 保管と展示

https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/mot-collection-210717/

会場:東京都現代美術館 コレクション展示室 1F / 3F
会期:2021/7/17-10/17
休館日:月曜日(7/26、8/2、8/9、8/30、9/20は開館)、8/10、9/21
観覧料:一般500円/ 大学生・専門学校生400円/高校生・65歳以上250円/ 中学生以下無料
※詳細はホームページでご確認ください。