もう一度歩いてみたい海外のあの街角へ

2022/3/29 19:25 yamasan yamasan

こんにちは、いまトピアート部のyamasanです。

今年(2022年)は日中国交正常化50周年にあたる節目の年。
この機会に久しぶりに中国旅行を、と言いたいところですが、まだまだ安心して海外に行かれるような状況ではないので、今回のコラムではおうちで中国への旅に思いをはせてみたいと思います。

東京から中国江南地方へひとっ飛び!


旅の出発点は、いつ来ても中国の博物館に来たような気分になってほっとできる場所、東京国立博物館東洋館(アジアギャラリー)4階の8室「中国書画」の部屋。

東京国立博物館東洋館(アジアギャラリー)4階8室展示風景
展示情報はこちらでご確認ください⇒東京国立博物館公式サイト

そして、今回ご紹介する作品は、中国・元代の書家、文人画家 趙孟頫(1254-1322)の《楷書玄妙観重脩三門記巻》


趙孟頫《楷書玄妙観重脩三門記巻》(東京国立博物館蔵)

長さ約3.4mもの巻物で、冒頭に篆書で「玄妙観重脩三門記」の文字が書かれているこの作品は、毎年、年初に開催されている東京国立博物館と台東区立書道博物館の連携企画第19弾、特集「没後500年 趙孟頫とその時代-復古と伝承-」(2022年1月2日~2月27日)で展示されていました。

今年の連携企画は終了しましたが、過去にも展示されたことがあるので、特長のある字体をご覧になって印象に残った方もいらっしゃるのでは(写真は2017年に撮影したものです)。

タイトルにある玄妙観とは、中国・江南地方の蘇州市にある道教寺院の名称で、「観」とは道教寺院のこと。
それではこの作品を手がかりにさっそく蘇州に飛んでみることにしたいと思います。

玄妙観の前の通りは観前街と呼ばれていて、今では新しい店が並ぶオシャレなショッピングストリートになっています。

早朝の観前街



観前街をしばらく歩いていくと「玄妙観」と額のかかった正山門が見えてきます。


もとは3世紀に創建され、元の時代に「玄妙観」と改名されたときに三門(正山門)が修理され、その際に建てられた記念碑の碑文の肉筆原稿が、さきほどご紹介した趙孟頫の《楷書玄妙観重脩三門記巻》なのです。

広い敷地内の伽藍の中でもひときわ大きい建物が三清殿。
こちらが玄妙観の主殿です。




蘇州は紀元前から政治の中心だった!


揚子江流域で水上交通に恵まれた蘇州は、古くから政治や経済、文化の中心都市でした。
春秋時代(前8世紀~前5世紀)に呉と越の軍がにらみ合ったのもこの蘇州。
(呉といっても、紀元後3世紀の三国志の呉ではなく、そのはるか昔、「呉越同舟」で知られた方の呉です。)

こちらはかつて8つあった城門のうち唯一現存している盤門
威風堂々としたこの城門は1300年代に再建されたものです。



門の横には「呉」の文字が入った黄色い旗がはためいていました。

そして、越王との戦いに敗れた呉王、闔閭(こうりょ)が葬られているのが遠くに見える虎丘で、そこにそびえているのが宋代創建の雲厳寺塔。



この位置からではよくわからないかもしれませんが、実はこの雲厳寺塔は地盤沈下で東北に3度傾いているので、「東洋の斜塔」として知られているのです。

蘇州市内には多く運河が走り、その豊かな水を利用して池を配置した庭園が多く造られました。
今でも保存公開されている庭園もあって、中でも特にも観光客に人気が高いのが藕園(ぐうえん)。

ここはもともと清朝初期に皇帝の庭園として造られたのもので、その後、地元の名士の手に渡り、現在では蘇州市の管理下に置かれて一般にも開放されるようになりました。
現在では蘇州市内の他の庭園とあわせて蘇州古典園林として世界遺産に登録されています。



広い園内は、見どころが多いので時間をかけてじっくり回りたいです。
室内の豪華な調度品も主(あるじ)が住んでいた時のように並べられています。




水の浸食で穴が開いているのが特徴で、蘇州と同じ江蘇省にある無錫郊外の太湖からとれる立派な太湖石が中庭にでんっと置かれています。




蘇州の夜はこんなにロマンチック!


蘇州の中で古い街並みの趣きが残されているのが、運河沿いにある平江路歴史街区
古い建物を改装したグルメやショップが軒を連ねていて、夜ともなると若者たちが繰り出して賑わう観光スポットです。




運河と店の明かりのハーモニーが幻想的な雰囲気を盛り上げています。



アメリカ発の有名コーヒーチェーン店「星巴克珈琲」もすっかり街の中に溶け込んでいます。



そして、こちらはまるで清の時代にタイムスリップしたような雰囲気が漂う中華料理店。
店の前に立つ店員さんたちは清時代の服装を着ていて、頭は辮髪にしているようでした。思わず入ってみたくなるような店のたたずまいです。




もう一度行ってみたい海外の街は数多くあるのですが、この平江路をはじめ見どころいっぱいの蘇州は、気軽に海外に行かれるようになったら真っ先に行ってみたい街の一つです。

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