天気が人間の体や心に与える様々な影響を考察する気象医学とその活用法について研究者が解説。

天気が原因の不調を医学的に研究する

曇りの日はなんだか気分が憂鬱、雨が降ると傷あとが痛む、なんて感じることはありませんか?

気象医学を専門に研究するNPO法人・バイオクリマ研究会の平沼茂さんは、こうした症状は気のせいでなく「気象医学」で科学的に証明されている“気象病”の一種と言います。

このように、天気が人間の体や心に与える様々な影響を考察する「気象医学」が、今注目を浴びているんです。

気象医学の歴史をひもとくと、パリで初めて世界的な学会が開かれたのは約60年前のこと。

特にドイツでは天気と持病の統計学的な研究が以前から盛んに行われており、テレビや新聞の天気予報では気圧予報も合わせて伝えるのが一般的。

気圧の変化に基づいた『ぜんそく予報』『うつ予報』『関節炎予報』などのユニークな情報も、毎日当たり前のように報じられています。

日本では広島県医師会が、天気予報と連動した「心筋梗塞・脳卒中予報」を実験的にネットで提供し、画期的な試みと話題になりました。

犯罪の起こりやすさに気圧の変化が関係していた?

「気象医学」が今注目されている理由の一つは、人々を取り巻く環境の変化です。

たとえば外は猛烈な暑さなのに、屋内は寒いほどエアコンが効いていたり。私たちは昔よりずっと、過酷な気温差の中での生活を強いられています。

そして「気温の変化」が体に与える影響は、時に命にも関わるほど。

脳卒中が冬に多発するのは、急激な寒さにより血圧が過度に上昇するからです。

また脳血栓が春と秋に多いのは、気温の日内格差が大きいから。短時間の気温変化で、血液ドロドロになりやすいとされています。

一方「気圧の変化」は、精神と深い関係があることがわかってきました。

気圧の急激な変化によるフェーン現象が起こりやすい地域は、自殺や犯罪、事故が多いというレポートも。

腰痛・頭痛などの痛みにも気圧が関係しています。

気圧の変化に体が順応しようと、自立神経を刺激するからです。

名古屋大学で行った実験では、気圧の変化でマウスが強く痛みを感じるという結果が。

気圧の高低にかかわらず、気圧が変わるときに痛みを感じることがわかっています。

アプリやサイトで“健康天気予報”をチェック

この気象医学を応用した、様々なサービスも始まっています。

気象予報士が開発したスマホのアプリ「頭痛ーる」は、気圧予報と連動して頭痛が起こる可能性を予測してくれるシステム。

関節痛や肌乾燥などの注意報を知らせるサイト「バイオウェザーサービス」も登場しています。

街ぐるみで気象病を防ぐ「センサーシティ」構想も進行中。街中や職場、自宅にセンサーを設置し、温度、湿度、気圧をデータ化します。

これと個人の体調・体質を結びつけ、天気の変化による病気を防ぐのです。猛暑で有名な埼玉県熊谷市のモデル事業では、熱中症予防で効果が見られました。

快適で健康な未来都市が、近く実現するかもしれません。

執筆:月刊『からだにいいこと』編集 -株式会社からだにいいこと