漫画『ゴールデンカムイ』から入る! 楽しい民俗文化の世界
イランカラプテ! 『ゴールデンカムイ』、読んでますか?
ゴールデンカムイ 1 (ヤングジャンプコミックス)
『ゴールデンカムイ』とは、野田サトル先生による明治後期の北海道を舞台にした漫画。今春、第22回手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞したことでも話題となりました。
ひょんなことから莫大な埋蔵金にまつわる秘密を聞いた主人公・杉元佐一は、アイヌの少女・アシリパと共にそれを探す旅に出ます。しかし埋蔵金を探していたのは杉元たちだけではありませんでした。
敵と味方が入り混じる世界! 強大な自然や悪人を相手に、杉元は埋蔵金を手にすることができるのか!?
リスの脳みそは本当に美味いのか!?
谷垣はなぜそんなに可愛いのか!?
息もつかせぬ展開は(公式曰く)まさに「和風闇鍋ウエスタン」!
────というストーリーなんですが、これがほんっとうに面白い。
公式サイトで試し読みができるので、百聞は一見に如かず、まあ読んでみてください。ちょっとお試しのつもりが、気が付いたら最新巻まで読んでるはず。それくらい素晴らしい漫画です。
『ゴールデンカムイ』公式サイト→http://youngjump.jp/goldenkamuy/index.html
4月にアニメも始まりまして、こちらも好調。
本作の魅力はストーリーはもちろん、歴史、アクション、食事情など多岐にわたります。その中でひと際目を引くのが、何といってもアイヌ文化の描写です。
◆アイヌの文化は面白い!
主人公・杉元と行動を共にするアイヌの少女・アシリパは、幼いながらにヒグマは倒すわ罠はしかけるわ、料理も上手いわでサバイバル能力がめちゃくちゃ高い。
劇中では彼女をはじめ、さまざまな人々を通じて、アイヌ文化が語られていきます。
衣服や装飾品がかっこいい! 言葉の響きが神秘的……。チタタプしたい・オハウ食べたい!! などなど、本作からアイヌ文化に興味を持った方も多いのではないでしょうか?
「どこに行けばもっとアイヌ文化を知ることができるのだろう……?」
────そうなるとまず思い浮かぶのが博物館です。
北海道にはたくさんのアイヌ文化を伝える施設があり、真っ先に挙げられるのが「アイヌ民俗博物館」。さっそくホームページを検索してみると……
2018年3月31日で閉館!?!?
えっ、よりによって今……!? と思ったら、2020年に「国立アイヌ民族博物館」として生まれ変わるのだそうな。良かった……。
「ことば」、「世界」、「くらし」、「歴史」、「しごと」、「交流」という6つのテーマで展示を構成。アイヌの歴史や文化などを幅広く紹介し、新たなる未来へ向けてその継承と発展、および創造を支えるための拠点になるとのこと。
博物館のまわりには、体験交流ホールや体験学習館、工房などを備えた「国立民族共生公園」が併設されるそうです。
北緯42度、日本最北端の国立博物館。よし、2年後を楽しみに待ちましょう!
続いてこちらは「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」。
ここ、めちゃくちゃかっこ良くない……?
ホームページ内のフォトギャラリーからも展示の仕方が洗練されているのが伝わってきます。
重要有形民俗文化財「北海道二風谷及び周辺地域のアイヌ生活用具コレクション」をはじめ、民具やチセ群(=住居建築/重要文化的景観に選定)、豊富な視聴覚資料、関係図書等を所蔵。見るだけではなく、木彫りや刺繍の体験学習もできます。
周辺には関連施設も多く、かなり充実したエリア。公共交通機関でもアクセス可能です。
そして忘れちゃいけない「北海道博物館」(愛称:森のちゃれんが)。
「道立アイヌ民族文化研究センター」と「北海道開拓記念館」が母体となっているだけあって、展示内容は濃密かつアカデミックです。文化だけでなく、歴史的な観点から多文化共生社会についても詳しく言及。ホームページからは解説ボードも閲覧することができるので、予習もできてしまいます。
明治期のアイヌの人々についての展示もあり、まさに『ゴールデンカムイ』の時間軸にドンピシャな内容となっています。
他にも北海道最大級のアイヌ集落が擁する文化施設「阿寒湖 アイヌコタン」や、展示品を実際に手に取って鑑賞することができる「アイヌ文化交流センター(サッポロピリカコタン)」をはじめ、北海道にはさまざまなアイヌ文化を紹介する施設があります。
北海道に行きたい!
でも今すぐ行くのは難しい……。
────という方にオススメしたいのが以下の施設。
◆北海道以外でアイヌ文化を学べる施設
まずは我らが東京国立博物館。
本館16室では「琉球・アイヌ」の文化を紹介。先日は「アイヌの祈り」という企画展のなかで、「イオマンテ(熊送りの儀式)」についての展示を見ることができました。(※展示は入れ替えがあります)
刀剣乱舞効果で刀剣コーナーに行列ができるようになりましたが、16室ももっと流行れ……!
木の皮で作られた衣服、「アットゥシ」も間近で見ることができます。
お次は東京駅八重洲口からほど近くにある「アイヌ文化交流センター」。
あまり知られていないようですが、2017年1月に「ゴールデンカムイとアイヌ文化展」が開催されているゆかりの地。公益財団法人アイヌ民族文化財団が運営しています。
いや、ここ、ホントにすごいから! ここを知らないなんてもったいない! 工芸品展示に約4,000冊の蔵書、80本の映像資料が揃って利用無料! アイヌ語講座や専門家によるトークイベントも無料! とにかく盛りだくさんの情報が手に入るのです。(※資料閲覧は館内のみ。一部貸出可)
職員の方もとても親切なので、そして無料のサービスが充実しすぎていて申し訳ないくらいなので、ぜひ一度訪れてみてください。
関東にはこのほか、「国立歴史民俗博物館」(通称:れきはく)があります。
こちらは2013年のリニューアル時に、アイヌ関連の展示を初めて導入。アイヌ民族の継承と現在について考えます。 (アイヌ文化のほか、「マタギ」に関する展示もあるよ……!)
また、「早稲田大学會津八一記念博物館」や、「日本民藝館」でもアイヌの文化に触れることができますし、『ゴールデンカムイ』とのコラボレーション企画で話題となった「野外民族博物館 リトルワールド」でもコタン(村)やチセ(住居)が復元、展示されています。
★早稲田大学キャンパス内の博物館についてはyamasanによる記事が詳しいです→大学でアートを楽しもう!~無料で楽しめる大学ミュージアムガイド~
このあたりで「民俗文化って面白いな」と思いはじめたら、迷わず総本山へ向かうことをお勧めします。
大阪は万博記念公園に位置する「国立民族学博物館(通称:みんぱく)」。
こちらは世界最大級の博物館機能と、大学院教育の機能を備えた、文化人類学・民族学の研究所として、世界で唯一の施設となっています。
館内は日本のみならず世界の民族文化を紹介。2014年に国立新美術館にて開催された「イメージの力」展を覚えている方もいらっしゃるかと思いますが、本家はかなりカオスな雰囲気。ですが一度訪れると虜になる人が続出するという魅惑の場所です。
世界にはさまざまな民族文化が存在します。
そのうちのいくつかはすでに失われてしまったり、また、失われつつあります。
文化の保存や継承には”知ること”がとても大切ですが、悲しい歴史を持つものはそちらがクローズアップされ、「くらし」や「伝統」が陰に隠れてしまうことも(もちろん歴史は大切です)。
しかし「くらし」や「伝統」を知ることこそ文化の理解に通じますし、きっとそこには新鮮な発見がたくさんあるはずです。
アイヌの民族文化をきっかけに、いろいろな文化に触れてみるのも面白いかもしれませんよ!
ゴールデンカムイ 1 (ヤングジャンプコミックス)
『ゴールデンカムイ』とは、野田サトル先生による明治後期の北海道を舞台にした漫画。今春、第22回手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞したことでも話題となりました。
手塚治虫文化賞のパネル展@東京本社。ゴールデンカムイでマンガ大賞、野田サトルさんのかきおろしイラストです。 pic.twitter.com/nV6mPD7lka
— 朝日新聞社CSR推進部 (@asahi_csr) 2018年5月25日
ひょんなことから莫大な埋蔵金にまつわる秘密を聞いた主人公・杉元佐一は、アイヌの少女・アシリパと共にそれを探す旅に出ます。しかし埋蔵金を探していたのは杉元たちだけではありませんでした。
敵と味方が入り混じる世界! 強大な自然や悪人を相手に、杉元は埋蔵金を手にすることができるのか!?
リスの脳みそは本当に美味いのか!?
谷垣はなぜそんなに可愛いのか!?
息もつかせぬ展開は(公式曰く)まさに「和風闇鍋ウエスタン」!
────というストーリーなんですが、これがほんっとうに面白い。
公式サイトで試し読みができるので、百聞は一見に如かず、まあ読んでみてください。ちょっとお試しのつもりが、気が付いたら最新巻まで読んでるはず。それくらい素晴らしい漫画です。
『ゴールデンカムイ』公式サイト→http://youngjump.jp/goldenkamuy/index.html
4月にアニメも始まりまして、こちらも好調。
本作の魅力はストーリーはもちろん、歴史、アクション、食事情など多岐にわたります。その中でひと際目を引くのが、何といってもアイヌ文化の描写です。
今週は休載のため【ゴールデンカムイ舞台裏:イカヨ(プ)】
— ゴールデンカムイ(公式) (@kamuy_official) 2016年6月17日
アシ(リ)パさん愛用のイカヨ(プ)。
御用達の毒矢も安全に収納できる頑丈な作りの矢筒です。
タシロ(山刀)と同じく、原型は平取町立二風谷アイヌ文化博物館様にてご覧になれます。 pic.twitter.com/5AZLdIPwty
◆アイヌの文化は面白い!
主人公・杉元と行動を共にするアイヌの少女・アシリパは、幼いながらにヒグマは倒すわ罠はしかけるわ、料理も上手いわでサバイバル能力がめちゃくちゃ高い。
劇中では彼女をはじめ、さまざまな人々を通じて、アイヌ文化が語られていきます。
【今週のゴールデンカムイ舞台裏】
— ゴールデンカムイ(公式) (@kamuy_official) 2017年3月16日
「ヒグマの巣穴に入って獲るアイヌの狩猟法」は、砂沢クラ著『ク スクッ(プ) オルシペ 私の一代の話』と更科源蔵著『アイヌ 歴史と民俗』等に収録。
野田先生曰く「実際に可能かどうかは問題ではなく、そういう言い伝えがあるというのが面白い」とのこと。 pic.twitter.com/2Imwf8EjkQ
衣服や装飾品がかっこいい! 言葉の響きが神秘的……。チタタプしたい・オハウ食べたい!! などなど、本作からアイヌ文化に興味を持った方も多いのではないでしょうか?
「どこに行けばもっとアイヌ文化を知ることができるのだろう……?」
────そうなるとまず思い浮かぶのが博物館です。
北海道にはたくさんのアイヌ文化を伝える施設があり、真っ先に挙げられるのが「アイヌ民俗博物館」。さっそくホームページを検索してみると……
▲「アイヌ民族博物館」ホームページ
2018年3月31日で閉館!?!?
えっ、よりによって今……!? と思ったら、2020年に「国立アイヌ民族博物館」として生まれ変わるのだそうな。良かった……。
▲画像クリックで、文化庁HPへジャンプします。下へスクロールしていくと、「国立アイヌ民族博物館」のパンフレットを閲覧することができます。
「ことば」、「世界」、「くらし」、「歴史」、「しごと」、「交流」という6つのテーマで展示を構成。アイヌの歴史や文化などを幅広く紹介し、新たなる未来へ向けてその継承と発展、および創造を支えるための拠点になるとのこと。
博物館のまわりには、体験交流ホールや体験学習館、工房などを備えた「国立民族共生公園」が併設されるそうです。
北緯42度、日本最北端の国立博物館。よし、2年後を楽しみに待ちましょう!
続いてこちらは「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」。
▲「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」ホームページ
ここ、めちゃくちゃかっこ良くない……?
▲「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」ホームページ内 フォトギャラリーより
ホームページ内のフォトギャラリーからも展示の仕方が洗練されているのが伝わってきます。
重要有形民俗文化財「北海道二風谷及び周辺地域のアイヌ生活用具コレクション」をはじめ、民具やチセ群(=住居建築/重要文化的景観に選定)、豊富な視聴覚資料、関係図書等を所蔵。見るだけではなく、木彫りや刺繍の体験学習もできます。
周辺には関連施設も多く、かなり充実したエリア。公共交通機関でもアクセス可能です。
平取町立二風谷アイヌ文化博物館
北海道沙流郡平取町二風谷55
☎:01457-2-2892
http://www.town.biratori.hokkaido.jp/biratori/nibutani/
北海道沙流郡平取町二風谷55
☎:01457-2-2892
http://www.town.biratori.hokkaido.jp/biratori/nibutani/
そして忘れちゃいけない「北海道博物館」(愛称:森のちゃれんが)。
▲「北海道博物館」
「道立アイヌ民族文化研究センター」と「北海道開拓記念館」が母体となっているだけあって、展示内容は濃密かつアカデミックです。文化だけでなく、歴史的な観点から多文化共生社会についても詳しく言及。ホームページからは解説ボードも閲覧することができるので、予習もできてしまいます。
明治期のアイヌの人々についての展示もあり、まさに『ゴールデンカムイ』の時間軸にドンピシャな内容となっています。
他にも北海道最大級のアイヌ集落が擁する文化施設「阿寒湖 アイヌコタン」や、展示品を実際に手に取って鑑賞することができる「アイヌ文化交流センター(サッポロピリカコタン)」をはじめ、北海道にはさまざまなアイヌ文化を紹介する施設があります。
北海道に行きたい!
でも今すぐ行くのは難しい……。
────という方にオススメしたいのが以下の施設。
◆北海道以外でアイヌ文化を学べる施設
まずは我らが東京国立博物館。
本館16室では「琉球・アイヌ」の文化を紹介。先日は「アイヌの祈り」という企画展のなかで、「イオマンテ(熊送りの儀式)」についての展示を見ることができました。(※展示は入れ替えがあります)
刀剣乱舞効果で刀剣コーナーに行列ができるようになりましたが、16室ももっと流行れ……!
▲左:《熊檻(模型)》 北海道アイヌ 木製 19世紀/右:《飼い熊用給餌器》 北海道アイヌ 木製 19世紀
▲《熊送りに用いる弓》および《花矢》 北海道アイヌ 木製 19世紀
木の皮で作られた衣服、「アットゥシ」も間近で見ることができます。
▲《アットゥシ(樹皮衣)》 北海道アイヌ 19世紀
お次は東京駅八重洲口からほど近くにある「アイヌ文化交流センター」。
あまり知られていないようですが、2017年1月に「ゴールデンカムイとアイヌ文化展」が開催されているゆかりの地。公益財団法人アイヌ民族文化財団が運営しています。
いや、ここ、ホントにすごいから! ここを知らないなんてもったいない! 工芸品展示に約4,000冊の蔵書、80本の映像資料が揃って利用無料! アイヌ語講座や専門家によるトークイベントも無料! とにかく盛りだくさんの情報が手に入るのです。(※資料閲覧は館内のみ。一部貸出可)
▲「アイヌ文化交流センター」展示室
▲「アイヌ文化交流センター」資料室 映像資料はその場で鑑賞することができます。また、財団発行の書籍は貸出可。図版多数で見やすいし、オハウのレシピも載っています!
職員の方もとても親切なので、そして無料のサービスが充実しすぎていて申し訳ないくらいなので、ぜひ一度訪れてみてください。
アイヌ文化交流センター
東京都中央区八重洲2丁目4番13号ユニゾ八重洲2丁目ビル3F
☎: 03-3245-9831
https://www.frpac.or.jp/web/overview/cultural_exchange/index.html/
東京都中央区八重洲2丁目4番13号ユニゾ八重洲2丁目ビル3F
☎: 03-3245-9831
https://www.frpac.or.jp/web/overview/cultural_exchange/index.html/
関東にはこのほか、「国立歴史民俗博物館」(通称:れきはく)があります。
こちらは2013年のリニューアル時に、アイヌ関連の展示を初めて導入。アイヌ民族の継承と現在について考えます。 (アイヌ文化のほか、「マタギ」に関する展示もあるよ……!)
また、「早稲田大学會津八一記念博物館」や、「日本民藝館」でもアイヌの文化に触れることができますし、『ゴールデンカムイ』とのコラボレーション企画で話題となった「野外民族博物館 リトルワールド」でもコタン(村)やチセ(住居)が復元、展示されています。
★早稲田大学キャンパス内の博物館についてはyamasanによる記事が詳しいです→大学でアートを楽しもう!~無料で楽しめる大学ミュージアムガイド~
このあたりで「民俗文化って面白いな」と思いはじめたら、迷わず総本山へ向かうことをお勧めします。
大阪は万博記念公園に位置する「国立民族学博物館(通称:みんぱく)」。
こちらは世界最大級の博物館機能と、大学院教育の機能を備えた、文化人類学・民族学の研究所として、世界で唯一の施設となっています。
館内は日本のみならず世界の民族文化を紹介。2014年に国立新美術館にて開催された「イメージの力」展を覚えている方もいらっしゃるかと思いますが、本家はかなりカオスな雰囲気。ですが一度訪れると虜になる人が続出するという魅惑の場所です。
世界にはさまざまな民族文化が存在します。
そのうちのいくつかはすでに失われてしまったり、また、失われつつあります。
文化の保存や継承には”知ること”がとても大切ですが、悲しい歴史を持つものはそちらがクローズアップされ、「くらし」や「伝統」が陰に隠れてしまうことも(もちろん歴史は大切です)。
しかし「くらし」や「伝統」を知ることこそ文化の理解に通じますし、きっとそこには新鮮な発見がたくさんあるはずです。
アイヌの民族文化をきっかけに、いろいろな文化に触れてみるのも面白いかもしれませんよ!