【約100年前の軍隊手帳】何が書かれているのか開いて調べてみた

2015/12/12 13:40 服部淳 服部淳


「軍隊手帳」に続いては、「在郷軍人須知」です。「須知」とは、「心得」といった意味のようです。また、在郷軍人とは、前回記事でも書きましたが、軍隊所属経験があり、現役軍人ではない人を指します。

「軍隊手帳」の中身をさんざん見た後なので、すでに時代感覚が麻痺していますが、大正8年(1919年)改訂版です。


表紙をめくると、まず目次があり、ここでも勅語寫(写)から始まります。在郷軍人に関する勅語です。


在郷軍人とはなんであるかをまとめた「網領」に続き、「軍人勅諭衍義」では初代天皇とされる神武天皇にはじまる天皇と天皇の軍隊にまつわる2500年ほどの歴史が綴られています。


日清戦争、日露戦争までが語られると、「軍人は信義を重んずべし」など、「軍人手帳」に記されていた「読法(軍人読法)」の詳細版のような内容が続きます。


40ページ目からは、「法規摘要」という項目になり、在郷軍人に関するハウツーが記されています。上の画像の50ページ目には、傷痍(疾病)で召集に応えられない場合の届書の書き方が紹介されています。


最後は付録として、「在郷軍人会」の設立趣意が語られ、この冊子の発行時の海軍大臣・加藤友三郎と陸軍大臣・大島健一や、第18代内閣総理大臣などを歴任し、当時の帝国在郷軍人会会長を務めていた寺内正毅の名前が記されています。


他にも付録には、在郷軍人会の会旗のサイズや旗竿の長さや材質などまで細かく明記されていました。現在の社員手帳(存在しない会社も増えてきているでしょうが)や学生手帳を感じさせる内容です。


裏表紙には、帝国在郷軍人会本部編集部が発行する他の図書目録が掲載されていました。月刊雑誌「戦友」や月刊雑誌「我が家」、「六週間現役兵の覚悟」など、機会があれば手にしてみたいタイトルの数々です。




手帳・冊子類の最後は、「詔勅集」です。「詔勅」とは、「天皇が公に意思を表示する文書。詔書と勅書と勅語と」ということなので、天皇のお言葉すべてをまとめた一冊ということのようです。


表紙をめくると、他のと比べると劣化が少なく紙も白味を保っています。しかも昭和19年4月29日と、日付も新しい(感覚麻痺)。昭和19年の天皇誕生日に発行のようです。


目次はすっきり見やすくなっています。現代の書籍にだいぶ近づいた気がします。


中身はこんな感じに行間や字間も広く、(文語体でなければ)とても読みやすいです。






最後は太平洋戦争開戦時に陸海軍人へ賜られた詔勅で、冊子は締められていました(52ページ目は白紙)。



感想など、心の声は一切表されてはいませんが、一冊の軍隊手帳を読み解くだけで、「シベリア出兵」当時の緊迫した状況が伝わってきたのではないでしょうか。引き続き、昭和の歴史の1ページを紐解いていければと思います。

(服部淳@編集ライター、脚本家)

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