かわいい小鳥だって食って〇〇して寝る。作者不詳の屛風が伝える自然とは?

2021/7/27 20:30明菜明菜



雀が小さな翼を激しく振りながら、空中の同じ場所を旋回していました。ひらひら、くるくる、飛んでいるモンシロチョウを追いかけて。

微笑ましい、と私の頬がゆるみかけたとき、ぱくっ。むしゃ、むしゃ、もぐ、もぐ。雀のくちばしの中に蝶々が折り畳まれていきました。

私が初めて見た「生き物が生き物を捕食する瞬間」です。俊敏なハンターは、よく知る可愛い雀とはまるで別の生き物でした。


作者不詳《竹垣紅白梅椿図》【重要美術品】17世紀(江戸時代)山種美術館

この光景がフラッシュバックしたのは、作者不詳《竹垣紅白梅椿図》(重要美術品)を見たとき。江戸時代に描かれた屏風です。

全体を横切るような竹垣に、絡みつく紅白の花。右隻(向かって右の屏風)には白い梅と紅い椿、左隻(向かって左の屏風)には紅い梅と白い椿が描かれ、縁起の良い作品です。


作者不詳《竹垣紅白梅椿図》(部分)【重要美術品】17世紀(江戸時代)山種美術館

近づいてよく見ると、実は大勢の鳥たちが。竹とよく似た青色や、金地に溶け込む茶色で描かれ、うまく風景に溶け込んでいます。他の記者たちを巻き込んで数えたところ、どうやら25羽いるらしいとわかりました。

餌を探しに行くのか飛んでいく鳥、高いところに止まって周囲を気にしている鳥など、いろいろな行動が描かれています。身を寄せ合ったり、羽を思い切り広げたりする個体も可愛らしい。

可愛い。みんなとても可愛いです。


作者不詳《竹垣紅白梅椿図》(部分)【重要美術品】17世紀(江戸時代)山種美術館

しかし、ハンターの雀の記憶が屏風に重なったとき、可愛さの奥にある本当の鳥の姿が見えてきました。竹垣に隠れる鳥たちは、虫を捕まえて生きたまま食べ、フンを落とす生物でもあります(実際に25羽もいたらフン被害が目につきそう)。

人間から見えないところに鳥の社会があることを、改めて思い出します。媚びない野生の鳥たち、それを見破る作者の冷静な目。安全圏にいる鑑賞者だけが屏風を見て可愛い可愛いと騒いでおり(=私)、文明に甘やかされた人間の姿を浮き彫りにしているように思えてきました。


作者不詳《竹垣紅白梅椿図》(部分)【重要美術品】17世紀(江戸時代)山種美術館

屏風全体を貫く竹垣は、野生と人間界を隔てるものかもしれません。ここで、人里に下りる熊や猿の問題が思い出されます。我々を囲う竹垣を高くすべきか、別の手段での共存を考えるべきか……。

作者の意図とは違うかもしれませんが(多分違う)、いくらでも深読みできるところが美術の面白さでもありますよね。

本作は山種美術館で公開中。展覧会『山種美術館所蔵 浮世絵・江戸絵画名品選―写楽・北斎から琳派まで―』では、誰もが知っている浮世絵や、金箔がまぶしい琳派の屏風など名品が見られます。


展示風景

山種美術館所蔵 浮世絵・江戸絵画名品選―写楽・北斎から琳派まで―
会期:2021年7月3日(土)~8月29日(日)
※会期中、展示替えあり(前期: 7/3-8/1、後期: 8/3-8/29)
休館日:月曜日 [但し、8/9(月)は開館、8/10(火)は休館]
会場:山種美術館
公式ホームページ:https://www.yamatane-museum.jp/exh/2021/ukiyoe.html