カーニバルの不気味な仮面がお気に入り?ジェームズ・アンソールの魅力を広めたい
ジェームズ・アンソールの絵画が好きです。
ジェームズ・アンソール《The Strange Masks》1892年 ベルギー王立美術館
白い壁に白い床で明るい部屋の中に、赤、青、黄色と鮮やかな衣装をまとった人物が6人。1人は寝そべり、残りは立って横に並び、まるでアイドルグループのCDジャケットのようなポーズです。
そんな楽しい雰囲気をぶち壊しているのが、彼らがつけている仮面。目の部分の穴は黒い空洞で、奥にある瞳は何を映しているのかわかりません。
全体としては明るい色彩なので、幸福感があっても良いくらいなのに、不気味な仮面というたったひとつのアイテムが、絵画の印象を危ういものに変えてしまっています。ヤバいことが起こる直前みたいな雰囲気。日常にふと魔が差した感じ。羊の群れの中で、一匹の白い狼が息をひそめているような緊張感。
ジェームズ・アンソール《人騒がせな仮面》1883年 ベルギー王立美術館
アンソールは、1860年生まれのベルギーの画家です。ユーロ導入前、ベルギーの紙幣にお顔が印刷されていたこともあり、地元では知らない人はいないくらいの有名人。日本のお札でたとえると、新渡戸稲造あたりの知名度だと思います。
出身がオーステンデというリゾート地で、両親がお土産屋さんを営んでおり、民芸品を売っていたそうですよ。その中にはカーニバルの仮面もあり、これがアンソールの作風につながりました。
ジェームズ・アンソール《キリストのブリュッセル入城》1888年 J・ポール・ゲティ美術館
美術アカデミーに3年間通ったのと、短期間の旅行を除けば、彼は亡くなるまで実家を出ませんでした。子供部屋おじさんのパイオニアかもしれない。屋根裏をアトリエとして使っていたそうです。
美術の中心地であったパリにも特に関心を示さず、地元の画家に学ぶなどしながら、アンソールは我が道を歩いていきました。そのためでしょうか、彼の作風は、他の巨匠の誰にも似ていないんです。
ジェームズ・アンソール《The Bad Doctors》1892年 ベルギー王立美術館
斬新すぎて大批判を喰らいながらも、絵を描いて展示し続けたアンソール。徐々に周りが理解し始め、彼が70歳の頃には男爵の爵位を、80代になるとレジオンドヌール勲章を授与されました。100フラン紙幣の肖像にも使っちゃうのだから、世間はすごい手のひら返しです。
今回、なんでアンソールを紹介しようと思ったのかというと、ハロウィンの雰囲気に通じるものを感じたからです。ハロウィンって、オバケとか魔女とかが突然訪ねてきて、「菓子をくれないと悪さをするぞ」と脅迫する祭ですよね。アンソールの絵と同じで、ヤバいことが起こる直前の雰囲気がプンプンします。
ジェームズ・アンソール《キャベツのある静物》1921年 クレラー゠ミュラー美術館蔵
東京都美術館で2021年12月12日まで開催される『ゴッホ展――響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』には、アンソールの絵画《キャベツのある静物》が展示されています。アンソールの作品が来日する機会は少ないので、ゴッホ展ですけど、私はアンソールを強めに推しています。(国内だと、国立西洋美術館やメナード美術館が少し所蔵)
それにしても、テーブルの上の野菜は良いとして、左上の人は何なんだ……仮面はつけていなさそうですが、カーテンの間から顔を出して野菜を見ており、非常に不気味です。色彩の明るさといい、不気味なモチーフを足してしまうところといい、アンソールらしい作品です。
ジェームズ・アンソール《The Strange Masks》1892年 ベルギー王立美術館
白い壁に白い床で明るい部屋の中に、赤、青、黄色と鮮やかな衣装をまとった人物が6人。1人は寝そべり、残りは立って横に並び、まるでアイドルグループのCDジャケットのようなポーズです。
そんな楽しい雰囲気をぶち壊しているのが、彼らがつけている仮面。目の部分の穴は黒い空洞で、奥にある瞳は何を映しているのかわかりません。
全体としては明るい色彩なので、幸福感があっても良いくらいなのに、不気味な仮面というたったひとつのアイテムが、絵画の印象を危ういものに変えてしまっています。ヤバいことが起こる直前みたいな雰囲気。日常にふと魔が差した感じ。羊の群れの中で、一匹の白い狼が息をひそめているような緊張感。
ジェームズ・アンソール《人騒がせな仮面》1883年 ベルギー王立美術館
アンソールは、1860年生まれのベルギーの画家です。ユーロ導入前、ベルギーの紙幣にお顔が印刷されていたこともあり、地元では知らない人はいないくらいの有名人。日本のお札でたとえると、新渡戸稲造あたりの知名度だと思います。
出身がオーステンデというリゾート地で、両親がお土産屋さんを営んでおり、民芸品を売っていたそうですよ。その中にはカーニバルの仮面もあり、これがアンソールの作風につながりました。
ジェームズ・アンソール《キリストのブリュッセル入城》1888年 J・ポール・ゲティ美術館
美術アカデミーに3年間通ったのと、短期間の旅行を除けば、彼は亡くなるまで実家を出ませんでした。子供部屋おじさんのパイオニアかもしれない。屋根裏をアトリエとして使っていたそうです。
美術の中心地であったパリにも特に関心を示さず、地元の画家に学ぶなどしながら、アンソールは我が道を歩いていきました。そのためでしょうか、彼の作風は、他の巨匠の誰にも似ていないんです。
ジェームズ・アンソール《The Bad Doctors》1892年 ベルギー王立美術館
斬新すぎて大批判を喰らいながらも、絵を描いて展示し続けたアンソール。徐々に周りが理解し始め、彼が70歳の頃には男爵の爵位を、80代になるとレジオンドヌール勲章を授与されました。100フラン紙幣の肖像にも使っちゃうのだから、世間はすごい手のひら返しです。
今回、なんでアンソールを紹介しようと思ったのかというと、ハロウィンの雰囲気に通じるものを感じたからです。ハロウィンって、オバケとか魔女とかが突然訪ねてきて、「菓子をくれないと悪さをするぞ」と脅迫する祭ですよね。アンソールの絵と同じで、ヤバいことが起こる直前の雰囲気がプンプンします。
ジェームズ・アンソール《キャベツのある静物》1921年 クレラー゠ミュラー美術館蔵
東京都美術館で2021年12月12日まで開催される『ゴッホ展――響きあう魂 ヘレーネとフィンセント』には、アンソールの絵画《キャベツのある静物》が展示されています。アンソールの作品が来日する機会は少ないので、ゴッホ展ですけど、私はアンソールを強めに推しています。(国内だと、国立西洋美術館やメナード美術館が少し所蔵)
それにしても、テーブルの上の野菜は良いとして、左上の人は何なんだ……仮面はつけていなさそうですが、カーテンの間から顔を出して野菜を見ており、非常に不気味です。色彩の明るさといい、不気味なモチーフを足してしまうところといい、アンソールらしい作品です。