地方で広告塔?V6岡田准一の知られざるもう一つの顔

2014/10/15 21:53 柚月裕実 柚月裕実

現在放送中のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』。先日の放送では視聴率17.6%(関東地区)をマークし、二ヶ月ぶりに同時間帯のトップを奪い返したという。ドラマもいよいよ大詰め。クライマックスに向けて、さらに勢いを増しているようだ。

オカダのはなし

ご存知のとおり主人公・黒田官兵衛役をつとめるのはV6の岡田准一。ジャニーズのアイドルグループV6のメンバーであると同時に俳優としても活躍している。今回の大河ドラマで老若男女から知られる存在となった岡田だが、彼にはまだ国民的レベルでは知られていないもう一つの顔がある。


■アイドルなのに武術のインストラクター

岡田は1980年11月18日生まれ、大阪府枚方市出身。これまで実にたくさんの作品に出演し様々な役どころを演じてきたが、ドラマ『SP』への出演をきっかけに格闘技に目覚める。“ちょっとかじったレベルだろ?” もしかしたらそんな先入観を持つ人も少なくないかもしれない。しかし彼は違う。


『昔の「スターさん」と呼ばれるような役者さんたちは、剣道や柔道をマスターして、きっちりカラダを使える技術を持っていて、その動きや所作を見た男性スタッフが思わず「きれいやわ~」「惚れるわ」と圧倒されてしまう。そんな場面を見てきた僕は、いつか自分もそうなりたいと憧れていた。』


自身初のエッセイ『オカダのはなし』(マガジンハウス)で、役者としての構えをこう綴っている。アクションシーンが多いドラマのために、世界中の格闘技や武術を調べあげ、フィリピンの伝統武術「カリ」に辿り着く。基礎の習得では物足りず、のめり込んだ岡田は弟子入りを決める。さらにはジークンドー、修斗、柔術、居合と5種類もの武術を習得し、カリ、ジークンドー、修斗においてはインストラクターの免状を取得したという。『「カリ」という名前を借りる以上は関係者に恥じない姿を』という彼の謙虚な姿勢からも感じられるように、武術を通して得たものは「心、技、体」そのものである。

迫力のあるアクションシーンが見どころの『SP』。映画版では殺陣のアイデア出しから加わり、ほかの俳優陣よりも2ヶ月長い10ヶ月という時間を作品に注ぎ込んだという。ノースタントで挑んだ映画版の迫力は相当なものだった。

『軍師官兵衛』では物語の展開に合わせて髪型を変えた岡田。役のためならばスキンヘッドも厭わない。クランクアップの打ち上げには、ありのままの姿で参加し、共演者からの感謝の言葉に涙したと報じられた。一年という長い月日をかけて撮影する大河ドラマで、体力、精神、そして技術をあますことなくぶつけた証の涙でもあったのではないだろうか。


■アイドルなのに「超ひらパー兄さん」

寡黙な役からコミカルな役まで幅広く演じる岡田だが、意外な一面もある。大阪府枚方市にある遊園地『ひらかたパーク』の広告塔をつとめているのだ。

2009年にブラックマヨネーズの小杉竜一を起用した「ひらぱー兄さん」のキャラクター戦略がヒット。一億円の赤字から一気に黒字へと転じた過去がある。そのひらパー兄さんのバトンを2013年に岡田が引き継いだ。そして一年間の活動が認められ、2014年からは園長に昇進。しかし同時に「年間来園者が100万人に達しない場合は解任」という厳しいミッションを背負っている。

公式グッズには岡田の目元の部分をプリントした「兄さんアイマスク」(700円)などが販売されている。これをつければアトラクションのスリル感が増すだけでなく、一瞬でも岡田君になれるという優れもの。大阪ならではのユーモアが光るグッズだ。

同じジャニーズでいえば、SMAPがユニバーサル・ジャパン大使に就任しているが、岡田単独とはいえ全国的な知名度に欠ける施設の広告塔とは意外だ。仕事を選ばないといっては失礼だが、大河ドラマの主役に抜擢されるほどのスターがこの仕事を引き受けた。それは地元への感謝や愛するがゆえの選択だと思うと、彼の人柄がにじむ様子に惚れ惚れしてしまう。


「この仕事を18年以上続けてこられたのは、運が良かったからだと思っている。」

岡田のエッセイはこんな一文からはじまる。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』のコーナー「ジャニーズ予備校」を経てデビューした異例の経歴を持つ岡田。王道の道を歩まなかったことが影響したのか、当時はこの人気も一瞬で消えるものだと思い、大学を出て教師になることも視野にいれていたとか。

ついさっきまで一般人だった人が、いきなり芸能界に足を踏み入れるのだから、不安に押しつぶされるのも無理はない。しかし事務所の力や状況に流されることなく、自分の信じた道で着々と努力を続ける岡田はとてもかっこいい。喜怒哀楽を表わにするキャラではないだけに、フタを開けると出てくる奥深いエピソードや、彼の思慮深い文章には感銘を受ける。

「運も才能のうち」と言われるが、回ってきた運をつかみ、そして努力を怠らなかった。真面目とはこういう人に使う言葉だろう。それだけに「超ひらパー兄さん」でみせるユーモラスな一面には、ぐっと心を掴まれてしまう。繊細さと強さを併せ持つ岡田准一は、今後ますます花を咲かせるに違いない。


(柚月裕実)