カワイイ!でも実は怖い…「古代アンデス文明展」に行ってきた
上野・国立科学博物館「古代アンデス文明展」が10月21日にまだ始まったばかりですが、あることで話題となっています。
展覧会を観た人が一様に「可愛いかった」と口にしているのです。インカ帝国やシカン文化に代表されるアンデス文明の一体どこが、どうして可愛いのでしょうか?
インカ帝国の遺跡マチュ・ピチュやナスカの地上絵といったアンデス文明のどこに可愛い要素があるのか、首をかしげてしまいます。しかし、いざ実際に展覧会会場へ足を踏み入れると…。次から次へと「可愛い」もののオンパレード!
何回「可愛い!」と言葉を発したか自分でもカウントできないほど、年甲斐もなくはしゃいできてしまいました。と言っても信じてもらえないと思うので、”可愛いアンデス文明”の展示品を幾つか紹介しますね。
「未焼成の小型男性人像」先土器時代後期 ペルー文化省・カラル考古学調査団
土を手で捏ねてこしらえた小さな男性像。焼き上げる前の土偶です。日本の土偶は女性をかたどったものが多いですが、アンデス文明ではこんな男性像が。帽子?をかぶって少しとぼけたような顔つきがなんともチャーミングではありませんか。
でも両手の先が切り取られているようですね…
「ガイナドの双胴壺」ガイナソ文化 ラルコ博物館
液体を入れる容器だそうですが、お茶目な顔つきの男性へ目が行ってしまいます。注ぐ時に笛のような音が鳴る仕組みになっているそうです。
でも、よく見ると男性は戦闘用のこん棒と楯を手にしていますね…
「パリティ島で出土した台部が人頭の儀礼用鉢」ティワナク文化 国立考古学博物館/ボリビア
アンデス山中のペルー南部とボリビア西部にまたがる淡水湖ティティカカ湖の島から出土した儀礼用の大きな鉢。ネコ科の動物がしがみついている姿はとってもキュート!
でも台座は顔を歪めた人間の顔になっていたりします…
「リャマをかたどった土製香炉」ティワナク文化 先コロンブス期貴金属博物館/ボリビア ラパス市
リャマをかたどった高さ約40cmもある香炉。同じくネコ科動物をかたどった香炉と並び可愛らしさを倍加させています。
でも、胴体を見ると、人間の頭から出て三つに枝分かれした花が何故か描かれています。これは一体…
「縄をかけられたラクダ科動物(リャマ?)が描かれた土製の皿」ナスカ文化 ディダクティコ・アントニーニ博物館
あのナスカの地上絵を描いたのと同じ人間が描いたとは思えないほど、ゆるくて可愛らしい動物の姿を意匠としたお皿。隣に展示されている皿には2匹の魚がこれまた愛らしく描かれています。
でもこのラクダ科動物しばらく見ていると悲し気な顔をしているように思えてきます。背景の赤の斑点も少し不気味ですよね…
「人間の顔が描かれた多彩色鉢」ワリ文化 ペルー文化省・アヤクチョ地方歴史博物館「イポリト・ウナヌエ」
様々なものを頭にまとい、違う化粧(入れ墨)をしている男性の横顔が描かれた大きな鉢。皆すべて舌を出しているのがユニークですよね。
でも、これってワリが征服した敵を絞殺した姿とする説もあるそうです。そう言われるととても苦しそうな顔していませんか…
如何でしたでしょうか。パッと見とても愛らしく我々が忘れてしまったプリミティブな表現の魅力に満ちた作品たちですが、よくよく考えを巡らせてみると、恐ろしさが背後に隠されていることに気が付きます。
先史時代からスペイン人がインカ帝国を滅ぼすまでの約15000年間という膨大な時間を紹介する展覧会であり、空間的にも南北約4000kmにもおよぶ地域で花開いた様々な9つの文化を一気に見せてくれる贅沢な内容となっています。
「可愛い」だけではない、奥深い我々の知らない古代アンデスの文化を実際にその目で確かめに行ってみましょう。価値観をガラリと変えてくれるものに出会えるはずです。
最後に全く可愛くない恐ろしい作品を。
「自身の首を切る人物の象形鐙土器」クピスニケ文化 形成期中期(前1200年~前800年) ペルー文化省・国立チャピン博物館
ヨガのポーズをとっているのではありません。自分で自分の首を切っている最中の土器です。切り取られた頭や手足はよく見られるそうですが、このように殺傷行為を表現した事例は、長いアンデス文明の中でも2点しか確認されていないそうです。
最後は本当に可愛いモノで締めましょう。
ミュージアムショップには、可愛い展覧会オリジナルのアルパカグッズが沢山あります!(あれ、でもこれも首だけか…)
「古代アンデス文明展」は一部を除いて写真撮影が可能です。スマホ片手に是非足を運んでみて下さい!
特別展「古代アンデス文明展」
会期:2017年10月21日(土)~2018年2月18日(日)
時間:午前9時~午後5時(金曜日・土曜日は午後8時まで)
※入場は各閉館時刻の30分前まで
休館日:毎週月曜日(1/8(月)、2/12(月)は開館)、12/28(木)~1/1(月)、1/9(火)
主催:国立科学博物館、TBS、朝日新聞社
共催:BS-TBS
後援:文部科学省、外務省、ペルー大使館、ボリビア大使館、TBSラジオ
協賛:三井物産、こだま印刷
協力:ペルー文化省、ボリビア文化観光省、NTTドコモ、クントゥル・ワシ調査団、国立民族学博物館、東京大学総合研究博物館
公式サイト:http://andes2017-2019.main.jp/andes_web/