夫婦関係が悪くなり、「離婚」という2文字が頭をちらつき始めたとします。

でも、どう考えても夫婦間ではうまく話合いができそうにない……。

そんなとき、あなたなら、どんな方法が思い浮かびますか?

弁護士でしょうか、裁判所でしょうか。それとも、親や友人に仲介してもらうという方法でしょうか。

でも、弁護士や裁判所は大げさすぎる、お金もかかる。

親や友達に相談することも考えたけれど、余計にもめそうだし、そもそも法律の知識もないし……。

そんなときに思い出していただきたのがADR(裁判外紛争解決手続)という制度です。

ADRは、民間の仲裁機関で、「安い、早い、便利」が特徴です。

今日は、知らなきゃ損する、ADR制度についてお伝えしたいと思います。

ADR(裁判外紛争解決手続)とは

ADR制度ができた背景

家庭裁判所に限らず、日本では、裁判所で裁判や調停をしようとすると、大変長い時間がかかります。

テレビなどで「〇〇事件の判決がついに出ました。」と報道されるたび、「あの事件、まだ裁判やってたんだ。」と思う方もおられるでしょう。

刑事事件に限らず、離婚調停や裁判もしかりです。離婚が成立するまでに1年以上かかったなんてこともざらにあります。

そのため、裁判所以外でも、裁判所のような公平・中立な専門家に仲介してもらえるように、ADRという制度ができました。

ADRとは、「Alternative Dispute Resolution」の略で、裁判に代替する解決方法といった意味です。

現在は、ADR法に基づき、法務大臣が認証を与えた機関だけが認証ADR機関として仲裁や仲介活動を行っています。(詳しくは、法務省のHPをご参考ください。)

ADRのメリット

融通がきく

家裁の調停は、平日の日中のみです。しかし、働いている人が、定期的に平日の日中に時間を作るのはかなり難しく、結果的に職場に言わざるを得ないということもあります。

一方、ほとんどのADR機関は、平日の夕方以降や休日も調停が可能です。

また、ADRは、遠方の方やDVなどが原因で同じ場所にいられない方の場合、スカイプやzoomといったwebシステムを使って話し合うことも可能です。

早期解決が期待できる

家裁の調停に比べ、調停期日の間隔を当事者の希望により決めることができます。

家裁であれば、いくら結論を急ぎたくても、次回期日が入るのは1か月以上先になります。

一方、ADR調停であれば、都合されよければ、1週間後に次回調停を予定することもできます。

調停委員にはずれがない

家裁の調停委員である以上、離婚に関する法的知識や調停進行に必要な能力を兼ね備えていなければいけません。

また、最近は、調停委員に対する研修制度を整えている家裁も多く、以前のように、近所のご意見番みたいなおじいちゃんが出てきて「浮気は男の甲斐性だから、一回くらい許してやったら」なんてことを言われる悲劇は少なくなっています。

しかし、やはり、当たりはずれがあります。

裁判所の調停を利用した当事者から聞かれる苦情のうち、一番多いのが調停委員に対する不満ではないでしょうか。

この点、ADR調停の場合、調停委員はその道のプロが務めます。

そもそも、「調停者資格」を法務省に届けるのですが、厳格な要件を求められますので、ADRの調停者が知識不足ということは、まず、ありません。

少ない費用で弁護士の意見を聞ける

法務省から認証を受けたすべてのADR機関は、何等かの形で弁護士に相談するルートを確保しています。

中には、必ず調停の期日には弁護士が同席したり、弁護士自身が調停委員の役割を果たす機関もあります。

弁護士に依頼するとなれば、何十万(離婚の場合だと70万円~)という費用がかかるわけですから、1期日1万円程度のADR調停の方が断然お得だということになります。

ADRのデメリット

お金がかかる

家裁の離婚調停は、申立費用の数千円がかかるだけです。

都度利用料はありませんので、1回で不成立になろうが、調停を2年続けようが、費用に変わりはありません。

しかし、ADRの場合、多くは期日1回ごとに1~2万円の費用がかかります。そのため、家裁の調停に比べれば、お金がかかります。

ただ、家裁で離婚調停をする場合、自分はひとりで乗り切るつもりでも、相手に弁護士がついた場合、やむを得ず自分も弁護士を付けざるを得ないことが結構あります。

やはり、自分だけ専門家からのアドバイスが受けられないとなると、不安感が増しますし、言い負かされそてしまいそうになるからです(現在、家裁の離婚調停で弁護士が代理人としてついている割合は7~8割前後です)。

強制力(法的・心理的)が弱い

裁判所の手続きに比べ、相手に与える強制力はいろいろな意味でADRの方が弱かったりします。

まず、相手がADRに応じてくれなければ、それ以上手続きを進めることはできません。

また、心理的にも、裁判所から連絡がくるのと、民間の仲裁機関から連絡が来るのとでは、必然的に与える印象が異なってきます。

ADRの本当の価値とは

先ほど、ADRは「早い、安い、便利」と書きましたが、ADRの本当の価値は、別のところにあります。

それは、「家庭の問題を扱うのに適している」ということです。

夫婦の問題は、刑事事件や民事事件と異なり、一生添い遂げる覚悟で選んだ相手との争いです。

そのため、弁護士に依頼し、徹底的に裁判所で争った結果、完全勝利を手にしたとしても、後に残るのはむなしさです。

一度は心から愛した相手に対し、あらを探し、悪口や不平不満をぶつけるような書面を作成して戦うのです。

もちろん、相手からも同じような書面を出されます。

しかし、ADRは違います。

どちらの味方でもない、中立な専門家の仲介を得ながら、夫婦で問題を解決していくのです。

誰からも、結論を押し付けられたり、説得されたりしません。

自分たちの力で、穏やかな解決が見込めるというのが、ADRの本当の価値なのです。

専門家:小泉 道子■専門家プロフィール:小泉 道子
離婚テラス(相談機関)」及び「 家族のためのADRセンター(法務省認証機関)」代表。家裁勤務経験をいかし、悩めるご夫婦の仲裁役として奮闘中です。