TV「ぶっちゃけ寺」の僧侶 大來尚順さんインタビューPart.3。お坊さんは365日24時間!?

2015/4/6 11:11 いまトピ編集部 いまトピ編集部



月曜深夜のテレビ番組「お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺」(テレビ朝日系列)が4月6日(月)からゴールデンに進出。深夜放送の頃から為になる話と、MCの爆笑問題とお坊さんたちの掛け合いが面白いと話題になっていましたが、ゴールデン進出でますますお坊さんたちに注目が集まりそうです。
いまトピではゴールデン進出前に、「ぶっちゃけ寺」出演中の浄土真宗僧侶 大來尚順さんにインタビューをしてきました。すでにPart.1、Part.2を公開していますが、今回は最終回。お坊さんの日常生活やお休み、お参りするときの心得などお届けします。

テレビ番組「ぶっちゃけ寺」の裏話など「インタビューPart.1」
浄土真宗のお坊さんは絶対に神社にお参りしない!?「インタビューPart.2」

■相容れない関係。お坊さんとクリスマス
お坊さんの普段の生活は一般の人とは違うところがあるのでしょうか?お坊さんの日常をきいてみました。
――日本ではクリスマスがすっかりイベントとして根付いていますが、お坊さんたちはクリスマスはどう過ごされるんですか?
大來尚順(以下大):えー、クリスマスは…私はないですよ。特に何もしません。

――クリスマスケーキとかツリーも飾ったりしないですか?
大:やったことないですね。子供の頃1回だけ祖母にお願いして(ツリーを)買ってもらったら、母親からものすごく怒られて…。ツリーを返してきなさいと言われました。

――なぜですか?
大:お寺には必要ないからと。祖母と一緒に買ったのに、また祖母と一緒に二人でお店に行ってツリーを返してきました。
そのトラウマも若干あるんですけど(笑)、特にクリスマスだからといって、特別なことはしません。街の雰囲気が明るくなるのはいいのですが、私は結構冷めていて、LEDといえども電気代もったいないなって思ってしまいます(笑)この電気量をセーブして貧困国に分配できたらどれだけ幸せが広がるんだろうとか、とか色々考えてしまうんですよね。

――お坊さんは皆さんクリスマスはしないんですか?
大:そうですね、しない方は多いと思います。でも、やっぱり家族を持つ方は、子供のことを考えるとクリスマスをされる方もいらっしゃるようです。中には「サンタ菩薩」がプレゼントをくれるとか(笑)。あと、ツリーをクリスマスツリーと言えないので、菩提樹をクリスマスツリーに見立てて、木の下にお釈迦様の仏像を置いてボディーツリーを飾る方もいます。菩提はサンスクリット語でボディというので、菩提樹はボディーツリー呼ばれます。この木の下でお釈迦様が悟りを開いたので、その様子を表現しようとされるんです。

――すごい、すりかえですね(笑)
大:すりかえです。でも優しさですよね(笑)




■お坊さんのお正月は修正会から
――では、お正月の過ごし方はどうですか?
大:お正月は、除夜の鐘があるお寺さんはやっぱり忙しいですね。それから、除夜の鐘に加えて、「修正会(しゅしょうえ)」といって、元旦の一番最初にお勤めする法要があるのですが、その法要にはたくさんの方がお参りされます。



初詣ってあるじゃないですか。あれは神社に使用する言葉なんです。(新年)初めての「詣で」で「初詣」。お寺では「初詣」とは言わないですね。その言葉の代わりにあるのが、修正会(しゅしょうえ)です。だからお寺のお正月は忙しいです。大晦日から寝れない状況ですよ、おそらく。

――家族でおせちや年越しそばを食べたりはしないですか?
大:おせちはすべての行事が全部終わってからですね。ただ、忙しいのは、大きいお寺とか梵鐘(ぼんしょう)があるお寺であって、小さくて梵鐘のないお寺は、特に何も行事をしないところもあります。私のお寺では特に何もしません。朝のお参りはありますが。


■お坊さんの一番忙しい時期はいつ?
――浄土真宗では、お坊さんの1年間で1番忙しい時期はいつですか?
大:一番忙しいのは、「御正忌(ごしょうき)」といって、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人のご命日の法要の時期が非常に忙しいですね。

――いつですか?
大:1月16日です。1月9日から1週間法要があり、その間はものすごく忙しいです。
これは浄土真宗だけです。浄土真宗では一番大事な法要になります。あと、お盆はやはり忙しいです。お盆参りがあったりしますから。

――他の宗派ではどうなんでしょう?
大:各宗派の宗祖がいらっしゃるので、その方々のそれぞれの命日には必ず法要があると思います。その時期はとても大変なのではないでしょうか。

――お坊さんにお休みはありますか?土日とか、夏休みとか?
大:ないんですよ。365日24時間体制ですね。ですから、休む時はもう固く決めるしかないんです。もう何もしないって。そのかわり、何かあったら誰かに対応してもらうような手続きはしていきます。例えば、旅行するとか、めったに行きませんけども、旅行する場合は、先代の前住職さんがご存命であれば、何かあったら対応してもらえるようにお願いしてから休みを頂くという方法があります。そうでない限りは、もう24時間勤務ですね。

――お休みはないんですね。それは精神的に辛そうですね。
大:普通に考えたら辛いですよね。ですから、私自身は1年に1回だけちょっと仕事から離れてリフレッシュすることもあります。思い出話しですが、小さいときは、父とか母と約束しても、すぐにキャンセルされましたね。外出しようと思ったときにかぎって、お客さんが来られてちょっと待っててと言われ待っていると…。それが1時間、2時間になり、もう行けなくなった、ということはよくありましたね。


■これは知っておきたい!お寺にお参りするときの心得
――若い人がお寺にお参りするのに、やってはいけないこと、心得ておいたほうがよいことはありますか?
大:「靴下」を持ってきたほうがいいかなと思いますね。畳の上は靴下を履いてもらいたいなと思いますね。



――裸足ではだめですか?
大:これは基本的なマナーですね。お茶(茶道)をやるときに靴下や足袋を履かない人はいないですよね。お寺がフローリング(板張り)だったら良いのですが、畳のお部屋に入るとか、畳の本堂に入るときは靴下があったほうが良いと思います。

――女性の場合、ストッキングやタイツなどは大丈夫ですか?
大:大丈夫ですよ。ただあまり足を見せるような恰好は避けたほうが良いかもしれませんね。
あとは、特に禁止するようなことはないですね。


■「法事」は亡くなった方から最後のプレゼント
――お坊さんとして一般の方にやってもらいたいことなどありますか?
大:できたら「法事」というものを大事にしてもらいと思います。最近、すごく寂しいとか孤立した人など問題になってます。でも、「法事」というのは、自分と先祖とか、自分と家族や親戚をつなげ、自分の絆を考え直す大事な場なんです。「法事」を通して人間関係を回復してもらいたいと思います。
実は「法事」とか「お葬式」は、亡くなった方から遺族に対する最後のプレゼントなんです。「いつかはあなたも死ぬんだぞ」、「ちゃんと人生を考えなさいよ」というメッセージでもあるのです。そして、自分が生きる上で、こうやって家族や親戚があって、血のつながりがあってこそ生きることができ、支えあって生かされているんだということを考えてもらう場を、亡くなった方が遺族に対して最後にプレゼントするのが「法事」なんです。


だからこそ、この場を大事にしてもらいたいなと思い、お坊さんも法事とか葬儀をその思いをもって厳修します。そうではない方もいるかもしれませんが(笑)しかし、少なくとも私はそういう意味で葬儀をさせていただいています。だから亡き人を偲びながら自分たちのつながりを考えてもらいたいなと思うので、法事とかお墓参りもそうですが、手を合わす場所を大事にしてもらいたいと思っています。

――法事やりましょう。
大:積極的に出席してもらいたいですね。


■日本仏教を海外へ伝える国際派お坊さんに
――今後の夢や目標などがあったら教えてください。
大:そうですね、いま翻訳、通訳、執筆の仕事など、いろいろなことをさせてもらいながら仏教伝道をしていますので、これをもっと拡大化したいというのが1つですね。あとはやっぱり自分の地元のお寺を大事に守っていきたいなと思っています。そのためにもいまの自分の能力というのをもっと伸ばしたいなと思っています。



あとは、世界進出というか…。日本にはもうたくさんのお坊さんがいらっしゃって、日本国内に仏教を伝えるお坊さんは十分いらっしゃると思いますが、日本の仏教を世界に伝える人というのはあまりいない気がします。そういった役目を担うというか、そういうことをしたいという方がいらっしゃれば全力でサポートさせてもらいたいと思います。

――それはおそらく大來さんだからこそできることかもしれませんね。
大:これが私の伝道なのかなとも思います。これからも自分にしかできない仏道というのを模索していきたいと思います。

――たとえば2015年でいうと何か直近でありますか?今年の目標とか。
大:2015年は…海外で講演をしたいですね。通訳もいいですね!いま日本国内でいろいろと講演をさせて頂いているので、海外で仏教の講演とか法話をさせて頂くご縁が増えれば良いなと思います。



――海外というのは?
大:どこでも。実は昨年末にアメリカとマレーシアで講演してきたのですが、実際特に場所を選ぶことはしませんが、いろいろな方とお話しできる場を少しでも増やしたいと思います。

――世界中で日本の仏教を伝えるんですね。今後ますますのご活躍を応援しております。
本日は貴重な時間をいただき、ありがとうございました。


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いかがでしたか。日本の仏教やお坊さん、お寺の話などを3回に分けてお届けしましたが、身近にありながら知らなかったことが多かったのでは。
「ぶっちゃけ寺」の番組裏話も興味深かったですが、「縁起」「空」の意味、袈裟にある宗派のシンボルマーク、お坊さんと神社、世界からみた日本仏教などなど、普通ではきけない貴重な話をきくことができました。

TV「ぶっちゃけ寺」や著書『英語でブッダ』でもそうですが、「へーそうなんだ」という新しい発見と、たまにくすっと笑う話がはさまれて、最後にはじーんとしたり、為になったりするお坊さんの話はある意味エンターテイメントだなと思う訳です。
バラエティ要素と、トリビア的な要素、そして感動、人生観が変わるような話まで。学校やテレビのない時代ではそれこそ民衆のエンタメや学びの場だったんだろうなと想像します。平成のこの時代に、テレビのゴールデンタイムにお坊さんたちが出演するのも当然の流れなのかもしれません。

多くの日本人は人生の最後にお世話になるお寺とお坊さん。仏教に少しでも興味をもった方は、自分の家の宗派を確認してみたり、お寺にお参りしてみては。



◆著書情報
英語でブッダ
英語でブッダ
著者名:大來尚順 著
出版社:扶桑社
定価:1,404円(本体1,300円+税)
発売日: 2015/1/31


◆出演番組情報
「お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺」(テレビ朝日系列)
MC:爆笑問題
春よりゴールデンタイム進出!4月からは毎週月曜よる7時に放送。
「お坊さんバラエティ ぶっちゃけ寺」公式サイト

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インタビューを終えて。
ちょっと難しい仏教の話も、素人の記者にもわかりやすく話してくれる大來さん。以前はなんだか近寄りがたいと思っていたお坊さんですが、お坊さんって優しい、とお坊さん全体の印象が変わってしまうほどでした。いつも世俗にまみれた「いまトピ編集部」にいるとそのお話に感動しきりで、すっかり心が洗われたインタビューでした。


[ 撮影協力:寺子屋ブッダ ]


(取材・文/いまトピ編集部 鹿乃ハル、撮影/いまトピ編集部 吉永)


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