80年代にはグランブルーファンシーがあった……「ファンシー絵みやげ」で振り返るマリンスポーツ(2/2)

2017/3/10 12:00 山下メロ 山下メロ


■ 1986年のファミコン

80年代にマリンスポーツがどのような存在だったかを、ビートたけしさん監修で1986年に発売されたファミコンソフト『たけしの挑戦状』を例に見てみましょう。こちらのゲーム内で、主人公の会社員が資格を取得できるのですが、「はんぐぐらいだー」や「ききゅう」に混じって「すきゅーば」や「ういんどさーふぃん」があります。もちろん安く取得はできませんが、サラリーマンにとってマリンスポーツが決して手の届かないものではなかったことがうかがえます。


↑発売日前日に、当のビートたけしとたけし軍団がフライデー襲撃事件を起こすという逆境にも関わらず80万本も売れたと言われる伝説のゲーム。


↑ウインドサーフィンをモチーフにしたファンシー絵みやげ。左から島根県日御碕、静岡県伊豆半島、山梨県河口湖。ウインドサーフィンに不似合いな湯呑みばかり。

■ 1988年のマリリン

『彼女が水着にきがえたら』(1989年)の影響もあり、80年代末に注目度を上げたマリンスポーツはダイビングでしょう。1988年の動物映画『マリリンに逢いたい』においても、海を泳ぐ犬が主役の映画ながら、かなりスキューバダイビングのシーンが登場します。同じ年に公開されたリュック・ベッソン監督の映画『グラン・ブルー』は、フリーダイビングが題材で国内でも90年代にかけて大きく支持されました。


↑日本での最初の反応はいまいちでしたが、ソフト化されてから徐々に評価されていきました。

■ スキューバダイビングのスキューバとは?

80年代でスキューバといえば、ヒカシュー、プラスチックスとともにテクノ御三家と呼ばれていた、平沢進のプロジェクトであるP-MODELにも1984年に「SCUBA」というアルバムがありました(初リリースは宝島カセットブック)。ジャケットには潜水服を着たダイバーのようなイラストが描かれており、スキューバダイビングを意味していることが分かります。スキューバとはそもそもどういう意味なのでしょうか。



現在ではスクーバと表記されることも多いこの言葉ですが、そもそもは空気ボンベと付属品を含めた潜水器具一式を指します。もともとは第二次世界大戦の際に軍事目的で開発されたものですが、後に改良されアクアラングという商品名となり1950年代ごろ日本に入ってきました。そのため日本ではアクアラングという商品名(社名も同じ)が普通名詞のように定着していますが、本来は潜水器具の名称がスキューバなのです。また、SCUBAは英文の頭文字をつなげた頭字語、いわゆるアクロニムです。

■ マリーナとグランブルーファンシー

マリンスポーツの拠点となるのは、ヨットハーバーに飲食店などが併設されたマリーナと呼ばれる複合施設です。マリーナの売店でもファンシー絵みやげは売られていたのでしょう。マリーナといえばおニャン子クラブ会員番号36番、渡辺満里奈さんの名前の由来であり、1987年には「マリーナの夏」という曲もリリースしました。


↑2017年1月に逗子マリーナを調査した私。夏のような雰囲気ですがこれでも冬。鎌倉で保護した湘南のポーチを手に。

海のファンシー絵みやげはサーフィンモチーフがほとんどで、ダイビングのキャラクターは数えるほどです。サーフィンほど一般的でなかったことと、スキューバでは道具が複雑すぎてデフォルメしづらいことが原因と思われます。ここでダイビングがテーマのファンシー絵みやげを見ていきましょう(キャラクターになっていることも多い海女さんの素潜りはフリーダイビングに含まれますが、今回はレジャーダイビングのキャラのみを紹介します)。


↑東京都八丈島の通行手形。

潜水に許可がいるのでしょうか。そしてこれで許可証になるのでしょうか。女性は手に魚籠のようなものを持っていますが、手形で許可されてないサザエなどを採集する密猟者なのでは!?


↑神奈川県相模湖のダイビングするアヒルのコーヒーマグ。

有識者の皆さまは、ソニークリエイティブプロダクツの「レッツチャット」のキャラクターであるアヒルのパッツィーダックと、ゴーグルをしたペンギンのペンジャミンを混ぜたキャラじゃない!?……と思うでしょう。確かにそのような雰囲気もあります。しかし、それ以上に重要なことがあります。それは、ここまでスキューバをちゃんと描いたキャラクターとして唯一なことです。


↑静岡県は熱海と三島のキーホルダー。

サーフボードを持ったペンギン。右のペンギンはシュノーケルなので、ダイビングと言えます。有識者の皆さまは「ペンギンズ・メモリー 幸福物語」として映画化される、ひこねのりお先生のサントリーCANビールのキャラ・ペンギンファミリー、つまり後のペンギンパラダイスであり今のパピプペンギンズじゃない!?……と思うでしょうが、このタッチのペンギンは非常に多いので気にしていたらキリがないのです。

そして、このようなキーホルダーのシリーズは非常に多いので、この機会にサーフボードのものをいくつか紹介します。


↑信濃路(長野県)と富士急ハイランド、どちらも海がないはずだがサーフボード!?


↑後述する3月11日のトークイベントで配布するオリジナルキーホルダーも、なぜか海と無縁のゴリラがサーフボードを持っています。


↑福井県若狭湾。とうもろこしがサーフボードに乗って……ない。ただ上にいる。もはやどう関係があるのか謎。

このように、海があろうがなかろうがサーフボードを持たせるという自由な発想こそがファンシー絵みやげの特徴であり魅力なのです。そして、バブル景気とホイチョイ映画をもってしてもお金のかかるマリンスポーツは大きなブームにならず、より手軽に楽しめるサーフィンが人気だったことが分かりました。次回はさらにサーフィンのアイテムを紹介しようと思います。

■ 保護のお願い

私は全国の観光地で保護活動を行っていますが、現地から消滅したファンシー絵みやげについては、皆様の家に残されたものが頼りです。もしご実家などの学習机の引き出しの中に眠っているものなどが見つかりましたら、是非ともご一報ください。ハッシュタグ #ファンシー絵みやげ での報告も待ってます。

では、私は『彼女が水着にきがえたら』の放映があるので水着にきがえますね。



↑着がえました。このように蛍光サイケ柄の海パン流行してましたよね?


↑マッスルポーズをとってみました。観光地では両手に重い紙袋4袋ずつ運ぶといったケースもあり、知らないうちに筋肉がついててびっくりしました。保護活動は結果にコミットする。



では、まだまだ寒いですが放映に向けて待機しますね。

(文と写真:山下メロ“院長”)

《イベントのお知らせ》
3月11日(土)の昼に新宿ネイキッドロフトでファンシー絵みやげのトークイベントを行います。こちらではファンシー絵みやげの鑑定コーナーもありますので、是非こちらに持ってきてくださいませ。もちろん手ぶらでも大丈夫です。

「ファンシー絵みやげ登校日 PART2」



3月11日(土) OPEN 12:00 / START 13:00 @新宿ネイキッドロフト
前売¥1500 / 当日¥2000(共に限定キーホルダー付、飲食代別)
※要1オーダー¥500以上     


《関連コラム》

・「見たことある!」ファンシー絵みやげで振り返るスキーブーム(連載 第一回)



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