ハイレベルな「ままごと」が可能! サンヴァリエ金岡の児童公園が超リアル

2017/12/11 13:00 吉村智樹 吉村智樹


▲屋根さえあれば生活できそう! ここ、実は団地のなかにある児童公園。家屋が本物さながらに再現されており、ハイクオリティな「ままごと」が実現可能です


こんにちは。
関西ローカル番組を手がける放送作家の吉村智樹です。


この連載では、僕が住む関西の耳寄りな情報をお伝えしてゆきます。
今回はその第6回目となります。





今回は「昭和レトロ」な話題をふたつ、ご紹介します。


■団地の真ん中に「家そのまんま」な児童公園があった!


木枯らしが吹く季節となり、屋外で遊ぶ子どもの姿もめっきり見かけなくなりました。


子どもの遊びといえば、僕がもっともよくやったのが「ままごと」


「おっさんがままごと? キショ!」と思われるかもしれませんが、僕は団地っ子で、しかも昭和のベビーブーム時代の生まれ。
団地には上から下まで猛烈な数の子どもが住んでおり、女子がひとたびままごとを始めれば、「おじいさん役」「お父さん役」「兄弟役」、あとなぜか「居候役」などが必要となり、男子も総動員となりました


団地のなかにある小さな公園にござを敷き、芝生から引っこ抜いたクローバーをごはんに見たて、家族の食事シーンを演じるのが言わば団地っ子たちの通過儀礼。
ままごとは、女子と男子の差などなく、子どもなら誰もが参加した、人生初のエチュードだったのです。


それに僕とて、はじめからおっさんだったわけではありません。
さすがにいまはやっていませんのでご安心ください。


■風呂にトイレに家電製品。最強の「ままごとスポット」だ


なにもない公園に、存在しない「家」を想像しながら遊んでいたままごと。
「あの頃、こんなリアルな施設があったら、もっとハイグレードな内容になっていただろうな」。
旧「金岡団地」、現「サンヴァリエ金岡」にある児童公園「スターハウスメモリアル広場」、通称「キッチン公園」を目の当たりにし、僕はそう思いました。


「めちゃめちゃリアルな児童公園がある」という噂を聞いて、やってきたのは大阪・堺市の東三国ヶ丘町。
噂にたがわず、いやはやこれはこれは、かなりの現実感。



▲紅葉する木立ちのなかに現れる鉄骨組みのスペース。遠目には、ここが公園だとは思えないが……



▲公園の名前は「スターハウスメモリアル広場」。通称「キッチン公園」



▲団地を背に、まるで「住宅展示場?」かのようなスペースが広がる。近づくと冷蔵庫やオーブントースターがあるのがわかる


面積は1539.75平方メートル。
けっこう広々としています。


3戸分のダイニングや居間を再現しており、玄関にはちゃんと下駄箱が
キッチンには冷蔵庫やオーブントースター、サンルームには洗濯機など家電製品があり、うっすら、ここに暮らす家族の姿が見えてくる、そんな気さえします。



▲玄関(?)から入ると、そこにはちゃんと下駄箱が



▲下駄箱にはコンクリートで再現された靴が並ぶ。細部へのこだわりがすごい!



▲アウトドアなのにインドア感でいっぱい



▲冷蔵庫の上にはオーブントースター。食パン焼きたい!



▲トイレや浴室など水まわりもしっかり再現されている


これは最強のおままごとスポットですね~。
「リア充」、いや「リア住」というか。
正直、屋根さえあったら実際に住めますよね


天気の良い日はご近所お誘いあわせで、お弁当を持ち寄り、キッチンのテーブルに集まって食べるとよさそう。
ただし、あまりにも所帯じみているので開放感は得られないかも
個人的には映画「逆噴射家族」のラストシーンを思いだしました。


■テーブルも水洗トイレも斬新だった昭和の暮らしを再現


ではいったいなぜ、こういった外出していながら自宅気分が味わえる稀有な公園が誕生したのか。
しかも観光地ではない、ごく普通のベッドタウンに。


実はこの公園、言わば「遊べる記念碑」なのです。


昭和31年(1956年)に竣工したこの旧名「金岡団地」は、住む場所に困る勤労者のために住宅や宅地の供給をおこなった特殊法人「日本住宅公団」(1955年に設立。1981年に解散)が手がけた、なんと公団住宅第1号

*現在は都市再生機構による「サンヴァリエ金岡」に改称


当時、「団地」はダイニングキッチンに代表される新たな生活スタイルを設計に採り入れ、そのため若いサラリーマン家族の憧れの存在でした。
それまで畳に直接腰をおろして食事をしていた暮らしが一変。
椅子に座ってテーブルを囲む団地スタイルは斬新で画期的なものとして迎えられたのです。
そんなニューウエーブな生活をする核家族を指して「団地族」という言葉が生まれたほど。
そして時代に燦然と輝くこの金岡団地の様式は「スターハウス」と呼ばれました。


そんな金岡団地が「公団初の団地」であることを記念し、1997年、敷地内に往時の1階部分を復元したのです



▲往時の団地にはベランダがなく、そのかわりサンルームが設けられた。復元された住居がそれを物語っている。このサンルームも庶民の憧れの的。ここに洗濯機を設置する家庭も多かった



▲脱水層ではなく「脱水ローラー」がついた昭和30年代の洗濯機。衣服をローラーに巻き込んで手動で水分を絞りだしていたなんて、いま説明してもわかってもらえないかも。それにしてもここまで再現するとは手が込んでいる


昭和31年に誕生した室内(?)は、確かにいま見てもナウい。
備え付けの吊戸棚はもちろん、椅子式の食事用テーブルまで、すでに部屋に用意されていたというから驚き
椅子とテーブル付きがこの部屋の目玉だったのですね。
テーブルで食事ができる暮らしは、入居者にとって、それほど魅力的なことだったのです。



▲本棚まである



▲昭和の名作漫画がズラリ



▲昭和30年に映画化された創作童話のベストセラー「ノンちゃん雲にのる」がラインナップされている。ノンちゃんといっても能年玲奈のことでもフットボールアワー岩尾のことでもない


同じようにトイレや風呂を再現しているのも「水洗トイレと風呂付き住宅」がそうとう珍しかったからなのだとか。



▲昭和の住居や暮らしを再現した公園だが、平成キッズたちにも大好評の様子


■今年1月、塗装をしなおしリニューアルオープン


さてさて、実はこの公園、造成20年目にして塗装が剥げおちるなど老朽化が目立ち、都市再生機構(UR)が今年1月にリニューアルしました。


団地は高度成長時代のドリームの象徴。
決して景気がいいとは言えないこの時代に、これに再び塗装が施され、新たなきらめきを放つ。
素敵なことです。
単なる昭和の暮らしの保存展示ではなく、希望の光が窓から差したあの時代の空気感も、遊びながら感じてもらえるといいですね。


とはいえリニューアル以前の生活感がしみついた風情も、それはそれで味わい深かったので、こちらもどうぞご覧ください。



▲リニューアル前の公園には電子ジャーもあった。いつでも温かいご飯を食べられる保温機能つき炊飯器の登場は日本人の暮らしをに大きな変化をもたらした



▲以前は電子レンジやコンロもあり、さらにリアリティがあった。これがなくなっちゃったのは残念



▲当時、浴槽はまだ木製だった。ステンレスの浴槽が普及するのはさらにずっとあと。木目がそれを証言していたのだが、これも現在はない


*作稿にあたり2017年1月16日付の朝日新聞を参考にさせていただきました。


■昭和レトロな「ラブホテル」と「パチンコホール」を再評価しよう!


さて、「昭和レトロ」と言えば、12月21日(木)の夜、昭和レトロなラブホテル&パチンコホールを再評価するイベントが開催されます


題して、
ラブホテル&パチンコホール再評価
「オトナの社会見学ナイト!」





「ラブホテル」と「パチンコホール」。
ともに、造り手たちの崇高な美意識で彩られた、娯楽の殿堂です。


しかし……。


アートの粋を集めた、この得がたい建築物が、正当に評価されることはありません
それどころか創建に際し、反対運動が起きてしまうまでに忌み嫌われることも
そして、ひとたび取り壊されれば更地と化し、記録にも記憶にも残らないのです


そこで!


「昭和遺産ラブホテル」を愛する逢根(あいね)あまみさんと、レトロなパチンコホールを愛するライターの栄華(えいか)さん、ふたりの女性クリエイターを招き、はかない運命にあるラブホテルとパチンコホールのデザインと、お客さんに楽しんでもらおうと尽力した人々の姿にスポットをあて、再評価し、記憶に留めようと試みるイベントを開きます。



▲絶滅の危機にある「昭和遺産ラブホテル」を探し求め全国を旅する逢根(あいね)あまみさん



▲古いパチンコ店やその史跡を探訪し、パチンコが街にあった記録を集め続けている人気ライターの栄華(えいか)さん


おふたりが旅をしながら撮影した貴重な画像並びに動画の数々と、取材で得た感動のエピソードを、ぜひご堪能ください。


マジで感動します!

どうぞハンカチのご用意を。


出演
逢根あまみ(あいねあまみ)
減少する「昭和遺産ラブホテル」を記録すべく全国を旅する“終末トラベラー”。



▲レトロゴージャスな「昭和遺産ラブホテル」を発掘しては部屋を撮影して記録を残し続ける逢根あまみさん



▲現在は風営法によって造るのが難しいアミューズメント性に富んだ部屋やベッド



▲イベント当日はこのような「愛の昭和遺産」の数々を大きなスクリーンに投影し、解説をしていただく


栄華(えいか)
人気女性パチンコライター。古いパチンコ店やその史跡を探訪し、パチンコが街にあった記録を集め続けている。



▲時には山奥の僻村から離島まで、およそ2000軒もの「レトロパチンコホール」及び史跡を探訪し、写真や動画で記録を残し続けている栄華さん



▲レトロパチンコ台が最後に行きつく「パチンコ墓場」のリポートも


訊き手 吉村智樹(放送作家/フリーライター)


会場大阪Loft PlusOne West(ロフトプラスワンウエスト)
URL:http://www.loft-prj.co.jp/west/
場所:大阪市中央区宗右衛門町2-3 美松ビル3F
最寄駅:なんば駅、日本橋駅、長堀橋駅


OPEN 18:30 / START 19:30
前売¥1,800 / 当日¥2,300(共に飲食代別)*要1オーダー500円以上


前売券購入および前売り予約はイープラス、ロフトプラスワンウエストWeb、店頭&電話予約にて実施中!


イープラスhttp://sort.eplus.jp/sys/T1U14P0010843P006001P002242293P0030001
ロフトプラスワンウエストWeb: http://www.loft-prj.co.jp/west/contact
電話予約 06-6211-5592(16時から)お願いします。


エロとギャンブルをレトロとアートという視点で鑑賞するロマンチックなイベントです。
ぜひ遊びにいらしてくさい

イベント詳細
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/west/76344





(吉村智樹)
https://twitter.com/tomokiy