不定愁訴のような症状が起こる、橋本病を知っていますか?
女性がかかりやすい身近な病気にもかかわらずあまり知られてない、橋本病についてまとめました。
橋本病に罹患する9割が女性
30~40代の女性に多い甲状腺の病気、橋本病。甲状腺とは、のどぼとけのすぐ下にある、ちょうちょが羽を広げたような形の臓器で、甲状腺ホルモンを作っている器官です。
橋本病は、甲状腺が慢性的に炎症を起こしている状態のことをいいます。
この病名は、1912年に九州大学の外科医・橋本策(はかる)博士が世界初の論文をドイツの医学雑誌に発表したためつけられました。
実は、成人女性の10人に1人がかかる病気で、女性の患者が9割以上を占めます。
橋本病にかかっていても、自覚症状がない場合があり、なかなか気づきにくい病気のひとつでもあります。
自己免疫の異常により、正常な細胞を攻撃してしまうことで、甲状腺に炎症が起こるのが要因のひとつですが、詳しい原因はわかっていません。
橋本病の主な症状
橋本病は、甲状腺ホルモンが低下するため下記のような症状がみられます。
ただし、甲状腺機能低下症になる人は10%、軽度が20%で、残りの70%は甲状腺機能が正常です。
橋本病を発症していても、自覚症状がない場合もあります。
・ 起床時にむくみがひどい
・ 食事の量が減ったのに体重が増える
・ 乾燥肌
・ 汗をかきにくい
・ 冷え性になった
・ 便秘がち
・ 脈が速くなる
・ イライラする
・ だるい
・ 落ち込む
・ 肩こりがひどい
・ 月経不順
・ ぼーっとする
・ 眠気が強い
「むくみ」と「体重増加」にあてはまる人は検査を
これらの症状から、うつ病などの精神疾患、更年期障害、加齢が原因などと間違われる場合もあります。
特に、上記の症状で「むくみ」と「体重増加」にあてはまる人は、一度検査を受けてみるのも手です。
橋本病は、血液検査で甲状腺ホルモンの数値を調べれば一目瞭然。
甲状腺ホルモンが足りない場合は、薬でホルモンを補充します。
甲状腺ホルモンの低下がそれほど著しくない場合は、経過観察の場合もあります。
薬で治療しながら妊娠・出産も可能
また、甲状腺ホルモンは、新陳代謝のほか、胎児・子どもの成長に関わっています。
甲状腺機能が低下したまま妊娠すると、流産・早産のリスクが高くなることが報告されています。
妊娠を望む女性は、妊娠前に甲状腺ホルモンを補充し正常値にしておくことが大切。
妊娠していたとしても、ホルモン薬はお腹の赤ちゃんに影響のないものがあります。
薬は胎児に悪いのでは…と治療を先延ばしにせず、病院を受診しましょう。
甲状腺機能が低下している場合は激しい運動やヨウ素に注意
また、橋本病で甲状腺機能が低下している場合は、激しい運動をすると筋肉痛が続くことがあるので、甲状腺ホルモンの値が正常になるまでは避けた方がよいでしょう。
食事では、ヨウ素を多く含む昆布などを大量に続けて摂取すると甲状腺機能に影響するので注意しましょう。
ただし、橋本病と診断されても、甲状腺ホルモンの値が正常な場合や、薬でホルモン値が正常に保たれている場合は、制限なく日常生活を送ることができます。
執筆/監修:株式会社からだにいいこと