『とと姉ちゃん』でも注目!戦前・戦後の美少女オシャレファッションまとめ

2016/6/23 14:48 星子 星子



みなさんは連続テレビ小説『とと姉ちゃん』(NHK)をご覧になっていますか? いよいよ戦争に突入しそうな不穏な時代背景で、質素倹約が叫ばれ始めましたが、戦前や戦後のファッションが、意外にかわいくて驚いた方も多いのではないでしょうか? とと姉ちゃんが持っている、木の取っ手の布製カバンや、丸襟のブラウスなどはいつもキュートです。奇しくも、最近は、50年代、60年代の古着ブームで、前回の 「60年代ワンピブーム到来?「ビートルズ」&「ストーンズ」彼女達の着こなしまとめ」 では英国60年代乙女のファッションをご紹介しました。そこで今回は、日本の第二次世界大戦前と後の、清楚でかわいいファッションを写真とともにご紹介します。

まずは、天才子役スター出身の女優……日本のシャーリー・テンプルとも呼ばれ、“デコ ちゃん”の愛称で親しまれた高峰秀子の昭和14年のお姿。フリルのついた襟の爽やかなストライプワンピースに、襟が膨らんだ紺のジャケットを羽織って。ウエストを紺のリボンでシェイプしたり、同じく紺のサロペットワンピを重ねたり、着まわしの工夫も紹介しており、当時の少女たちが参考にしたことが伺えます。



同じく、高峰秀子のセーラー服と帽子。今ではあまり、学校の制服に帽子を被ることはしないので、かえって新鮮ですね。いわゆる学生鞄ではないチェックのカバンもキュートです。



華族の家柄出身の女優、久我美子もセーラー服に帽子をあわせています。当時はセーラー服に帽子をかぶることが流行していたのでしょうか? よく考えれば、帽子というのは本来日焼けを避けるためのもので、制服姿で被っても、怒られる謂れは無さそうですね。

しかも、本来イギリス海軍水兵の軍服だったセーラー服に白い帽子は意外なほどに似合っています。現役女子高生が何人『いまトピ』読んでくれているかは疑問ですが、もしレトロファッションに興味があって、学校の制服がセーラー服の方がいらっしゃったら、真似してみてはいかがでしょう? 思いのほか清楚で斬新なかわいい姿になれそうです。もし先生に注意されたら「日差しが強いので行き帰りにかぶる様にと祖母に言われました……」と言えば、なんとかなりそうな気もします。



右から淡島千景、津島恵子、藤田恭子、水原真知子、岸恵子と超豪華な顔ぶれの水着姿。若い女性のビキニ姿も良いものですが、こういった、露出の少ない水着でも、ボディラインはしっかり出るので若くスタイルの良いことは充分に伝わります。かえって“隠すSEXYさ”も感じられるので、リバイバルで流行する日も来るかもしれません。よく水着になる方は、たまにはこういった趣向もアリではないでしょうか?



宝塚歌劇団出身で在籍時は娘役スターとして活躍した、正統派美人女優の淡島千景は、片方の肩を出したワンショルダードレス姿です。透ける素材の羽織りものも美しく、天女のようですね。



永遠の処女と呼ばれる伝説の女優原節子のおちゃめな一面が垣間見える一枚も。今年流行している、ワイドなガウチョパンツやスカンツのようなボトムがオシャレです。



黎明期から日本映画界を支えたスター女優、田中絹代のブロマイドも。レースを丸くあしらった白いブラウスにワンピースを重ね着した可愛らしい姿。1909年生まれということを考えると、戦前のものと思われます。



スラリとしたプロポーションで戦前の銀幕を彩った桑野通子は、モデル並のスタイルを生かした上級者向け洋装。なんと、ドラゴン柄のブラウスをお召しです。美人にしか似合わないアバンギャルドな迫力の着こなし。斜めにかぶった帽子が粋ないい女っぷりです。



こちらはやはり宝塚出身で、岡田茉莉子と共に、松竹の二枚看板として活躍した有馬稲子。美人なのに親しみやすい愛らしい笑顔が魅力的ですね。トレンチコートにあわせたベレー帽がかっこいいです。やはり斜めにかぶるのがトレンドのようです。



現代でも清潔感溢れるベテラン女優として活躍中の八千草薫は、レディらしい可憐な着こなし。ベロアのワンピースの、バレリーナ的なふんわり感が、百合の花のような容姿にとてもよく似合っています。



前述の有馬稲子と、松竹の二枚看板だった女優・岡田茉莉子。花柄の清楚でシンプルなワンピースに、紫陽花のような髪飾りがまるで、絵本に出てくる花の妖精のようですね。



こちらは、弁護士で元自由民主党衆議院議員の相澤英之の妻で、歌手・タレントの相田翔子の義理の母としても有名な、クール・ビューティー女優・司葉子。真っ赤なコートの襟元とボタンのオシャレさもさることながら、大きな丸いシルバーのイヤリングとともに、「たばこは動くアクセサリー」という標語で、煙草すらオシャレアイテムに変えてしまう女っぷりに脱帽です。嫌煙ムードが強い今では考えられない標語ですが、昭和らしいノスタルジーを感じます。



下記は、冒頭の画像でも使用しました、戦前・戦中の「会いに行けるアイドル」、ムーランルージュ新宿座の人気スタア、明日待子と姫宮接子と思われる写真です。左の明日待子は袖の膨らんだチェックのブラウスにロングスカートに帽子が少女らしく、少し遠く服の詳細は見えませんが右の姫宮接子は、バッテンの形のステッチが入ったデザインのスカートを履いているように見えます。



戦前にワールドワイドに活躍した天才美少女バイオリニスト、諏訪根自子は、セーラー服姿が印象的ですが、珍しく正装をした私服写真も残されています。たっぷりとドレープの入ったカシュクールワンピースがSEXYでエレガントです。ドイツの軍服姿の美青年に囲まれても、臆するどころか女王然として見える女性が、当時の日本に存在したことに驚かされます。



下記の動画は、この美女コラムシリーズでも何度か取り上げている、浅丘ルリ子の14歳当時の映画『緑はるかに』のものです。1955年と終戦から10年しか経過していないにも関わらず、美しいカラー映像で、キュートなピンクのワンピース姿が楽しめます。白く丸い襟のそばにあしらわれた小さない2つのリボンといい、スカート丈からワンピースのラインまで、美少女にピッタリの愛らしさの塊のようなデザインです。動物役の子役たちのカラフルな衣装も目に楽しい映像です。




戦前や戦後のファッションにあまり興味がないと、モガやモボ・フラッパーや派手なお化粧の水商売系などの特殊な人々を除いては、婦人服は大正時代の着物や女学生の袴姿から、デザイン性のあまりない素朴なブラウスとスカートや割烹着の時代になり、戦時中のモンペ時代を経て、また戦後の貧しい質素な服装を通って、50年代後半や60年代に入って急に自由な洋装が広まったような印象を持ってしまいがちです。そんな時に、戦前・戦後の少女たちの洋装写真を見ると、仕立ての良い工夫を凝らした可愛らしいものが数多くあったことがうかがえますね。

中原淳一が昭和21年8月に第1号を発刊した女性雑誌『それいゆ』も、最近のレトロブームにのっとって、復刻版が出版されています。もしご購入された方がに当時を知る祖母がいたら、一緒に眺めても楽しめそうですね。最近では、中原淳一をイメージしたインターネットショップも存在するようです。



以下は、『それいゆ』復刻版の冒頭のページからの引用です。

<野菜の食べ方、肺病に効くお灸といったようなものは、この「ソレイユ」の編集方針ではない。私たちの周囲はあまりにすべてが美しくない。今できること、今着られる服だけをのせていたら、この「ソレイユ」の存在価値はない。こんな本はくだらないと言われるかもしれない。お腹のすいている犬に薔薇の花が何の食欲もそそらないように。しかし私たちは人間である!!窓辺に一輪の花を飾るような心で、この「ソレイユ」を見ていただきたい。(第一号 昭和21年8月)>

『とと姉ちゃん』で、常子が出版社に就職し、時代の流れに反して、「人々を楽しませる」特集を練っていたシーンにも通ずる編集方針ですね。『それいゆ』のページを捲ると、中原淳一の美しいイラストや、当時のスタアの特集とともに、今でも充分参考になる「美しい暮らしのヒント」や「季節ごとの装い、色彩の合わせ方」など、目に楽しい企画が満載です。




多種多様な服が安価であふれる現代には無い、気合の入った趣向を凝らした戦前・戦後のファッションにご興味がおありの方は、当時の少女スタアの画像を検索したり、『それいゆ』を含めレトロファッションを見ることができる書籍や、当時の映画などに目を通してみてはいかがでしょうか? 


■参考
※ 中原淳一のそれいゆ - 平凡社
※ 君美わしく(川本 三郎) - 文藝春秋

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(星野小春)