犬なのか?牛なのか?暗がりの中で2度も遭遇したナゾの黒い生き物の正体

2015/2/6 11:00 xxx of WONDER(オブ・ワンダー) xxx of WONDER(オブ・ワンダー)




みなさんこんにちは。
オブワンダーの作詞担当、フレネシです。

今回は、連載第一回に続き、「私が遭遇したUMA」についてお話しようと思います。

皆さんは、ペットを飼ったこと、ありますか?

私の実家では、かつてうさぎと犬を飼っていました。うさぎは姉が主に世話をし、犬は家族皆で世話をしていました。

最初の犬を飼い始めたのは私が小学生の3年のとき。日本犬の雑種の仔犬が父の友人宅で生まれ、もらってきたのが始まりでした。名前はベタな「太郎」。ベージュの毛色にちなんだ素敵な名前をあれこれ考えていたのに、「呼びやすい」という単純な理由から、親が適当につけたこの無難な名前に、いつの間にか落ち着いたのでした。

朝の散歩は私の日課となりました。学校に行く前、いつも6時に起床し、散歩を欠かさないようにしていました。夕方も他の家族が行けないときは私が散歩に行っていたので、家族の中では一番私が可愛がっていたように思うのですが、その割には懐いてくれませんでした。あまり愛嬌がないというか、私には媚びを売らないというか…。そういう犬でしたが、飼い犬とはベタベタしない距離感で付き合うのがちょうどよいと子供ながらに感じていたので、親友や兄弟という関係ではなく、あくまでも太郎は「飼い犬」であり、ごく犬らしい犬だな、と思って世話をしていました。

さて、いつもと違うお散歩コースを選んだ12月のある霙雨の夕暮れ、太郎を連れて歩いていると、帰路を急ぐ隣町の学区の中高生たちに紛れて、黒い犬を連れたおじさんが歩いているのが見えました。

まだ若く好戦的な雄の太郎は、他の犬を見かけるとじっとしてはいられず、ちょっかいを出してしまう質だったので、できるだけその犬に近づかないよう、20メートルほどの距離を保ったまま、しばらく後ろをついていくことにしました。



前の犬の動きを注意深く観察していると、私は、何やら様子がおかしいことに気付きました。犬は確かに小型犬くらいの大きさでしたが、犬と呼ぶには、首から肩にかけての動きと全身のフォルム、そして歩の進め方が、あまりに犬らしくないのです。

その動きは、例えるならばまさに会津の赤べこ。黒い生き物は、赤べこの張子のような不安定な首のゆらぎを保ったまま、ゆっくりと前進しているようでした。

飼い主のおじさんがどんな風貌であったかはほとんど記憶にありません。ただ、覚えているのは、その黒い生き物が赤べこの張子のようであった、という事実だけです。

そもそも、犬なのか、何なのか…… 非常に好奇心をかき立てられたのですが、その先の十字路で、おじさんと犬が私の自宅とは逆方向の中山道へと折れていったため、また、日が落ちてそろそろ暗くなり始めたこともあって、諦めて来た道を戻ることにしました。

その後も何度か太郎を連れて同じ散歩コースを彷徨ったのですが、以後、おじさんと張子犬に遭遇することはありませんでした。張子犬について友人や家族に聞いてみたことはありますが、大抵は「ふ~ん、で?」という反応で、興味を示す人はだれもいなかったこともあり、私自身「単なる見間違いだったのかな…」と思い始め、次第に忘れていったのでした。

しかし、私が高校生になったある日、自転車で家路を急いでいると、思いもよらず、再びその生き物と遭遇するチャンスが巡ってきたのです。

以前見かけた場所から距離にして500メートル南、運送業者の倉庫の裏手で、薄暗くなった背景に溶け込んだ人影と黒い犬の姿。その犬のフォルムは、まさにあの忘れかけていた赤べこの張子でした。以前見たときより、一回りほど大きくなっているように感じましたが、それは私の気のせいだったのかもしれません。ともかく、あの犬にもう一度遭遇したことで、私の確信はいよいよ確固たるものとなりました。



「やっぱりいたんだ、張子犬…!」

自転車を止め、暗がりの中で目を凝らし、しばし犬をじっと観察することにしました。しかし、どんなに見つめても、ボディの黒が濃すぎるのか、ディテールが細部までわからないのです。まるで、空間にぽっかりと穴でも空いているかのようです。飼い主のおじさんに怪しまれないよう、じりじりと距離を縮めるも、街灯の少ない裏道の暗がりの中では、得られる情報量があまりに少なすぎました。

長い首のライン、尻尾の細さ、躍動的でない進み方。それらのいずれも、これまでに見たことのある犬とは一致せず、私は混乱するばかりでした。それは犬なのか、何なのか? あえて言うなら、小型の牛。しかし小型犬くらいのサイズの牛です。そんな牛、存在するはずがありません。結局正体はわからないまま、遠ざかってゆくおじさんと犬の後姿に二度目のさよならをしたのでした。

後日、どうしても気になり、図鑑で調べてみました。もしかしてべこの張子に似た犬、他の生き物ががいるかもしれない、と思ったのです。そこで、ある特定の犬種、または他の生き物だったのではないかということで、自分なりに仮説を立ててみました。



《仮説その1》黒いブル・テリアだった

大きさは近い。顔の形、その他のディテールに牛っぽい要素はある。でも、躍動的な動きはフツウに犬らしいので違う気がする。





《仮説その2》黒いフレンチ・ブルドッグだった

耳の形状と首の短さ、太さがあの不思議な生き物とはかけ離れているかも。





《仮説その3》黒いスコティッシュ・テリアだった

耳の形状は違うけれど、その他は近いような…。でもテリアだったらテリアとわかったはず。なぜなら隣家の住人がテリアを飼っていたから。





《仮説その4》黒いミニチュア牛だった

ああ~、ミニチュア牛、思ったよりやっぱり大きい…。





《仮説その5》そもそも生き物ではなかった
黒べこの張子にタイヤをつけて、変わり者のおじさんが犬を散歩するようにリードで引いてただ歩いていた。実はこの説が一番しっくりくる。





あれこれ考えを巡らせてみたものの、未だ、その答えは見つかっていません。

あれ以降、おじさんと犬と会うことはありませんでしたが、私は今でも、確かに張子犬が存在する、と信じています。

赤べこの張子みたいな犬(または他の生き物)について知っている人がいたら、どんな些細な情報でもかまいませんので、ぜひ教えてくださいね。

(文・イラスト:フレネシ /xxx of WONDER)