胡蝶蘭にシクラメン「さとりえ工房」花のパフェがきれい!
▲鉢植えの胡蝶蘭とシクラメン。実はこれ、祇園のBARのママがつくるパフェ。夜の京都に咲く甘い花を召し上がれ
こんにちは。
関西ローカル番組を手がける放送作家の吉村智樹です。
こちらでは毎週、僕が住む京都から耳寄りな情報をお伝えしております。
さて、50回に渡ってお届けしてまいりました、この「放送作家的京都案内」。
今回で最終回となります。
■「インスタ映え」バッチリ!お酒とともに“お花のパフェ”はいかが?
「50回目はどこへ行こう。有終の “美” を飾りたいな」と考えていたところ、祇園にあるBAR「さとりえ工房」さんが、“美”にあふれたお花のパフェの新作をつくっているという情報が!
祇園のBAR「さとりえ工房」さんは、以前に「盆栽パフェ」をつくるお店として採りあげたことがあります。
▼京都祇園の新名物?「盆栽パフェ」が食べられるBar『さとりえ工房』へ行ってきた!
https://ima.goo.ne.jp/column/article/4850.html
「インスタ映え」という言葉がまだ流布していなかったアーリーな時期に紹介し、その先駆けとして、おおいに話題となったのです。
あのウワサの「さとりえ工房」の「盆栽パフェ」に新作が?
しかも以前紹介したパフェとは、デザインがまるで違うというではありませんか。
わたくし、花を求める蝶のように羽ばたきながら、さっそく「さとりえ工房」へと向かいました。
訪れたのは、スナックビルが建ち並ぶ、いかにも「祇園通」たちが通いそうなシブい場所。
正直言って“パフェ”というムードとは、ほど遠い。
しかしこのスナックビルジャングルの奥地に、お菓子でできた “秘する花” が咲いているのです。
■祇園では珍しい「スイーツとフルーツがおいしいBAR」
やってきた「さとりえ工房」は、お酒のみならず、洋食とスイーツがいただけるBAR。
▲祇園のスナックビルにあるBAR「さとりえ工房」。ただいまハロウインの雰囲気で統一されている
ぽてりとした唇がチャーミングなママの名前は「さとりえ」さん(37歳)。
「ケーキデザイナー」の肩書を持つ洋菓子作家であり、フルーツカービングの講師もやっています。
▲やさしい笑顔の「さとりえ」ママ。いい味していらっしゃる
▲ここではさとりえママが講師をつとめるフルーツカービング教室も開かれている
▲さとりえママのフルーツカービング作品
つまりこの店は “スイーツやフルーツ細工の工房を兼ねたBAR” という、おそらくこの祇園において無類な存在なのです。
店内は現在、ハロウィン仕様で、とってもにぎやか。
ガイコツたちが躍る、ホラー&ポップな雰囲気に包まれています。
10月末までこのようにハロウィンパーティ風で、その後はクリスマスの装飾になる予定。
▲ハロウインのガイコツたちに囲まれるさとりえママ
そうか、もうあっという間に年の瀬なんだ……。
早すぎて、ついていけない。
■スイーツは独学。されどキャリアは30年!
さて、「さとりえ工房」のさとりえさんが洋菓子をつくり始めたのは、なんと小学生の頃から。
さとりえさんは東山で開店44年目を迎える『手作りの洋食屋さん 里』の娘さんであり、コックだったお父さんの料理を手伝いながら、お客さんに出すデザートメニューをつくっていたのだそう。
ゆえに製菓のキャリアはなんと、およそ30年に及びます。
さとりえ
「洋菓子の店で修行をしたことはありません。ぜんぶ独学。ただ、洋食の『里』が“女坂”と呼ばれる、女子大や女子高が周囲に多く集まる場所にあるため、デザートメニューは欠かせないものでした。彼女たちに喜んでもらうためスイーツはがんばりました。クッキーもプリンも自分で焼いてね。女子たちは甘いものの味に厳しいから、期待に応えようとして、腕は上がっていきました」
そうして、さとりえさんがこしらえるスイーツは女子高生や女子大生たちから絶賛を浴びました。
とくに宇治の高級抹茶を使ったプリンは大ヒット作に。
卒業生たちも、わざわざ食べに来るほどなのだとか。
■疲れた人をスイーツで癒したくて始めた「盆栽パフェ」
そんなさとりえさんがこの祇園で「お勤めの方や、この街で働く女子たちの疲れを甘いもので癒したい」と、スイーツが楽しめるBARを開いたのが今年の春。
春の訪れを感じさせ、なおかつ京都らしい雅な情緒をたたえた、桜と松の「盆栽パフェ」を考案し、これもまた一躍話題に。
永年、学生たちの心のよりどころだったスイーツが、この高級歓楽街でも花開いたのです。
さとりえ
「意外だったのは、オーダーしてくれるのが、女性より男性が多かったこと。はじめは男性のお客さんは想定していなかったし、『男の人って、こんなにパフェを食べるんや』って驚きました」
盆栽パフェは、外見にしっとりした情緒があり、枝ぶりがしっかりしていて雄々しさもあり、男性も注文しやすいんですよね。
こうして「盆栽パフェ」は、喫茶店やカフェでパフェを注文したかったけれど、周囲の目を気にして頼めずじっと我慢をしていたパフェ男子やパフェおやじたちの需要を掘り起こしたのです。
■カウンターに咲き誇る胡蝶蘭とシクラメンのパフェ
では、いよいよ新作を味わわせていただきましょう。
新作は、いったいどういうものですか?
さとりえ
「 “胡蝶蘭”と“シクラメン” です。なぜこのふたつなのか、ですか? 胡蝶蘭は、友達から『祇園やったら、やっぱりめでたい胡蝶蘭やろ』と言われたのがきっかけです。祇園でのお祝い事には欠かせない高級なお花ですから。そしてシクラメンは、はじめは紅葉したモミジだったんです。でも『葉っぱだけやと映えへんなあ』と思って、シクラメンになりました」
なるほど、祇園らしさと晩秋がテーマなのか。
深いおもむきがありますね。
ではさっそく、作っていただきましょう。
まずは盆栽でいう「用土」の構成。
植木鉢ふうの陶器に、カモミールアイスクリーム、抹茶プリンorカスタードプリン(選択できる)、自家製の小倉あんと白玉、生クリーム、土に見立てたグラノーラを敷きます。
なんとグラノーラまでお手製という凝りよう。
▲盆栽でいう「用土」にあたるプリン、小倉あん、白玉。どれも手作り
さらに季節のフルーツをふんだんに用いるのも特徴。
パフェに巨峰や柿が使われるのは珍しい。
長くカービングをやっているため、とても良質なフルーツが手に入るのだそう。
そして旬によって使われるフルーツは変化するとのこと。
▲旬のフルーツをふんだんに使うのが特徴。柿が意外にもパフェに合う
▲フルーツを鉢の上に敷いてゆく
▲雪のごとくホイップクリームで覆ってしまう。雪の下の具材を掘る楽しみがうまれる
続いては「胡蝶蘭」と「シクラメン」の花と茎。
「シクラメン」はチョコレートプレッツエルでこしらえた枝の先に、いちごチョコレートでできた花を咲かせ、お菓子でできた用土に挿してゆきます。
最後に抹茶チョコレートでつくった葉を並べます。
▲もろいチョコレートプレッツエルが折れないよう慎重かつ敏速に挿す。「もたもたしているとチョコが溶けちゃうんです」
▲抹茶チョコレートでできた手づくりの葉を並べる
▲葉には葉脈までしっかりと描かれている
「胡蝶蘭」はホワイトチョコレートでできた花をラスクに貼ります。
▲特別に焼いた「曲がったラスク」に胡蝶蘭の花を貼りつけてゆく
▲宇治の高級抹茶とお手製グラノーラを焼きこんだリーフクッキー。胡蝶蘭の葉として使う。グラノーラのざくざくした食感がたまらない
■夜の蝶も思わずとまる見目麗しい花のパフェ
そうして遂に「胡蝶蘭」と「シクラメン」の花のパフェが完成!(ともに1650円+税)。
シクラメンの茎の開き具合、胡蝶蘭の、これまでと違い下方を向いた「しだれ感」、ともに絶妙です。
まるで一幅の絵を見るよう。
▲かれんなシクラメンの花弁がいちごチョコレートでしっかり表現されている
▲鉢の外へしだれてゆく胡蝶蘭。バランスを取るのが難しいのだそう
そしていただくと、洋食の店で支持されたプリンの懐かしいほろにが風味がたまりません。
コクがあって、本当においしい。
国宝が多い京都ですが、これもまた「コク宝」に認定されるべきお味。
さとりえ
「胡蝶蘭は試作段階では、なかなかラスクに花がつかず、たいへんでした。素材からほぼ手作りなので、予約制とさせていただいています」
なるほど、予約をしておいて、彼女に(あるいは彼氏に)サプライズプレゼントにすると、きっと喜ばれるでしょうね。
では、さらなる新作のご予定は?
さとりえ
「未定ですが、クリスマスツリーかな? “年中クリスマスみたいな雰囲気のお店” が私のテーマなので、チャレンジしたいですね」
おお! クリスマスが近い時期に訪れたなら、もしかしたら、さとりえママサンタからパフェという名の贈り物が届くかもしれませんね(靴下には入れられませんが)。
見て楽しく、食べておいしい、花が咲き誇るパフェ。
こうして連載最後の花道を飾ることができました。
名称●さとりえ工房
住所●京都市東山区新橋通大和大路東入林下町420番地 日宝バッカスビル3階B号室
電話●075-741-7994
営業時間●20:00~AM1:00
休館日●日曜・祝日&不定休(要確認)
Facebook●
https://www.facebook.com/satoriekoubou/
10月31日(火)にハロウィンパーティがあります。
さて、次回から京都のみならず関西(近畿)全域をめぐります。
今後ともよろしくお願いいたします。
(吉村智樹)
https://twitter.com/tomokiy