アカデミー賞当日に欠席!?『ファーザー』で主演男優賞の最年長記録を更新したアンソニー・ホプキンスは、少し運が良かっただけ?

2021/5/12 22:00 龍女 龍女

アメリカロサンゼルスで開催された第93回アカデミー賞授賞式。
例年は2月最終週の日曜日に行われる。
コロナウィルス蔓延の影響で、2ヶ月後の4月25日に延期された。
授賞式の会場は換気が効くユニオン駅構内の特設会場に候補者を集めて、他の人たちは例年行われるドルビーシアターと振り分けられた。
また、アメリカ以外に在住する候補者は、パリ・ロンドンの特設会場に待機、初の3元中継となった。

注目される俳優部門の発表は、助演女優賞が先である。
『ミナリ』で破天荒な祖母を演じた韓国のベテラン俳優ユン・ヨジョン(1947年6月19日生)が初めてのノミネートで初受賞した。

助演女優賞の候補の中には、ユン・ヨジョンと同い年の名優グレン・クローズ(1947年3月19日生)がいた。
グレン・クローズは『ヒルビリー・エレジー』でオスカーの8回目の候補になった。
アメリカ演劇界の最高峰トニー賞と、TV界最高峰のエミー賞の受賞歴はそれぞれ3回ある。
映画最高峰のアカデミー賞の受賞歴はない。

ユン・ヨジョンは、それを踏まえて、素晴らしい受賞スピーチをした。


「私はあまり競争を信じません。一体どうしてグレンに勝てるなんて。あのグレン・クローズですよ。彼女の演技を沢山観てきました。全ての作品の中からたった5つの候補者で、しかも違う映画で違う世界を描いています。だから互いに競争なんて出来ません。今夜は私がここにいるのは、ほんの少し運が良かっただけ、あなた方よりね

異例の授賞式は、なおも続く。
例年の順番は主演女優賞→主演男優賞→監督賞→作品賞となるところ、監督賞→作品賞→主演女優賞→主演男優賞で終わる構成となった。

チャドウィック・ボースマンが43歳の若さで大腸がんのために亡くなった。
遺作『マ・レイニーのブラックボトム』で主演男優賞候補になった。
追悼コーナーのプレゼンターは、主演した大ヒット作『ブラックパンサー』(2018)で母役を演じたアンジェラ・バセットだ。
チャドウィック・ボースマンが生まれた1976年の名盤スティーヴィー・ワンダー『キー・オブ・ライフ』に収録曲As(邦題・永遠の誓い)をBGMに、昨年亡くなった世界中の映画人が紹介された。

最後のチャドウィック・ボースマンの前が、初代007のショーン・コネリーであった。

流れは、主演男優賞はチャドウィック・ボースマンに行っていると思われた。
しかし、プレゼンターの昨年の主演男優賞を取ったホワキン・フェニックスの口から出た名前は、違った。
他の特設会場にもいない主演男優賞候補者の名前だった。



アンソニー・ホプキンスである。
授賞式の中継はその直後、あっけなく終わった。

筆者の自宅は、WOWOWに加入しているので、生中継を観ていた。
毎年、日本の司会をしているいつもはうるさいくらいのジョン・カビラが、あ然としてしばらく喋らない場面も目撃することになった。

アンソニー・ホプキンスは、主演男優賞の受賞者として、最年長記録83歳で更新した。

さて、アンソニー・ホプキンスは前回取り上げた鈴木亮平が実践しているデ・ニーロ・アプローチ否定論者としても有名である。
彼の俳優人生に触れながら、何故オスカー主演男優賞の最年長記録を更新できたか、探っていこう。

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