欲望による悲劇と知恵による希望。『失われたアートの謎を解く』と、レオナルド・ダ・ヴィンチ「夢の実現」展

2019/12/18 21:00 KIN KIN



今年の秋に発売された本『失われたアートの謎を解く』、読み物として面白く、アートを気軽に楽しむことの出来るオススメの本です。既に冬も訪れ、私は芸術の秋も読書の秋も楽しめませんでしたが、この本で今その両方を堪能しています!この本を監修したのがいまトピアート部の青い日記帳 Takさん


失われたアートの謎を解く (ちくま新書)
青い日記帳 監修


この本は、盗難や戦争など人類の欲望によって失われた芸術品たちの悲劇、失われたものを復元させようとする人類の知恵などのエピソードを集めたもの。



ミステリー小説の様な盗難ルート解説、戦争の裏での人間の欲深さ、未来を感じさせる復元技術の面白さなどアートの知識がなくても読みものとして楽しいものになっています。また、美しい図版はアートファンも満足するものになっています。

いまトピでも以前、いまトピアート部の明菜さんがこの本についてのまとめ記事を書いています。こちらも併せてお読みください。


【モナリザ盗難!】『失われたアートの謎を解く』で分かる美術品をめぐる衝撃事件


この本の中で池上英洋先生「サモトラケのニケ」について特別寄稿しているページがあります。


Wikipedia「サモトラケのニケ」より

現 東京造形大学教授であり、イタリアを中心とする西洋美術史を専門とする池上先生のページは見どころの一つになっています。



本には書いてありませんが、勝利の女神の翼をモチーフにロゴマークにしたのがシューズメーカーのNIKEと言うのは有名な話ですね。


Wikipedia「サモトラケのニケ」より

池上先生の文章で始めて知りましたが、ルーブル美術館に展示されているこのギリシア神話の女神の像の右翼は発見されておらず、現在の右翼は左翼を反転して復元したものだそうです。


Wikipedia「サモトラケのニケ」より

実際に観に行くことがあればじっくりと見てみたいですね。失われている顔や腕を推定復元したCG画像も本には載っていました。


最近でも11月に「戦後最大の美術品盗難」と話題になった宝飾品の盗難がドイツでありました。10月末には復元物ではありますが首里城の火事などもありましたね。イタリアでは盗難されたクリムトの絵画が23年ぶりに発見されたという話題もありました。アートの損失、発見、復元など現在も進行中の話題なのです。



以前、この本の監修者 青い日記帳 Takさんと池上英洋先生の出版記念トークを聞いてきましたが、このときも本に載っていない様々な「失われたアート」や復元の話しが出ていました。まだまだ世の中にはたくさんの失われたアートがあり、また、人類が知恵を絞って復元や修復に取り組んでいるものもあります。


Wikipedia「最後の晩餐 (レオナルド)」より


そして、進行中の話題と言えばその池上英洋先生が参加している東京造形大学主催の展覧会「夢の実現」展

東京造形大学が手がけているこの展覧会、、レオナルド・ダ・ヴィンチの作品をヴァーチャル復元する作業に挑戦したもの。「レオナルドがかつて抱いた夢の一部を、500年後の今、実現させる」プロジェクトとのことです。



・下絵しかない作品への着色
・痛んだ作品を完全な状態で見せる
・制作を諦めた計画の実現

などなどダ・ヴィンチの絵画や彫刻、建築など実現したもの/しないものを現代の技術で再現するという試み。これは楽しみです。

「夢の実現」展 - ダ・ヴィンチ没後500年記念
http://leonardo500.jp/
代官山ヒルサイドフォーラム(代官山ヒルサイドテラスF棟内)
2020年1月5日-2020年1月26日
11:00〜20:30(入館は20:00まで)
※1月5日(日)は12:00開館、1月8日(水)は15:00閉館となります。
主催 学校法人桑沢学園 東京造形大学
観覧料 無料