【1万人突破】記録と記憶に残るソフィ・カルの展示を君は見たか?

2019/3/2 09:00 明菜 明菜

【現代アート】

これほど好き嫌いがハッキリと分かれるキーワードがあるのでしょうか?
「現代アートっぽい!」と言われたときは、大抵褒め言葉ではありません。

そんな微妙な立ち位置のジャンルですが、1万人が展覧会に訪れる記録が出ました!


ソフィ カル 近影 Photo:Jean-Baptiste Mondino

フランス人アーティストのソフィ・カル
原美術館で開催中の個展「『ソフィ カル ─ 限局性激痛』原美術館コレクションより」の入場者数が1万人を突破したそうです!
2020年に閉館してしまうことでも話題を集めている原美術館ですが、展覧会もさすがレベル高い!
開催中の展覧会なので、今は1万人より伸びているはず。

「限局性激痛」とは、体の狭い場所が強く痛むことを指す医学用語。
ソフィ・カルは失恋の痛みを「限局性激痛」に重ねました。


Sophie Calle
Exquisite Pain, 1984-2003
© Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018


展覧会は2部構成。
第1部は、彼氏から別れを告げられる日までの写真や手紙などを並べた展示で、もはや自傷行為。

それぞれの展示物に「最悪の日まであと○○日」と赤いスタンプが押されていて、地球が爆発でもするんじゃないかと思うほど嫌な予感を植え付けます。
マゾヒスティックな内容に思えるかもしれないけど、それはそれとして。


「ソフィカル限局性激痛」1999-2000年原美術館での展示風景
© Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018


第2部は、ソフィが失恋話を誰かに話し、代わりに相手にも不幸な経験を話してもらいます。
その内容が写真と刺繍による文章で語られる展示です。

不幸な話の交換によって心の傷を癒す、生々しいもの。
写真とテキストが意味を補完し合うだけでなく、想像の枠を広げてくれます。


「ソフィカル限局性激痛」原美術館コレクションより展示風景
©Sophie Calle / ADAGP Paris and JASPAR Tokyo, 2018
Photo by Keizo Kioku


「失恋」という誰もが経験したことのある傷を、思い切ってアートにしたソフィ・カル。
あえて「他人の失恋」を追体験しに展覧会へ出向く私たちの所在なさが、人気の秘密なのかもしれません。


さて、ソフィ・カルの個展は、都内3ヶ所のトライアングルで同時開催されています!
品川の原美術館の他、銀座と六本木です。

まずは銀座のギャラリー小柳
写真にフェルトをかぶせ、見る人がフェルトを持ち上げることで写真が現れる作品。


ギャラリー小柳「ソフィ・カル なぜなら」展示風景

フェルトの表面の文章を読んでから、写真を見る流れになっています。
「なぜなら」で始まる文章で、極限まで意味を膨らませてから、答え合わせ的に写真を見る。

…想像は必ず裏切られます!


展覧会名 :ソフィ・カル なぜなら

会期:2019年2月2日(土)〜3月16日(土)

休館日:日曜日、月曜日、祝祭日

開館時間:11:00〜19:00

会場:ギャラリー小柳(東京・銀座)

入館料:無料

公式HP:http://www.gallerykoyanagi.com


続いて、六本木のペロタン東京
ソフィの母、猫、父と亡くなった人への思いを写真と文章に託した展示です。

死に向かって行く家族と、ソフィ、さらにソフィの友人など、様々な思いが交錯しています。
これは慰めになるのか、ならないのか?


ペロタン東京「ソフィ・カル 私の母、私の猫、私の父、この順に」展示風景

展覧会名 :ソフィ・カル 私の母、私の猫、私の父、この順に

会期:2019年2月2日(土)〜3月10日(日)

休館日:日曜日、月曜日、祝祭日

開館時間:11:00〜19:00

会場:ペロタン東京(東京・六本木)

入館料:無料

公式HP:https://www.perrotin.com


冒頭でも触れたとおり、原美術館といえば2020年に閉館することでも話題になっています。
今回の展示の来場者が1万人を突破したのも、原美術館が長い時間をかけて「良い展覧会をやる美術館」と認知されるようになったからでは?
と考えると、閉館が一層寂しくなります。

完全に無くなるわけではなく、2021年以降は群馬の「ハラ ミュージアム アーク」が拠点になるとのこと。
こちらは「原美術館ARC」と改称されるらしい。

品川と群馬の伊香保を比べたら、残念ながらアクセス難易度は雲泥の差。
群馬に移ってからも通いたいけど、品川の原美術館が開いている2020年まで、何度でもリピートしなきゃ!

展覧会名 :「ソフィカル―限局性激痛」原美術館コレクションより

会期:2019年1月5日(土)〜3月28日(木)

休館日:月曜日

開館時間:11:00〜17:00(水曜は20:00 まで/入館は閉館時刻の30分前まで)

会場:原美術館(東京・品川)

入館料:一般1,100円、大高生700円、小中生500円/原美術館メンバーは無料、学期中の土曜日は小中高生の入館無料/20名以上の団体は1人100円引

公式HP:https://www.haramuseum.or.jp