日本人俳優もオスカーを狙える時代が来た!狙えそうなのはアノ俳優?ミシェル・ヨーとキー・ホイ・クァンが受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で起こした快挙で

2023/3/17 17:00 龍女 龍女

授賞式は5年ぶりに1人の司会によって進行される構成になった。
司会の無い式が2年続き、昨年は女性の司会者3人と異例のケースが続いた。
今年は、授賞式を中継しているアメリカ3大ネットワークの1つABCの夜の番組『ジミー・キンメル・ライブ!』の司会である
ジミー・キンメル(1967年11月13日生れ)が務めた。
作品賞にもノミネートされた『トップガン マーヴェリック』にちなんで、戦闘機から、パラシュートで降りてくるという登場で式が始まった。
久々に司会者が候補作や候補にならなかった作品や人を取り上げるおしゃべりがあった。
ジミー・キンメルは、あえて話を長くして、インド映画『RRR』のダンサーが彼を巻き込んで連れて行くオチになっていた。


俳優賞の部門は2番目に発表された助演から始まった。
昨年の受賞者のアリアナ・デボーズトロイ・コッツァーの二人が登場した。
これまでは助演男優と女優賞は別々に発表していた。
助演俳優賞をまとめて発表する構成は確かに、放送時間を短縮するための演出なのだろう。
助演男優賞のプレゼンターのアリアナ・デボーズは
「オスカー・ゴーズ・トゥ、キー・ホイ・クァン!」
と涙声で言った。


(助演男優賞を受賞したキー・ホイ・クァン イラストby龍女)

「私の長旅は、小さな船の上からスタートしました。何年も難民キャンプで過ごして、育ちました」
「この光景は、映画の中でしか起こらないと思っていた。私の身に起きているなんて、信じられない。これが、アメリカンドリームだ」
「(中略)夢は信じるものです。私は諦めかけていました」
「皆さん、どうか夢を持ち続けてください。ありがとう。私が映画界に戻るのを受け入れてくれて、皆さん本当にありがとう」

続けて、発表されたのが、助演女優賞で
「オスカー・ゴーズ・トゥ、ジェイミー・リー・カーティス!」


(助演女優賞を受賞したジェイミー・リー・カーティス イラストby龍女)

「さあ拍手は終わり。45秒しかないし、お行儀よくするって(映画芸術科学アカデミー会長の)ジャネット・ヤンに約束しちゃったから」
「私はここにひとりで立っているように見えると思いますが、実はそうではありません、私は何百人もの人間なのです。そう、何百人もの人々と一緒にここにいるのです」
「ダニエルズはどこにいるの? ダニエルズに、ジョナサン、クルーのみんな、ミシェル、キー、ステファニー、この映画をつくり上げたすべてのアーティストたち。みんなでこのオスカーをとったのよ。(エージェント、家族への謝辞を中略)。そして、何年もの間、私が出演したジャンル映画を支えてくれた何千、何十万人もの人たち、私たちはいま、一緒にオスカーを受賞したのです!」
「私の父(トニー・カーティス)と母(ジャネット・リー)はそれぞれ異なる部門でアカデミー賞にノミネートされました。そしていま、私はオスカーを手にしました!!」

ジェイミー・リー・カーティスは、ホラー映画『ハロウィン』シリーズのヒロインからキャリアを始めて、『大逆転』(1983)『ワンダとダイヤと優しい奴ら』(1988)などのコメディなどジャンル映画で活躍してきた。
筆者が印象的だった彼女の主演作は、警官に扮したアクション映画『ブルースチール』(1990)である。
『ハートロッカー』(2008)で初めて女性で監督賞を取ったキャスリン・ビグローの初期作品である。

授賞式の後半、最後の作品賞が発表される前に、主演俳優部門のプレゼンターが登場した。
昨年の主演男優賞のウィル・スミスは、クリス・ロックへの平手打ち事件を起こしたために10年間式の出席は出来なくなった。
代理にアフリカ系初の主演女優賞受賞者のハリー・ベリーだった。
昨年の主演女優賞の受賞者ジェシカ・チャスティンと一緒に登場した。

「オスカー・ゴーズ・トゥ、ブレンダン・フレーザー!」


(主演男優賞を受賞したブレンダン・フレーザー イラストby龍女)

「これがマルチバースというものでしょうか。なんてことでしょう。この栄誉を授けてくれたアカデミーと、大胆な映画を作りあげてくれたA24に感謝します」
「ダーレン・アロノフスキー監督にも感謝を。私にクリエイティブな命綱をつけ、『ザ・ホエール』という船に乗せてくれました。この物語を書いたサミュエル・D・ハンターは私たちの灯台でした」
「(候補者の)みなさんは、鯨のような大きな心を曝け出し、魂の内面を見せてくれましたが、それは誰もができることではありません。この部門で皆さんと一緒に自分の名前が並んだことを光栄に思います」
「鯨(タイトルの『ザ・ホエール』にかけて)が深い水の中でここまで泳げたのは、(共演者の)才能あふれるホン・チャウのおかげです」
「30年前にこの仕事を始め、物事は順調だったわけではなく、仕事がなくなるまで感謝に欠けていました。だから、このように認められたことに、心から感謝しています。共演者たちがいなければ成し遂げられませんでした」
「まるで私は海底探査をしているようで、水面に向かう気泡を眺めているようでした。愛する息子たちに。マネージャー、すべての皆さんに心から感謝します。よい夜を」
『ハムナプトラ』シリーズなどの主役を張ってきた。2010年代はハラスメントの被害の影響で、心身の不調で仕事が減っていたのを踏まえてのスピーチだった。

俳優部門の最後はいよいよ主演女優賞である。
「オスカー・ゴーズ・トゥ、ミシェル・ヨー!」


(主演女優賞を受賞したミシェル・ヨー イラストby龍女)

「今夜この式を見ている私と同じような少年少女の皆さん、これは希望と可能性の光です。大きな夢を見れば、夢は叶うという証明です」
「そして女性の皆さん、『あなたの全盛期はもう過ぎた』などと誰にも言わせないでください。決してあきらめることはないのです」
「ダニエルズ、素晴らしいキャストとクルー、そして「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」に携わったすべての人たちのおかげで、今夜ここに立つことができました。この賞を私の母と世界中の母親たちに捧げます。彼女たちこそがスーパーヒーローであり、彼女たちがいなければ、私たちは誰ひとりとして今夜ここにいなかったでしょう」
「いまマレーシアで家族や友人と式を見てくれている母のもとにこの賞を贈ります。そして私がキャリアをスタートさせた香港にいる親戚にも。あなたたちの後押しがあったからこそ、今日ここに立つことができました。私の名付け子、きょうだい、家族、ありがとう」
「アカデミーの皆さん、ありがとうございます。これは歴史的な出来事です!」

この映画はマルチバースで様々な職業の女性を演じたミシェル・ヨーのキャリアの集大成のようなものだった。



キー・ホイ・クァンは、アジア系の男性の助演男優賞受賞者としては、『キリング・フィールド』のハイン・S・ニョール(1940~1996)以来、38年ぶり。
ミシェル・ヨーはアジア系女性としては、初の主演女優賞受賞者となった。

筆者はこれを観て、もし日本人俳優にふさわしいハリウッド映画が企画されたら、オスカーを取れる機会が増えるかもしれないと想像した。
個人的には、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で娘のジョイを演じたステファニー・シュー井上真央に似ていると思ったので、姉妹役を演じて欲しい。
俳優をする前はアメリカのブラウン大学とコロンビア大学院中退の学歴を持っている
平岳大はハリウッド映画『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(2021)や、木村拓哉が出演したHulu独占配信ドラマ『THE SWARM』に出ているので、年齢はいっているが大きな役への起用も期待できる。
例えば、英語が出来る俳優として、筆者がすぐに思い浮かぶのは、鈴木亮平だが、まだハリウッドには進出していない。
また、若い頃にミシェル・ヨーと『皇家戦士』(1986)で共演し、『ラストサムライ』(2003)で本格的にハリウッドへ進出した真田広之にも何か良い役がめぐってきて欲しい。


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