不謹慎とのせめぎあい…ヒロシマ・ナガサキの被爆建造物「ファンシー絵みやげ」（3/3）

2018/8/10 12:00

■ さらなるファンシー原爆ドーム

このように、原爆投下にまつわる商品において、広島と長崎では違いが出ており、広島ではファンシー絵みやげに被爆建造物が描かれているのです。しかし戦争の悲惨さとファンシー絵みやげの世界観とを結びつけるのは簡単ではありません。その苦労の痕跡をさらに見ていきましょう。

↑うちわ型で、ビックリマン的な角プリズムのキーホルダー。

花かごを持った花農家夫婦（？）が原爆ドームの前にいます。「TSUITE KITANO TORISAN（ついてきたの鳥さん）」と、もはや鳩ですらない単なる鳥で、「鳩っぽいものが描かれているから」という理由で、「ありもの」の花農家夫婦のイラストを組み合わせたのではないでしょうか。

樹脂コーティングの中に、金色の原爆ドームの半立体パーツを閉じ込めています。半立体のパーツがゆえに被爆後の雰囲気が出てはいるのですが、その上に丸く囲っており、完全にカップルの世界とは別の次元のようになっています。これは世界観を結びつけるのを放棄した例です。

こちらは「もう2度と起こしません！」と強いメッセージが書かれています。そして再び登場「LOVE&PEACE」。原爆ドームは背景ではなく主役級の扱いです。この商品の特異な部分は、イラストの祈っている少女の言葉が持ち主の意志表明となる部分でしょう。

ファンシー絵みやげにおいて歴史上の人物の名言や民謡の歌詞が書かれることは多いですが、ここまでメッセージ性のあるものはありません。これを選んで買い、身につけるということは、すなわち持ち主が共感し、そして意志として表明しているという意味合いを持つのです。

■ 最後に

このように広島の観光地で売られていたファンシー絵みやげには「世界平和は我らの願い！」「LOVE&PEACE」「平和が一番！」「PEACEFUL TOWN」など「平和」にまつわる言葉がたくさん出てきます。被爆地として、平和学習の修学旅行生をターゲットとした商品にも平和への思いが横溢していることがよく分かりました。

では最後にこちらをご覧ください。

やっぱり平和が一番 DA.YO.NE.!!

では、また次回。

（文と写真：山下メロ“院長”）

■ 保護のお願い

私は全国の観光地で保護活動を行っていますが、現地から消滅したファンシー絵みやげについては、皆様の家に残されたものが頼りです。もしご実家などの学習机の引き出しの中に眠っているものなどが見つかりましたら、是非ともご一報ください。ハッシュタグ #ファンシー絵みやげでの報告も待ってます。

《展示会参加のお知らせ》

鞆の津ミュージアム企画展『⽂体の練習』

会期：2018 年6 ⽉30 ⽇(⼟) 〜 9 ⽉2 ⽇(⽇)
休館：⽉・⽕（祝祭⽇は開館）/ ⼊場無料
会場：鞆の津ミュージアム（福⼭市鞆町鞆271-1/TEL：084-970-5380）
鞆の津ミュージアム Webサイト

※ 8月25日の閉館後に山下メロによる講義があります。
8月25日山下メロ特別講義

《番組出演のお知らせ》
ライムスター宇多丸さんのラジオTBSラジオ「アフター6ジャンクション」に生出演いたしました。

放送はTBSラジオWebサイトの記事、もしくはラジオクラウドのアプリにて無料で聴くことができます。TBSラジオの中から「アフター6ジャンクション」を探してください。

TBSラジオの記事

ラジオクラウド

《番組出演のお知らせ》
ラジオ関西『金原みわの珍人類白書』にファンシー絵みやげ研究家として出演しました。
放送はラジオクラウドのアプリにて無料で聴くことができます。ラジオ関西の中から「金原みわの珍人類白書」を探してください

ラジオクラウド

《記事掲載のお知らせ》
都築響一さんのメールマガジン「ROADSIDERS' weekly」に、私の記事が掲載されています。

ROADSIDERS' weekly 2018年03月14日配信号帰ってきたファンシー絵みやげ（写真・文：イチゴドロボウ）

《書籍発売のお知らせ》
ファンシー絵みやげ初のガイドブック『ファンシー絵みやげ大百科忘れられたバブル時代の観光地みやげ』（山下メロ・著／イースト・プレス刊）を全国の書店で発売しています。