メモの取り方で人生が変わるって本当?「ロジカルメモ 想像以上の結果をだし、未来を変えるメモの取り方」

2021/6/2 11:00 吉村智樹 吉村智樹




あなたは「メモ」を取る習慣がありますか?


「買い物へ出かける前には品物をメモするかな~」
「上司からのことづけを忘れないようにメモします」
「ブログのヒントが思いついたときに書き留めるよ」


多かれ少なかれ、誰しも暮らしのなかでメモを取るタイミングがあるでしょう。


けれども「メモの取り方を変えると、自分の未来が変わる」なんて深いところまで考えてはいないのでは。かくいう僕も、そうでした。この本を読むまでは……。「今日までメモをぞんざいに扱ってしまっていたな」と後悔するばかりです。


おススメの新刊を紹介する、この連載。
第52冊目は「ロジカルメモ 想像以上の結果をだし、未来を変えるメモの取り方」です。


■「メモの取り方を変えれば未来が変わる」って本当?


仕事柄、メモはよく取ります。「○○社へ請求書を発送」「○○さんにアポ」「○月○日 宿泊手配」などなど。簡単な用件はスマホにメモしてクラウドへ送りますね。原稿の構成などもう少し込みいったフローチャートが必要な際は、手のひらよりも大きなノートメモにボールペンで手書きする。そんなふうに使い分けています。


とはいえ、メモはメモ。用件が終わればくしゃくしゃ、ポイ! あくまで備忘録。さほど重要視していませんでした。一冊の本に出会うまでは


ライター・編集者の村本篤信(むらもと あつのぶ)さんが上梓した新刊「ロジカルメモ 想像以上の結果をだし、未来を変えるメモの取り方」(アスコム)は、メモの取り方を根本から覆す破壊力に溢れた一冊。そもそも「メモに向き合うスケジュールを日課に採り入れる」なんて、発想すらありませんでした。





著者の村本篤信さんは、これまで「3000円投資生活」シリーズ「今日が人生最後の日だと思って生きなさい」「疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい」「NOを言える人になる」など数々のベストセラーを世に送りだしてきた超人気ブックライター。手掛けた書籍の累計は、な・な・なんと250万部以上! ひえ~!


ブックライター……著者の原稿を読みやすく整理改稿したり、著者として表示される人物に代わって書籍をライティングしたりする文筆家。


読者の投資へのハードルを下げるキラーワード「3000円投資」や、書籍のタイトルですでに読者の背中を押す強さがにじみ出た「今日が人生最後の日だと思って生きなさい」など名フレーズは、著者のメッセージをひとことで表す、言わば発明。この短いながら強いパワーをいだく言葉は、村本さんがメモと向き合う行為によって生みだしたものなのだそう。大ヒット商品がメモのなかから誕生したわけです。メモ、すごい!





■「考えるって大事」。ドラァグクイーンが解く「ロジカルシンキング」


そして村本さんにはもう一つ、ドラァグクイーンという別の顔があります。ドラァグクイーンのトリオユニット「八方不美人」のメンバー「エスムラルダ」は、実は村本さんなのです。



▲ドラァグクイーンのトリオユニット「八方不美人」。中央のメンバーが「エスムラルダ」ことライターの村本篤信さん


大学時代まで自分のセクシャリティを公表できず、悩み苦しんできた村本さん。「社会学」という観点でロジカルに考えたおかげでカムアウトができたと言います。自分自身を解放する力をいだく「ロジカルシンキング」(物事を体系的に整理して筋道を立て、矛盾なく考える思考法のこと)。これがメモに応用されているのですから、説得力が尋常ではありません。





■メモは「忘れないため」ではなく「考える」ためにある


先ほど「メモは備忘録のつもりだった」と書きました。しかしベストセラーを生み続ける村本さんにとってメモは忘れないようにするためではなく、考えはじめるためのものなのだと。


村本さんは著者取材や打ち合わせ、会議が終わったあと、必ずメモをもとに考察してゆく時間を設けます(そんなスケジュール、つくったことなかったですよ)。


取材の際には「左ページのみ」を使用し、メモ取り。右はメモをもとに考えを深めるページ。そうして「左ページに記したメモを、右ページで自分の言葉にして書き直す」作業を行います。村本さんはこの行いを「自分ごとにする」と呼んでいるのです。


メモに残したことがらを自分の言葉に書き換え、「自分ごと」の視点を持てば、「理解しているようで実はできていない」「調べなくてはわからない」「離れていうるようで、実はつながっている」点などが明確になってゆくわけです。「他人ごと」のままでは、頭には入ってきても、ハートにまで入ってこないんですよね


空けておいた右ページはさらに2分割。自分の言葉に直した記述をいっそう細かく分析します。そうやってメモの見開きで考察を深化してゆく仕組み。この作業は、できれば取材の直後、遅くとも当日内に。もっと早ければ取材や会議の途中にでも。とにかくフレッシュなうちに、忘れないうちに


「そんなの、忙しくてできない」と思うかもしれません。逆なんですよ。忙しいからこそ、時間が取れるのは取材や打ち合わせなどの直後なんです。直後には意外と時間がある。村本さん曰く「すき間の3分でもいい」と。このようにメモを見直すと、生活のすき間時間、ひては無駄な部分も見えてくるって寸法です。





■付箋は「思考のコンパス」。どこに貼るかで仕事の進路がわかる


ここで多用されるのが「付箋」。重要なキーワードを付箋に書き、考察を深めるたびに貼り位置を変えてゆきます。この付箋を村本さんは「思考のコンパス」と呼びます。つまり付箋がコンパスとなり、付箋の位置が、この仕事の方位を表している


なるほど! 単なるメモが、まるで大海原の海図のように思えてきますよね。


■後まわしにすると、人は考えるのをやめてしまう


村本さんは強い論調で「後でゆっくり考えるで、いいアイデアは生まれない」と語っています。「とりあえずメモしておいて、明日じっくり考える」なんて、悲しいかなやらないんですよね、人は


この部分、痛いほどわかります。僕は先日、ディレクターとふたりで伝統工芸の工房を訪れました。僕は「ロケの構成は後から考えよう」と、とりあえず職人さんが言う言葉をずっとメモしていたんです。すると取材直後、ディレクターは僕にこう言いました。「お母さんをもっと前に押し出した構成にしたい。なにかアイデアありますか?」


アイデア……正直、考えていなかった、なにも。メモをもとに、家に帰ってから構成を組み立てようと思っていたんです。ふいに「なにかアイデアありますか?」と言われ、僕は二の句が継げられず、適当な返事でごまかしました。仕事の手を抜くつもりはないけれど、気は抜けていたんでしょうね。


メモは忘れないために取るのではない。考察をスタートさせる、言わばスターターピストル。用件を後まわしにするためじゃないんですね。いま考えないのに、明日の自分が考えるはずがない。未来を変えるロジカルメモには、あとまわしにしがちな習慣を断つ効果があります。





■思うだけじゃダメ。「考える」ことで未来はつかめる


この「ロジカルメモ 想像以上の結果をだし、未来を変えるメモの取り方」は、「思う」と「考える」の違いを繰り返し説明しています


●「思う」というのは、ふと頭の中に浮かぶことであり、「思いつき」とは、それをそのままアウトプットしたもの

●「考える」というのは、思ったことを掘り下げ、検証することであり、「アイデア」とは「思いつき」に「新しい価値」を加えたもの


「思う」だけではビジネスもクリエイティブもない「考える」に至って、初めて人の心を掴む力が言葉に宿る。八方不美人の新曲「その日を摘め」を聴きながら、僕も未来を掴みたいと思います。





*今回の原稿は、いったんパソコンの「メモ帳」(テキストドキュメント)に書いてみました。
「フォント24」など普段のテキストファイルでは躊躇しがちな遊びもできて、新しい発想がしたいときにいいかも、です。




ロジカルメモ
想像以上の結果をだし、未来を変えるメモの取り方
村本篤信 著
価格:1650円(税込み)
アスコム

「ただのメモ」は生産性が超低い。
このメモ術で仕事と人生を切り開け!
3STEPで突き抜ける!
思考力、問題解決力、意思決定力、判断力、 インプット・アウトプット力を上げる最強の方法!
累計250万部突破!
凄腕ライターが生み出した秘密のメモ術!
https://www.ascom-inc.jp/books/detail/978-4-7762-1109-9.html



吉村智樹