Twitterに「B級仮装」の自撮りをアップし続ける謎の美女「あっ!きのこ」さんとは?

2017/9/4 12:57 吉村智樹 吉村智樹

▲これたぶん、『トムとジェリー』のトムキャットだと思うんだけど……。京都市にお住いの若き女性「あっ!きのこ」さんは、このように絶妙に微妙な自画撮りほぼ毎日Twitterにアップし続けています


こんにちは。
関西ローカル番組を手がける放送作家の吉村智樹です。
こちらでは毎週、僕が住む京都から耳寄りな情報をお伝えしており、今回が46回目のお届けとなります。





■自ら「B級仮装」と呼ぶ自画撮りをTwitterにアップし続ける謎の美女の正体とは?


Twitterをやっていると、とてつもない未知なる才能に出会うことがあります。


毎日ひたすらギリギリなバランスで一円玉を積み重ねた画像をアップし続けている人、ひたむきにバナナで仏像を彫っている人、実在するプロレスラーを“折り紙”で再現し続けている人、さまざまです。


今回お会いした「あっ!きのこ」( https://twitter.com/1uppinoko  )さんのツイートは、とりわけ衝撃でした。


自撮り画像をTwitterにアップする女子はあまたいますが、彼女の自撮りは、ひと味もふた味も違います。「あっ!きのこ」さんの自撮りは、人気キャラクターや世界の名画など、必ずなんらかの別イメージに扮しているのです


百聞は一見にしかず。
まずは「あっ!きのこ」さんがTwitterにアップし続けている自撮りの数々をご覧ください。



▲「ドラゴンボール」の神龍



▲ヨーダ



▲「アンパンマン」のかびるんるん



▲スプーの絵描き歌



▲アンディ・ウォーホル「マリリン・モンロー」



▲駄菓子「らあめんババア」のパッケージ



▲「パラッパラッパー」のタマネギ先生



▲ゴヤ「我が子を食らうサトゥルヌス」



▲生類憐みの令



▲「ブラックジャック」の人面瘡



▲目玉おやじ


ゲゲゲの鬼太郎の「目玉おやじ」アンディ・ウォーホルのポップアート作品、はいだしょうこお姉さんが描き、いまだに語り継がれる衝撃の迷作「スプー」、駄菓子の「らあめんババア」のパッケージ、果ては手塚治虫の名作漫画「ブラックジャック」に登場する“人面瘡” まで、もう幅広いんだか狭いんだか。
いつも意表をつき、絶妙なところからチョイスしてくるので、思わず「ぷっ!」と吹き出さずにはいられません。


そして、そのとぼけた作風たるや。
ベースとなる素材は「紙」
小学生の頃、授業で習った“図画工作”のような、いい意味で完成度が低いのどかな味わいが全開。
チープでキッチュ、そしてピュアな創造欲を感じます。
彼女はこの行いを自ら「B級仮装」と呼んでいるのです。


「SNOW」のように画像を加工できるアプリが全盛の時代に、あえて反旗をひるがえすかのように、アナログでアナクロなDIYにこだわり続けている「あっ!きのこ」さんは26歳。
京都市にお住まいで、子供の発達支援にかかわる職員をされています。


いやあ、まさか二十代の方だったとは。お歳を訊いて驚きました。だって、あまりにもセレクトが激シヴなものだから。


そんな「あっ!きのこ」さんはとてもお美しい方なのですが、残念ながら素顔の顔出しはNG。
そのかわり、なんとこの連載の第一回目に紹介した「顔の家」の仮装を持参してくれました。
この心遣いに感動! そして自分が取材した建物にインタビューしているような不思議な気持ちに。



▲Twitterにほぼ連日、仮装の自画撮りをアップし続ける京都市にお住いの「あっ!きのこ」さん(26歳)。とてもおきれいな方なのだが、残念ながら顔出しNG。そのかわり、なんと……



▲この「いまトピ」での連載第一回目に紹介した「京都名物 顔の家」の仮装持参でお越しくださった! なんという心遣い



▲横から見ると、さらにハンドメイド感が丸わかり


■日課として無理してでもやる「B級仮装」


ではいろいろ質問していきましょう。


――「B級仮装」は「コスプレ」とは違うのですね?


あっ!きのこ
「そうなんです。コスプレって基本はお金も時間もしっかりかけて、クオリティを高めるじゃないですか。でも私は1時間くらいで作ってしまうし、製作費はほとんど絵の具代だけ。お金はぜんぜんかかっていません。B級映画のようなチープな表現が好きなので、あくまで “B級な仮装” を目指しています」


――B級仮装は、いつからお始めになったのですか?


あっ!きのこ
「去年の秋からです。それからほぼ毎日Twitterにアップしているので、現在で300枚くらいかな。もともとTwitterが好きで、日常的に写真を撮ってアップはしていたのです。手軽だし。作ることに関しては、たまに絵を描いたり、気持ち悪いクッキーを自作してみたり、そういう画像をあげていました」


――まだほぼ一年しか経っていなかったのですか! それでこの湧きあがるほどの膨大な作品量……すごいです。そしてなにより、ほぼ毎日B級仮装を続けていらっしゃることが驚異だと思いました。ブログですら続けるのは困難なのに。いったいどこからそんなパワーが出るのですか?


あっ!きのこ
「継続できているのは、アイデアが尽きないからですね。漫画や映画など、いろんなカルチャーが好きなので、モチーフが途切れないということが続けていられる大きな理由だと思います。『あれもやりたいし、これもまだやってない』。そんな感じ。あと、ほぼ毎日製作することを多少無理にでも自分に課しているという部分はあります。毎日やるべきこととして仮装があって、そういう日課がある生活って、いいなと思って」



▲「ゲゲゲの鬼太郎」シリーズ



▲「スターウオーズ」シリーズ



▲「Eテレ」シリーズ






▲「世界の名画」シリーズ


■「B級仮装」は恥ずかしくない。でもSNOWは恥ずかしい


――ツイートが“バズる”ことは意識されますか?


あっ!きのこ
「う~ん。バズると嬉しいです。でも、数字を気にしすぎたり、注目度を考えてやりたいことが左右されたりしたらしんどいので、あくまで自分がやりたいことをやっています」



▲バズった画像の第1号が「太陽の塔 表と裏」





――確かに、バズらせるのみが目的なら、このキャラクターたちではないでしょうね。そこにやりたいことだけをやる潔さを感じます。B級仮装をアップしているSNSはTwitterだけですか?


あっ!きのこ
「はい。Twitterがメインです。TwitterでもSNOWを使った自撮りは恥ずかしくて無理ですね。B級仮装ならできるんです。その差はなんなのか、ですか? 普段の自分の延長上で可愛く見られたいという願望が強く出すぎると照れくさいんですよ。仮装では、顔に絵の具を塗ってしまうと普段の自分とかけ離れていますし、奇抜さやシュールさを狙っているので平気です」


――複雑な乙女心ですね。そもそも、B級仮装を始めたきっかけはなんだったのですか?


あっ!きのこ
「去年のハロウインの前くらいに、イベント用にキョンシーのコスプレをしようと考えてドーランを買ったんです。そこで残ったドーランを活用しようと思って、他にもいろいろやってみたのがきっかけですね。はじめの方はTHE白塗りのデーモン小暮閣下とか、未亡人明美ちゃんとか……。必要な小道具は家にあるもので代用していたのですが、やりたいものが広がってきて、代用品では限度があるため、自分で手作りしはじめました


――ハロウインのメイクがきっかけだったとは意外です。スタートした理由はとても普通なのに、そこから一気に独自な世界が花開いたのですね。



▲「緑色キャラクター」シリーズ



▲「鳥キャラクター」シリーズ



▲「干支」シリーズ。羊(笑)、犬(笑)


■仮装の素材は日用品。製作費はほとんどかからない


――そして画像から伝わってくる紙のゴワゴワ質感がたまらないのですが、使っている素材はなんなのですか?


あっ!きのこ
「新聞紙、お菓子の空き箱、カレンダーの裏紙、牛乳パック、段ボール、アルミホイル、輪ゴム……など基本的に家庭内にある日用品や不用品を素材にしています。目が光っている部分ですか? あれはクリアファイルを切り取っています。クリアファイルだとメガネのレンズ感が出るんです」



▲牛乳パックはおもにかぶりものの強度をあげるベースとして使われる



▲空き箱、いらない紙、輪ゴムなどなど素朴な材料。いやがおうにも童心にかえらされる


――作品から溢れ出る、むせかえるような“リサイクル感” は、実際に不用品で工夫しているからなのですね。B級仮装の衣装やオブジェはどういうときに作るのですか?


あっ!きのこ
「まず家から職場へ材料を持っていって、お昼ごはん休憩の1時間のあいだにあらかた作ってしまいます。お昼ごはんはひとりで食べることが多いので、集中できるんです。そしてできあがったものを家に持ち帰って、次は撮影ですね」


――「1時間で作る」っていうのは「お昼休みが1時間だから」なんですね! タイムリミットがある表現だったのか。作るコツってありますか?


あっ!きのこ
「自分の顔に合わせて作るのではなく、自分が向こうに全力で寄せています。具体的には、対象のバランスや大小を最優先することと、顔芸で再現率をあげます。つまりリスペクトがないと、いいものに仕上がらないんです」


――「自分が向こうに全力で寄せていく」って、いい言葉ですね。すべてにおいて言えることなのかも。



▲「駄菓子 ラーメン系」シリーズ



▲「駄菓子」シリーズ。「うまい棒」は味ごとに仮装!


■経験から編み出した独自なライティング方法


――そしていつも思うのですが、ライティングに哀愁があって、味があります。どうやって撮影しているのですか?


あっ!きのこ
「私の部屋のクローゼットとベッドの間で、スマホを立ててセルフタイマーで撮影しています。自分の部屋は灯りを消して真っ暗にし、扉を開けて隣りの部屋の照明を採り入れながら撮るんです。そして黒いものを身につけます。そうすると背景と同化する効果があったり、アラが目立たなかったり。さらにときどき懐中電灯をあてて、一部分を強調します。そうやってだいたい一回につき30枚くらい撮って、気に入った画像をアップするという流れです」



▲スマホで自画撮りをする


――黒バックの部分にある艶っぽいテカリは、隣りの部屋から漏れる灯りだったのですか。さすがのアイデアです。なるほどドメスティックで、かつちょっとエロティックな情緒を感じたのですが、漏れ灯りだったからなのか。



▲愛犬を見てほしいシリーズ











■撮影が終われば捨ててしまう。作品に執着はない


――しかし300作品を超えると、造形物がたまって仕方がないのでは。どうやって保存されているのですか?


あっ!きのこ
「保存はしません(きっぱり!)。ゴミの日に捨てます。家の中に置くところもないし、撮影が終わったら執着がないんです


――えー! 捨てているんですか! もったいない。でも状況的に仕方がないですよね……。



▲「珍スポット」シリーズ。愛知県「桃太郎神社」のコンクリート像、静岡県「まぼろし博覧会」のオブジェ、三重県「ガリバーすべり台」、滋賀県「飛び出し坊や”とび太くん”」、東京「ロボットレストラン」


■原動力は「20代のいまの自分を残しておきたい」


――では最後に、B級仮装をしてTwitterにアップする、その喜びの根源はどこにあるのでしょう。


あっ!きのこ
「純粋に楽しいのと、二十代のいまの自分を撮っておきたい、いまの自分を残したいっていうのがありますね。若さを消費している感覚です。毎日バカなこと、しょうもないことをやり続けることが、かっこいいと思っているので、淡々とやっています」


二十代の女性が「いまの自分を写真に残したい」と考えたとき、多くの人がプロのカメラマンに撮影をお願いし、ときにあられもない姿になるもの。
「あっ!きのこ」さんのその方法は、そんなおおかたの潮流からはケタはずれに横道に逸れているようです


しかし、自分の記録という根源的な表現活動にはぐっと接近しているのではないでしょうか。
画像のテイストはもろB級ですが、その想いの純度は「A級をもしのいでいるのではないか」と思いました。




「あっ!きのこ」B級仮装作品一覧
https://1uppinoko.tumblr.com/



(吉村智樹)
https://twitter.com/tomokiy