ある日、夫の浮気が発覚したら……。あなたはそんなことを考えたことがあるでしょうか。

「まさかうちの夫にかぎって……。」
「うちの夫は時間もお金もないから大丈夫。」

そんな風に思っている方も多いと思います。

しかし、離婚相談の現場では、結婚したらみんな浮気をするんじゃないかと思うくらい、異性問題が理由で離婚に至る夫婦が多いのです。

まさに、配偶者の浮気は日常茶飯事、明日は我が身なのです。

今回は、夫の浮気が発覚した際の、上手な着地の仕方についてお伝えしたいと思います。

「浮気=離婚」ではない

今まで信じていた相手に裏切られるのは、本当につらい体験です。

「突然に地面が崩れ落ちるような感じ」、「食事の味が分からなくなった」、「何をしていても、一日中頭を離れない」など、相談者から語られる言葉は切実です。

浮気をされるということは、それだけショッキングな出来事なのです。だとすると、浮気発覚後は離婚へと進む夫婦が多いのでしょうか。

答えは「ノー」です。

子育て真っ最中の妻の場合、離婚後の経済不安が理由で離婚を躊躇します。

また、夫をほかの女性にとられると思ったり、夫の気持ちが自分から離れていることが分かると、余計に追いかけたくなる心理も働きます。

そのため、浮気をされても、一度は「許す」という選択をする妻も少なくありません。

しかし、夫の浮気という大事件の後、元の仲の良い夫婦に戻るのはそう簡単ではありません。

浮気後の修復がうまくいかない理由

再犯への不安

浮気はとても常習性が高かったりしますので、夫から「もうしない」という反省の弁を引き出したとしても、妻は常に「また裏切られるのでは。」と不安になってしまいます。

そして、その不安を解消するため、夫のカバンや財布の中をチェックしたり、携帯電話をこっそり見たりしてしまうのです。

場合によっては、浮気の罰として、そういった点検行為が公然と行われることもありますが、夫にしてみれば、「いつまで俺を犯罪者扱いすればいいのか」という不満につながったりします。

また、妻としても、「こんなことをしないと夫を信じられない自分が嫌だ。」と、自己嫌悪に陥ることも少なくありません。

一度あることは二度ある、二度あることは三度ある、そんな不安が妻を点検行為にはしらせ、夫婦関係の更なる悪化をまねくのです。

いつまでも責める

頭では相手のことを許したいと思っていても、離婚せずに許してあげていることが何だか理不尽に感じたり、自分だけ我慢させられているように感じたりします。

そんな状態が続くと、ついつい、ことあるごとに夫を責めたり、いつまでも過去の浮気を持ち出してちくちくと嫌味を言ったり……、ということになるのです。

夫としても、悪いことをしたのは重々承知ですから、最初は平謝りに謝ります。

しかし、あまりにいつまでも過去の浮気を責められると、「いつまでもしつこい」、「だったら、もう離婚でいい」となってしまうのです。

浮気が発覚した後、一度は関係修復を選んだ夫婦でも、「過去の浮気」にとらわれすぎてしまうと、関係修復が難しくなってしまうのです。

浮気発覚後の上手な着地の方法

では、どんな風にすれば、浮気発覚後、夫婦関係がうまく修復できるのでしょうか。

まず、それぞれの気持ちを整理してみましょう。

妻の気持ち

  • 誠意を見せてほしい(「もうしない」という決意をみせてほしい)
  • もちろん、誠意だけではなく、本当に二度と浮気をしないでほしい
  • 自分だけが損をしたくない(浮気を許した上に、再度裏切られるというばかをみたくない)

夫の気持ち

  • スパっと許してほしい
  • もうしないという気持ちを信じてほしい
  • いつまでも責めないで

こんな夫婦の気持ちを汲み取り、形にするのが「ラストワンチャンス公正証書」です。

以下で詳しく説明します。

ラストワンチャンス公正証書とは

読んで字の如しですが、「今回の浮気は許してあげる。でも、今度、同じことをやったら離婚するからね」という最後のチャンスを与える内容の公正証書のことです。

具体的には、「不貞をしてしまって、すみません。もう2度としません。今度したら離婚に応じます。その場合は慰謝料を〇〇万円支払います。」といった内容の公正証書を作成しておくのです。

確かに、夫婦間の契約は、いつでも取り消せるという法律があります。そのため、公正証書を作ったからといって、必ずしも書いてある通りになるとは限りません。

しかし、あるとないとでは、全然違います。調停や裁判になった際に強力な証拠となります。

また、何より、心理的な効果が期待できます。

離婚には踏み切れないけれど、簡単には許したくないという人にはぴったりです。

また、ネチネチと嫌味を言われたくない、ずっと疑われたくないという夫側のニーズを満たすことができるのも、このラストワンチャンス公正証書の優れたところなのです。

ADR(裁判外紛争解決手続)という話合いの方法

ただ、こういった内容を夫婦のみで話し合うのは難しかったりもします。

そんな場合は、ADR(裁判外紛争解決手続き)という民間の仲裁・仲介のシステムを利用するのも一つの方法です。

ADRは、専門家が夫婦の間に立って、仲裁・仲介してくれる制度です。

法律に基づき、法務省が運営していますので、安心ですし、利用料も概ね安価です。

あまり知られていませんが、意外と使い勝手がよかったりしますので、ご興味のある方はぜひ法務省のHP(http://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/index.html)を確認してみてください。

専門家:小泉 道子■専門家プロフィール:小泉 道子
離婚テラス(相談機関)」及び「 家族のためのADRセンター(法務省認証機関)」代表。家裁勤務経験をいかし、悩めるご夫婦の仲裁役として奮闘中です。