【アップルvsうんこ】iPhoneゲーム「ころがせ!ケプリくん」リリースまでの道のりまとめ

2015/7/6 12:20 吉永龍樹(よしながたつき) 吉永龍樹(よしながたつき)


非常に長い道のりでした…。

gooいまトピより、ふんころがしが主人公のiPhoneゲーム「ころがせ!ケプリくん」がようやくリリースされました。


ころがせ!ケプリくん
ころがせ!ケプリくん
開発元:NTT Resonant Inc.
無料
posted with アプリーチ



このアプリは見ての通り「ふんころがし」が主人公なのですが、なんと数ヶ月に渡り5度のリジェクト(販売申請却下)を受けていました。理由は主に「うんこ」です。

6度目の申請でようやくリリースすることができたのですが、現在のAppleさんの うんこに対する厳しさが他の方の参考になるかもしれませんので、記録として記事にまとめたいと思います。



■企画段階



企画が立ち上がったのはなんと昨年のことです。

ふんころがしは「ふん」を集める生き物なので、「なめこ栽培キット」のような放置すると貯まり、回収するのが気持ちいいゲームをふんで作成したら面白いのではないか?という単純な思いつきがスタートでした。

アプリ業界ではない僕も「Appleの審査はうんこに厳しい」ということはうっすらと聞いていたのですが、ふんころがしが扱うのは排泄物としてのうんこではなく住居や食料としてのうんこ。

なので下品とは見なされないのでは?いや、むしろ教育的なのではないか?という淡い期待があったことは否定できません。



【企画当時のイラスト。「うんこ つくるよ」の文字が今見ると涙を誘う】



しかし「ふんころがし=たぶんOK」の期待だけでは現実感が無いので、まずはiPhoneアプリに「ふんころがし」をテーマとしたものが存在しないかどうか調べました。すると……



バッチリあったのです。

しかもひとつはフジテレビさんのアプリ。見ると概念としてのうんこだけではなく、直接的な「まきぐそ」までアイテムとして描かれています。

これは完璧に大丈夫だろうと判断し、開発が進むことになりました。

これから先、大変な困難が待ち受けているとも知らずに…。



■申請1回目



動物とうんこのイラストを書き、エンディングまで何度もテストプレイを行い、ゲームバランスを整え、実現したいけれど難しい所は諦め、バグを修正するなどしてなんとかアプリが完成しました。

サブジャンルを「教育」などに設定し、さっそくAppleに申請。5日ほどで(April 22, 2015 at 1:57 AM)初めてAppleからのコメントが届きました。それがこちらです。




リジェクト(申請却下)でした。


ダメだった点は2つ。

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2.25 Details
The feature at the top right corner in your app displays or promotes third-party apps, which violates the App Store Review Guidelines. We’ve attached screenshot(s) for your reference.
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アプリ右上に他社の広告バナーが付いているからダメだよ、というNG。これはバナーの修正などで素直に対応します。それよりも問題になったのが次のこちら。

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16.2 Details
Your app contains content or features that are included mainly to upset or disgust users. Specifically, your app has a Dung Beetle collecting feces.
We’ve attached screenshot(s) for your reference.
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単語の意味がわからないものもあったのでGoogle翻訳すると、このように表示されました。

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あなたのアプリは、コンテンツや、主に動揺や嫌悪感をユーザーに含まれている機能が含まれています。具体的には、あなたのアプリは糞ビートル収集 糞を持っています。
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あなたのアプリは糞ビートル収集 糞を持っています。


ビートルというのはカブトムシなので、「糞ビートル(a Dung Beetle)」は「ふんころがし」でしょう。「ふんころがしが うんこ(feces)を集めているのでダメだ」という、このアプリにとってはクリティカル過ぎるNG内容でした。

さらに下を見ると具体的なダメな箇所として、添付画像がついていました。赤字で、しかも日本語で注意書きがあります。


これらの添付ファイルは不適切なコンテンツ(ヌード、ポルノグラフィ、不適切な表現など)を表示する恐れがあります。


恐る恐る添付画像を開くと、出てきたのはこちら。




不適切というか、アプリの通常画面でした。

もうなんというか、そもそも全部がダメだったわけです。



■申請2回目

ふんころがしがうんこを集めるのがNGということで、次に取った作戦は

「うんこに見えるかもしれないけれど、あれはうんこじゃない」

というものです。




ふんころがしアプリを製作中、「ウンログ」というアプリの開発者さんとお会いする機会がありました。どう見てもうんこっぽいキャラクターがどうして審査を通過したのか聞いたところ、

「うんこを理由にリジェクトをされたが、あのキャラはうんこではない。ああいう神様が日本には存在するのです」

とAppleに説明したら通ったと教えてくれました。


確かに、審査をしている(おそらく英語圏の)人を納得感のある理由で説得できればアプリは通過します。そこで、うちのふんころがしアプリには以下のようなコメントをつけて再度申請しました。


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16.2 The Dung Beetle is collecting japanese cookies.(not feces) どうぞよろしくお願い致します。
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あのふんころがしが集めているのは日本のクッキーです。(うんこじゃないです)

と書いたのです。突然日本語で「どうぞよろしくお願い致します。」と書いてあるのが怖いですが、まぁ審査の人も意味はわかるだろう、と思いそのまま送信しました。

茶色く見えるのはうんこではなく、クッキーだという説明。このまま無事通ってくれ…と思いつつリジェクトから5時間後のApril 22, 2015 at 6:51 AMに申請しています。

早朝6時から英語でうんこをクッキーだと言いはる35歳の自分。あのころの未来に ぼくらは立っているのかなぁ…。



■申請3回目

次にAppleから返事が来たのはMay 1, 2015 at 8:53 AMでした。
結果はリジェクト。

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Thank you for providing this information.
We have begun the review of your app but aren't able to continue because we need additional information about your app.

At your earliest opportunity, please review the following question(s) and provide as much detailed information as you can. The more information you can provide upfront, the sooner we can complete your review.

- Please provide all images used in this app.

16.2 Details
Also, your app still contains content or features that are included mainly to upset or disgust users. Specifically, your app screenshots contain inappropriate images.

We’ve attached screenshot(s) for your reference.
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説明文が長いです。

内容は「そもそも審査できないので、アプリで使っている画像を全部見せろ」という返事でした。8日も待ったのに一歩も前進せず。なんというかもう

完全にAppleさんに目をつけられた感じです。

僕ももう35歳。しかたないので「うんこ」をクッキーだと言い張ることは諦め、うんこ画像を書き直すことにしました。




こちらが会社通常業務の合間に書き直した画像。

クジラの排出物は「竜涎香」という漢方にも使われる胃石のような固体、シカは鹿せんべい、ウシとゾウは食物繊維が見えておりかなり微妙ですが、色をうんこから遠ざけることで対処しました。こんな色のうんこは存在しない、いわば「非実在うんこ」というわけです。




当初の動物の下に描いてある「リアルうんこ」と比べると、だいぶうんこではなくなっているのがわかると思います。これが35歳の大人の知恵というものなのでしょうか。

申請したのはMay 18, 2015 at 3:02 PM。GWがあったのと、通常業務の合間に行うイラスト制作と再ビルドなどでかなり時間がかかってしまっています。

というか、うんこを書いている間に誕生日を迎え、僕は36歳になっていました。アラフォーだ…。



■申請4回目

次に返事が来たのは12日後。May 30, 2015 at 5:50 AMでした。

そして内容は前と同じ「そもそも審査できないので、アプリで使っている画像を全部見せろ」というものでした。

うんこ画像は全部取ったのに問答無用でアウト。「僕たちはもう、うんこ画像を全部差し替えたくらいではダメなフェーズに来てしまったのだな…」

とセンチメンタルを感じながら、アプリで利用している全画像210点をZIPファイルで固めて、June 1, 2015 at 5:35 PMに再申請しました。






■申請5回目

次に返事が来たのは10日後。June 11, 2015 at 4:36 AMでした。

またもリジェクトだったのですが、内容を読んでみると……

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16.2 Details
Your app contains content or features that are included mainly to upset or disgust users. Specifically, your app still has references to 「ふん」.
Please remove all references to 「ふん」.
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画像はどうやら通った模様ですが、新たに別の指摘が出てきました。

「ふん」という日本語表記を全て削除してください、というのです。

references to 「ふん」と、英語の中に唯一日本語で「ふん」が出てきているのがシュールです。

そもそもこれは「ふんころがし」のアプリなので「ふん」の削除はタイトルにも関わるクリティカルな指摘ですが、他のふんころがしはどうしているのか…。

そんな中の6月5日、大手メーカーのkingさんよりピラミッドとふんころがしをテーマにしたアプリがリリースされたようなので、早速見てみました。




?!





カナブン!!


古代エジプトで崇拝されていたのはカナブンではなく「ふんころがし(丸いふんを太陽に見立てていた)」なのですが、こんな大手メーカーさんですら「ふんころがし」と言わないということは、うちのような小型のアプリはどうやったって通るわけがありません。

既に市場に出ているフジテレビさんなどのふんころがしアプリは、おそらくAppleの審査がゆるい時期に通過したのでしょう。
もう今はうんこ規制が強まったので、もう「ふん」に関する記述は未来永劫完全NGと考えたほうが良さそうです。

そこで、説明文章やタグから「ふん」「ふんころがし」に関する全ての記述を削除しました。



また、ボーナスキャラクターの「ころが神」も危ない可能性があると考え、「ゴールデンケプリ」という名前に変更。

全ての点を修正して、数日後に準備が整いました。当初予定したものとだいぶ違うものになってしまったけれど、Appleの指摘は全部対応したはず。今度こそ行ける…!

全てのうんこを削除した僕は、祈りにも似た思いで申請依頼をクリックしました。




■申請6回目

10日ほど経ち、June 24, 2015 at 9:20 AMに再びリジェクトが届きました。
数ヶ月続くリジェクトが当たり前になってしまい、特に驚かない自分に驚きます。

内容を読んでみると……

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2.25 Details
Your app includes content or feature that displays or promotes third-party apps, which violates the App Store Review Guidelines.
3.10 Details
Your app includes content or features that can manipulate the user reviews or chart ranking in the App Store.
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うんこに関して書かれていない!

ついに我々はうんこの危機を脱したのです!


リジェクト内容はゲーム下部に貼られているバナー広告が、アプリのランキング順位操作に関係している、というもの。

このリジェクト理由は、ここのところゲーム開発界隈ですごく頻繁に目にするようになっていたもの。さっそく広告SDKを最新の物に入れ替えて、翌日25日に申請を行いました。



■そして通過

8日後、ついにアプリ通貨のお知らせが届きました。
それが冒頭でもお知らせした「ころがせ!ケプリくん」です。

ころがせ!ケプリくん
ころがせ!ケプリくん
開発元:NTT Resonant Inc.
無料
posted with アプリーチ


ボリュームも少ないカジュアルゲームなのに、開発期間よりはるかに長い「うんこをめぐるやりとり」により、大いなる苦戦を強いられたケプリくん。

今後うんこに関わるアプリを出そうとする方の参考にしていただくと同時に、これを読んだ読者の皆さんはぜひ一度エンディングまでプレイしていただければ幸いです。

(何か運のいいことがあるかもしれませんよ!)