実は〇〇〇だった!? 【幽霊画の意外なひみつ】

2018/7/20 21:30 虹
毎日暑すぎて、もう充分ですっていうほどに夏ですね。



夏になると展示の機会が増える「幽霊画」

ゾっとするものから、ユーモアに満ちたものまでさまざまですが、実は「幽霊画」には意外なひみつがあったのをご存知でしょうか?
※怖いのが苦手な方もいらっしゃると思いますので、比較的かわいい幽霊・妖怪画をイメージとして紹介します♡



▮幽霊画は〇〇〇だった!

今でこそ「絵の中の幽霊が動いた!」など、ホラー要員として駆り出されることの多い幽霊画。しかし幽霊画が盛んに描かれた江戸時代では、なんと「縁起物」として重宝されていたのです!


▲歌川国芳《四代目市川小団次の於岩ぼうこん》(太田記念美術館蔵)


幽霊画が縁起物!? かなり意外ですよね。
当時、幽霊画は珍しいものだったため、店に飾るとそれを目当てにたくさんのお客さんがやってきたのだそう。
おかげで商売繁盛、夜になれば「泥棒避け」にもなってくれるという、とってもありがたい存在だったのです。

真夜中に忍び込んだ盗賊も、振り返った先で幽霊がこっちを睨んでいたら思わず飛び上がってしまいますよね!
より強力なセキュリティにするため「できるだけ恐ろしく描いてくれ!」と注文する人もいたようです。


▲こちらは葛飾北斎の百物語より《お岩さん》(東京国立博物館蔵)。ユーモアがあるけれど、国芳のお岩さんに比べるとインパクトの強いキャラクターになっています。


そんな良いこと尽くしの幽霊画。
注文する人がどんどん増えて価値が高騰し、ついにはお金持ちしか注文できなくなってしまいました。
幽霊画を持っていることは、当時一種のステータスとなっていたのです。



▮「足のない幽霊」の祖は円山応挙!?

人気があったのが円山応挙の幽霊画です。

応挙というと可愛い犬の絵や、国宝《雪松図》が有名なので意外に思われるかもしれませんが、「幽霊=足がない」というイメージを広めたのは応挙だという説があるほど、幽霊画と密接な関わりがあります。


▲伝・円山応挙《幽霊図》(福岡市博物館蔵)

厳密に言うと応挙以前から、他の作家が足の無い幽霊を描いています。
しかし「これは誰々の幽霊です」という表記なしの、いわば匿名の幽霊を描いたのは応挙が初めて
ネームバリューも手伝ってか、「足のない幽霊をはじめに描いた人=円山応挙」という認識は広まっていったのでした。

▲月岡芳年『芳年略画』のうち《応挙の幽霊》。驚いている人は応挙でしょうか?


ちなみに応挙の幽霊画に真筆はありません。

研究により、ほぼ応挙だろうと考えられる作品はありますが、いずれも表記は「伝・円山応挙」となっています。
ゆえに「“応挙の幽霊画”という存在自体が幽霊のようなもの」と言われることもあります(笑)


▮なぜ幽霊には足がない?

では、「足を描かなければ、その人物は幽霊である」という符合はどこからきたのでしょう?
諸説ありますが、有力なもののひとつに中国の故事「反魂香(はんごんこう)」の存在があります。


▲鳥山石燕『今昔百鬼拾遺』より《返魂香》


反魂香とは伝説上のお香のことで、焚けばその煙の中から死者が姿を現わすというもの。
幽霊の下半身が煙に覆われている描写が転じて、幽霊には足がないというイメージが生まれたのではないかと言われています。

反魂香のお話しはとても人気があり、落語の演目にもなっています。(アニメ「昭和元禄落語心中」でも、石田彰さん扮する有楽亭八雲による見事な反魂香がありましたね!)



▮幽霊画を観に行こう!

幽霊画の迫力は、実際にその目で見てこそ確認できます!

この夏イチオシの幽霊画展は、福岡市博物館の「福岡市博物館所蔵 幽霊・妖怪画の世界展」
何を隠そう福岡市博物館には国内屈指の幽霊・妖怪画のコレクションがあります。
怖い絵は苦手という方もご心配なく! 思わず笑ってしまうような、愛らしい作品をあわせて揃えているのも同館の特徴です。




福岡市博物館所蔵
「幽霊・妖怪画の世界」展

●会 期:~2018年8月26日(日)
●会 場:福岡市博物館
●休館日:毎週月曜日
※ただし7月16日・8月13日は開館、7月17日・8月16日は休館
●時 間:9:30~17:30
※金・土・日曜日、および8月13・14・15日は20時まで
※いずれも入館は閉館の30分前まで

→福岡市博物館ホームページ




「福岡は遠い……」という方にオススメなのが、谷中にある全生庵の幽霊画展です。
こちらでは落語家・三遊亭円朝の幽霊画コレクションを、8月の一カ月を通じて展示します。
お寺の展示と侮ってはいけません。部屋いっぱいにずらりと並ぶ幽霊画は圧巻の一言。円朝の命日である8月11日(円朝忌)には落語家による盛大な供養も行われます。




全生庵 8月の幽霊画展

●会 期:2018年8月1日(水)~8月31日(金)
●会 場:東京都台東区谷中5-4-7 全生庵
●休館日:会期中無休
●時 間:10:00~17:00
※入館は閉館の30分前まで

→全生庵ホームページ




幽霊画ではないけれど、恐ろしさとユーモアを兼ねそなえた絵と言えば「地獄絵」

鎌倉・長谷寺では、寺宝として伝わる《十王図》をはじめ、地獄・極楽を題材とした絵画や彫刻を展覧します。地獄の世界を「覗き」ながら、その恐怖を「除く」という観音菩薩の霊験が味わえるのは、まさにお寺ならではの体験と言えるでしょう。




夏季企画展
「観音さまと地獄のぞき」

●会 期:~2018年9月24日(月・祝)
●会 場:神奈川県鎌倉市長谷 3-11-2 長谷寺
●休館日:会期中無休
※ただし展示替え・設備点検等の臨時休館有
●時 間:9:00~16:30
※入館は閉館の30分前まで

→長谷寺ホームページ





▮7月26日は幽霊の日

1825(文政8)年、江戸の中村座で「東海道四谷怪談」が初演されたことから、7月26日は「幽霊の日」となっています。
約200年を経た現代でも四谷怪談が変わらず語られ続けているのは、怖いと言いつつも人々が「幽霊」という存在に惹きつけられているからなのでしょう。

怖いけれどちょっと気になる「幽霊画」。
幽霊が実在するかはさておき、魅力的な幽霊画を楽しむのは夏の醍醐味のひとつであること間違いなしです!



▲幽霊名画集―全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション (ちくま学芸文庫)  辻 惟雄(著)




▲肉筆幽霊画の世界(新人物往来社) 安村 敏信 (著)