オグリキャップと武豊…「ファンシー絵みやげ」で振り返る競馬と馬キャラ(1/2)

2017/11/10 12:00 山下メロ 山下メロ


お久しぶりです。平成元年あたりのカルチャーを発掘調査している山下メロと申します。80年代とも90年代とも違うその時代を、平成レトロとして愛好しております。



当連載では、80年代から平成初期に流行した「ファンシー絵みやげ」から、当時の流行を紹介していきたいと思います。「ファンシー絵みやげ」とは80年代からバブル経済期~崩壊を挟んで90年代まで、日本の観光地で若者向けに売られていた、かわいいイラストが印刷された雑貨みやげのことです。



「ファンシー絵みやげ」については連載第一回をご覧ください。

■ デフォルメ文化と平成三強

最近、演歌歌手で馬主でもある北島三郎さんの馬・キタサンブラックが安定した強さを見せていることが話題です。そういった流れもあり、今回は競走馬のディフォルメについてご紹介したいと思います。以前、この連載でF1ブームを採り上げた際、チョロQのように長辺の短くディフォルメされたフォーミュラカーのぬいぐるみを紹介ました。


↑フォーミュラカーをディフォルメしたぬいぐるみ。

1980年代後半にゲームセンターでクレーンゲーム機のUFOキャッチャーが流行し、2頭身のぬいぐるみ人形が色々と作られました。そこには、流行のF1車両が縮められ、景品のぬいぐるみとなっていたのです。

同じように決められたコースを走って競争するものとして競馬があります。こちらも1980年代後半にブームを迎え、同じように競走馬もUFOキャッチャーに入りました。


↑このような競走馬のぬいぐるみがUFOキャッチャーを賑わせました。

ここで競馬ブームについて簡単に振り返ってみましょう。1970年代にハイセイコー人気で第一次競馬ブームが起こりましたが、ファンシー絵みやげの全盛期でもある1980年代後半には第二次競馬ブームが起きています。

ブームの火付け役は人気ジョッキーの武豊、それからオグリキャップでした。そして新しく平成の時代が訪れて人気を牽引したのがオグリキャップ、スーパークリーク、イナリワンの「平成三強」です。

バブルの好景気もあり、競馬への注目がかつてないほど高まり、特にオグリキャップに関しては老若男女問わずその名前を知っているほどだったのです。


↑このように90年代の人気競走馬がプライズの景品となった。ラインナップはトウカイテイオー、ホクトベガ、サイレンスズカ、タイキシャトル、オグリキャップ。

■ 競馬プライズの問題点

F1に関しては車体のペイントカラーやデザイン、さらにスポンサー企業のロゴマークなどの違いで個体認識ができましたが、競走馬については体毛の色の違いこそあれ、ディフォルメしてしまうと見分けが難しいという問題がありました。

そこで差別化ができるのが矯正馬具の存在です。広い視野を持ちながら繊細な競走馬のために、視野を狭くし、前方に集中させるような機能を持ったブリンカーや、耳を覆って音に驚かないようにするメンコが有名ですね。これで少々の差別化ができました。


↑こちらがメンコ。耳が覆われて音が聞こえにくくなるような構造になった覆面である。

しかしここにも問題がありました。実はメンコにアイデンティティがある競走馬というのが多いというわけでもないのです。たとえば先ほどの写真はサニーブライアンという競走馬ですが、試しに画像検索してみましたが、メンコをかぶってる写真はまったく出てきませんでした。

唯一出てきたのが引退式の写真で、ここで同じ黄色い耳のフードにピンクの覆面のメンコをかぶっていたのです。このぬいぐるみは引退式のコスチュームを再現したものなのでしょう。


↑このタスキも引退式でかけていたものと同じ。

メンコの違いでもアイデンティティは出しづらく、しかし体毛の色の違いだけでは違いが分かりづらく、詳しい人にしか伝わらない商品となってしまいます。そこで重要なのがこちらです。



はい。鞍の部分の名前ですね。実際は大きく書かれたナンバーの下に小さく名前が書かれているものですが、大きく書かれています。レース名も合わせて書かれており、優勝セレモニーで肩にかける優勝レイのようでもありますね。

もはや名前を書くしかない……でもそれでもみんなが欲しがる……それだけ競馬が人気だったことが分かります。

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