【約80年前】昭和10年頃の朝の出勤準備などを映した貴重映像

2016/12/12 20:56 服部淳 服部淳



どうも服部です。昭和の動画を紐解いていくシリーズ、今回はYouTubeに投稿されている、元タイトルが「DAS LAND DER KIRSCHBLÜTE(桜の国=ドイツ語)」というドイツの映像をピックアップしました。
※映像はページ下部にあります。


こちらの女性の目覚めから始まります。ナレーションはなく、BGMには歌手の音丸さんが歌う「船頭可愛いや」が使われています。1935年(昭和10年)の大ヒット曲とのことで、BGMが最初から挿入されていたものなら、その頃の映像と考えられます。


説明はないですが、映像の順番から先程の女性のお子さんたちでしょうか。


鮮明には見えませんが、障子の手前のレースのカーテンのようなものを開けています。


壁にぶら下がっているのは、歯ブラシです。ナイロンの歯ブラシが世界で初めて発売されたのは1938年(昭和13年)で、この当時は豚毛の歯ブラシが一般的だったようです。


ここで登場する男性は、子供たちのお父さんと思われます。一緒に朝の歯磨き。左の女の子はチューブのねり歯磨きを歯ブラシにつけています。小林富次郎商店(現・ライオン)が日本で初めてチューブ入り歯磨きペーストを販売したのは意外と古く、1911年(明治44年)のことだったそう(参考:ライオンの歴史)。


朝食の準備ができているようで、おばあさんがあとからやって来ます。


出勤の準備ができたお父さんは玄関へ。夫人と女中さん2人でお見送りに出ると、脱帽しながら男性が一人入ってきます。


BGMはいったん止まり、自動車の走行音に代わります。車内は映りませんが、先程玄関に入ってきたのが運転手さんで、お父さんの自動車出勤の場面なのでしょう。企業のお偉いさんですかね。


ここから自動車ではなく、東京市電(後に都電)からの撮影と思われ、チンチンと車内合図音が聞こえてきます。左手奥に見える高い建物は、銀座のシンボル「服部時計店(現・和光)」のようです。


高台から市電などを捉えたカットに、


銀座・三越のようですね。ということは、角度的に服部時計店からの撮影です。


そして、このシリーズ記事でお馴染み、有楽町駅前にあった「日本劇場」です。YouTubeに投稿されているこの映像タイトルは「Life in prewar Japan 1932(1932年、戦前日本の生活=著者訳)」となっていますが、日本劇場が開場するのは1933年(昭和8年)12月なので、それ以降(桜の時期なので1934年以降)に撮影されたものと思われます。


先程のご家庭の夫人ともう一人の女性で百貨店に来たようです。話の流れから、この二人が市電に乗って銀座・三越まで来たということでしょうか。


気に入った反物を見つけ、早速お買上げ。お二人とも、お美しいですね。


場面は変わって、桜が咲き乱れる石灯籠のあるお寺の境内に。


この映像の中でもトップレベルに鮮明な場面です。後には親御さんでしょうか、写生をしていると思われる手が映っています。


京都の祇園祭の様子のようです。桜の季節から7月まで飛んでいます。






お神輿や、山鉾(山車)などを捉えています。








映像の最後は、現在も行われている同じく京都の「春のをどり」を紹介しています。季節はまた春に逆戻りです。



映像が短く編集されたのか、字幕が入っていたのをカットされたのか、全体の流れが今ひとつ分かりにくいですが、1935年(昭和10年)という、今から約80年前の歯磨き習慣など、日常シーンを知ることができる貴重な内容でした。引き続き、歴史の1ページを紐解いていければと思います。

(服部淳@編集ライター、脚本家) ‐ 服部淳の記事一覧

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【動画】「Life in prewar Japan 1932」