就活生必見!豪華な「企業イメージCM」が増えるとバブル終焉は近い(かも)!?

2018/1/31 10:10 DJGB DJGB

やわらか頭、してますか。

こんばんは、バブル時代研究家のDJGBです。

今年もそろそろ就職活動、いわゆるシューカツの季節です。

大手企業の19年卒の新卒採用活動は、会社説明会(エントリー)が3月1日から、面接(選考)の解禁は6月1日からだそう。アベノミクスの効果か、この春卒業する学生みなさんの内定率は堅調で、“売り手市場”はまだ続きそうです。



有効求人倍率もバブル期越えが続く昨今、企業側もあの手この手で、優秀な人材の確保に必死です。

ところで、今からおよそ30年前のバブル期のシューカツ(当時はそんな言い方しなかった)がよくわかる映画といえばこちら。

●「就職戦線異状なし」(91年)


この映画でも描かれているとおり、バブル期のシューカツについては

●会社説明会の交通費支給はあたりまえ。タクシー券も配られた。
●他社に逃げられないよう、“研修”と称した豪華な食事や旅行で拘束された。
●面接に行ったらその場で内定が出た。
●クルーザーやディスコで入社式。あるいはハワイで入社式。


といった、現在では信じがたいエピソードがよく語られます。

ですが、正直この手の話は聞き飽きたので、今日はちょっと違った角度から当時のシューカツをふりかえってみましょう。


■鉄鋼業界で勃発した「やわらかイメージCM戦争」

採用難が本格化したバブル後期、主に学生をターゲットに、人気タレントを起用した「企業イメージCM」を放映する企業が急増します。特に消費者にとって身近な商品を扱わない、いわゆるBtoBの会社にはその傾向が顕著でした。代表的なCMがこちら。

●住友金属工業「やわらか頭」(89年)



金属素材という文字通りカタいものを扱う、それも財閥系の会社に、あえての「やわらか頭、しています」というキャッチコピー。

このCMだけ見た人は、住友金属工業がいったい何をする会社か全くわからないハズ。ただ、うっすらと「わりと柔軟な会社かな」という印象だけは残るのではないでしょうか。

山瀬まみの舌足らずな「ズビトボキンゾク!」というセリフとともに、「やわらか頭」は当時のお茶の間に広く浸透。社員にとっても「あのCMの!」と言われる機会が増えるなど、少なくともリクルーティングと社内のモチベーションアップに一定の貢献は果たしたそうです。

「ウチも若者にウケるCMでイメージアップを!」

有効求人倍率が1.46倍(7月)を記録した90年、鉄鋼業界にやわらかCM戦争が勃発します。

●新日本製鐵「新日鐵 will make it」(90年)


住金の山瀬まみに対し、新日鐵はハリウッドから大物シガニー・ウィーバーを起用。ううーん、なんかスゴい会社であることはわかります。

なおこの2社はのちに合併し、現在では「新日鐵住金」となっています。


●神戸製鋼所「もっと広がるアッという仕事」(90年)


神戸製鋼所が起用したのは、地元・阪神タイガースのスター(?)花形満でした。親しみのあるアニメキャラクターに英語を喋らせることで、グローバルなビジネスを展開していることを伝えたかったようです。

ん、BGM、「勇気のしるし」のパクリ?


●川崎製鉄「カオス・パワーだ」(90年)



対する川崎製鉄(現・JFEスチール)のCMは、「さよなら人類」でおなじみのバンド、たま という、意外過ぎるキャスティング。確かに「三宅裕司のいかすバンド天国」で若者の支持を集めてはいましたが…、このCMそのものがカオス・パワーを醸していることは否定できません。

今も昔も、オカネをもっているのは、学生ではなく企業のほう

好景気に沸きながら、「3K(きつい、汚い、危険)」職場として敬遠されがちだった鉄鋼業界。 オカネがあって優秀な学生を採用したいのなら「給料を上げる」のがいちばんシンプルに思えますが、バブル期の企業は、豪華タレントを使って「会社のイメージをアップする」という方法をとったのです。

バブルが崩壊した翌91年、シガニー・ウィーバーから新日鐵の企業CMを引き継いだのは、前年まで手取り9万円ほどの月給でグループ内に勤務していた野茂英雄(当時近鉄バファローズ、元・新日鐵堺)でした。


■あらゆる企業が優秀な新卒学生を欲しがった90年

90年、採用難だったのは鉄鋼業界だけではありません。ここでは採用への貢献を意図して作られたと思しき「企業イメージCM」をいくつかピックアップ。

●東芝「いい学生時代を過ごしたあなたに会いたい」(90年)


90年の就職人気企業ランキングで理系4位に入っていた東芝ですら、イメージCMで学生を呼び込む必要がありました。コーラスグループA.S.A.P. による「卒業写真」の英語カヴァーがいいバブル感を醸します。

このCM見て東芝に入社した皆さん、今が踏ん張り時です。


●JAL「90年代の主翼」(90年)


90年、JALはCI(コーポレートアイデンティティ)を実施。長年親しまれた鶴丸に替え、ランドー・アソシエイツによる新ロゴを導入し、イメージの刷新を図ります。CMに登場したのはあのジャネット・ジャクソンでした。

おりしもライバルのANAは、ニューヨーク便の就航にあたり大物歌手のフランク・シナトラをCMに起用。米国の大物歌手が2人が、日本の2大エアラインのCMに同時に出演するというのも、強い日本経済と円高あってこそ。


●清水建設「パパの歌」(90年)


建設業界も、リクルーティングのための広告活動に積極的でした。作詞・糸井重里、作曲・忌野清志郎による清水建設のCMソング「パパの歌」は好評を博し、92年には同じ面子で「パパの手の歌」も制作されました。

ほかにもバブル期には「地図に残る仕事」(大成建設)など、現在まで受け継がれる建設業界コピーが誕生しています。


■「豪華だけど、よくわからない」CMが増えたらバブル終焉は近い?

一般的なCMには、商品名、発売日、お値段といった情報に加え、「便利!」「おいしい!」「カゼに効く!」など、その商品がもたらすメリットがコンパクトにまとまっています。対して「企業イメージCM」にはそうした情報はほとんど含まれず、代わりに“企業姿勢”や“社長の想い”といったカタチにしづらいものを表現する必要があります。

「好景気だからもっと学生を採用したい、よし、CMを作ろう」

慣れない広告を手掛けることになった人事責任者が、潤沢な予算を知名度の高いタレントにつぎ込んだ、というケースも少なくなかったことでしょう。結果、「豪華だけど、何が言いたいのかよくわからない」CMも、たびたび生まれました(中には、ですよ)。

91年3月、経済統計上のバブル景気は終了。就職氷河期の到来とともに広告予算も削減され、フワッとした「企業イメージCM」は次第に減ってゆきました。

リクルートホールディングスによれば、18年春の大学新卒者の求人倍率は1.78倍。「売り手市場」とされる1.6倍を4年連続で超えています。

そろそろまた、「豪華だけど、何が言いたいのかよくわからない」CM、増えてくるころかも。そんなCMを見かけたら、バブルの終焉を疑ってみては。

今日は映画「就職戦線異状なし」主題歌のこの曲で失礼します。
就活生のみなさん、人生は長いから焦らず自分らしく! 2留した私が言うんだから間違いない!

●槇原敬之「どんなときも。」(91年)



(バブル時代研究家DJGB)