Wink、和久井映見、永作博美…【アイドル冬の時代】がなぜ今アツい?

2016/9/14 10:30 DJGB DJGB


夏が終われば秋が来る、ほんとに早いわ。
(「あるOLの青春~A子の場合~」 1990年10月17日リリースのアルバム「古今東西」より。 歌・作詞:森高千里 作編曲:斉藤英男)

こんばんは、バブル時代研究家DJGBです。あこがれているロンドンは当分お預けです。

「おニャン子クラブ以降、モーニング娘。以前」の約10年間の低迷したアイドルシーンを描いた書籍『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』(シンコーミュージックより9月8日発売)が話題です。




ちょうど先日、「冬の時代」出身の元アイドルが話題になりました。先ごろセリーグ優勝を果たした広島東洋カープの緒方孝市監督の奥様は、「桜っ子クラブ」の中條かな子(現・緒方かな子)。彼女のCDデビューは、奇しくも前回広島が優勝した1991年のこと。アイドル時代と変わらぬ美貌にオールドファン感涙です。



AKB48グループに代表されるここ数年の「アイドル戦国時代」からは想像もできませんが、かつて日本では男女問わずアイドルの市場価値が急落した時代がありました。バブル崩壊後の「失われた10年」とも重なるこの時代にも、もちろん多くのアイドルがデビューしていますが、当時の扱いは不遇そのもの。しかしその後の彼ら、彼女らの努力により、近年、この時代を再評価する機運が高まっています。


そこで今日は前述の書籍の著者の一人で、ブログ「昭和TVワンダーランド」著者のチェリーさん(@cherrycreekjp)とともに、この時代をふりかえります。


■永作博美、三浦理恵子、中谷美紀も…「冬の時代」出身のアイドルは逸材ぞろい!

はっきりとした定義はありませんが、「アイドル冬の時代」はおおむね、おニャン子クラブが解散した1987年~モーニング娘。の「LOVEマシーン」が大ヒットする1999年までを指すことが多いようです。特に「ザ・ベストテン」が終了した1989年(昭和64年/平成元年)~90年代中盤ごろまでは景気悪化の影響もあり、アイドルの活躍の場が激減する“厳冬”が続きました。

チェリーさん:
「冬の時代出身のアイドルは、今でも第一線で活躍している人が多いのが特徴。宮沢りえ、永作博美、深津絵里、高岡早紀などなど…み~んなこの時代に歌手デビューしていたんですよ」



そうなんです。
当時から今に至るまで押しも押されもせぬスターとして活躍中の宮沢りえ(1989年CDデビュー。以下同じ)は別格としても、それ以外の方は、歌手だったことすら知られていないのでは?

現在は女優として日本映画界に欠かせない存在の深津絵里(1988年)は当初、歌手の時だけ「高原里絵」という名前を使っていました。この系譜はC.C.ガールズ(歌手の時はD.D.GAPS)、ともさかりえ(同・さかともえり)にも受け継がれます。



同じく女優として大成した永作博美(中央)はすでにribbon(1989年)の中でも“童顔だけど長老”扱いでしたし、




永作とともに美魔女として人気急上昇中のアラフォー、三浦理恵子(1991年にソロデビュー)はCoCoの中でも今と同様のキャットヴォイスで男性ファンを虜にするとともに、女性のイラつきを誘っていました。





高岡早紀(1988年)のハウス・フルーツインゼリーのCM(オンエアは1990年)は今見ても、いや今だからこそ衝撃的。



前述の中條かな子と同じく「桜っ子クラブ」出身の中谷美紀は、ユニット「KEY WEST CLUB」を経て女優へと羽ばたきますが、当時から抜きんでた美貌で、風格すら漂っていました。




緒方監督に続いて野球×「冬の時代」のアイドルと言えば、今季限りの引退を表明した千葉ロッテマリーンズのサブロー選手の妻で、乙女塾出身の清純派、中嶋美智代(のちに中嶋ミチヨ)。



それから広島優勝の立役者でもある石井琢朗・1軍打撃コーチは元CoCoの(ゲフンゲフン)。

いずれ劣らぬ原石たちでしたが、アイドルとしてヒットに恵まれたといえるのはごくわずか。彼女たちの魅力が世間に理解されるまでには月日が必要でした。

が、そのぶん厳選された素材が、歌番組だけでなくドラマやバラエティなどにも進出し、鍛えられていったのもまた事実。先ごろ解散を発表したSMAP(CDデビューは1991年)に代表される男性アイドルも、状況は同じだったのです。


■今だからこそ聴きたい、冬の時代のアイドル、この1曲

長く続いた「アイドル冬の時代」。閉塞感を打破するための暗中模索が続いたからこそ、今から見れば、埋もれていた才能や名曲を再発見する楽しみも残っています。前出のチェリーさんに、「あえて今聴きたい、冬の時代のアイドル」を3組、挙げてもらいました。「冬の時代」初心者は、まずこのあたりからディグってみてはいかがでしょう?


●Wink(1988年4月27日デビュー)

チェリーさん:
やはりWinkは外せないですよね。ひとり勝ちとも言える破竹の活躍を見せたのが彼女たちでした。デビュー曲は洋楽カバーでドラマの主題歌に。が、肝心の歌い手の顔がちっとも見えてこないという。2曲目は良曲ながらも、さらに露出少なくタイアップもなし。普通ならそのままフェイドアウトしてしまいそうなところに「愛が止まらない」という、あの傑作カバーが放たれたのです。

彼女らの見た目は、それまでのアイドルたちと同じようにヒラヒラ衣装を身にまとった従来型。しかし顔に微笑みはなく、いたって無表情という変わりダネ。後日談として、それは余裕の無さから生じていた無意識のものだったと語っていましたが、それが想定外の効果をもたらすことになったのです。旧の良さも取り入れつつ、新しいアプローチ(偶然とは言え)がウケた…それがWinkというアイドルだったように思うのです。アイドル冬の時代を照らし続けた、最大級の灯火でしたよ。



今、聴きたい1曲:「思い出を愛してた」(非売品)

[選曲理由]パナソニックのコンポを購入した人にのみ配布されたCDに収録された楽曲。当時、正規シングルとしての発売はされず。ベスト盤のおまけとしてCD化されたものの、後にも先にも1回きり。以降は諸事情により日の目を見ない作品となる。非売品扱いのため、マニア垂涎か。


●和久井映見(1990年1月1日デビュー)

チェリーさん:
彼女もアイドル活動をしていたの?と驚く方も多いのでは。デビューにあたっては、大々的にプロモーションが組まれ、TVコマーシャルも盛んにオンエア。売り出し手法的には旧態依然の策が用いられていましたが、正月時期の大量スポットだったこともあり、記憶に深く刻まれることに。デビュー日は1990年1月1日という、まさしく時代の変わり目でした。

彼女の落ち着きに満ちた表情は、とてつもない大物感を漂わせていましたよ。しかし、本来の彼女は人前で歌うのが大の苦手だったらしく、歌番組に出演した際はガクガクブルブルと震えが止まらなかったとか。


今、聴きたい1曲:「アキラが可哀相」(1991年7月1日発売)


[選曲理由]モダンジャズテイストで味付けされた作品。おそらくは、中森明菜「Tatoo」あたりを意識して作られた曲と思われる。和久井嬢のクールビューティーなイメージにピッタリ。全国のアキラさん、お待たせいたしました~と言わんばかりで、その名を持つ男子は小躍りしたに違いない。その歌声は、女優としての経験+持って生まれた素質による味わい深さ、そして憂いと翳り、豊かな表現力が最大の魅力。そこに惹かれたリスナーも多かったのか、シングルは13枚、アルバムにいたっては11枚をリリース。歌手を本業とする者が舌を巻くようなディスコグラフィを持つ。


●桜っ子クラブさくら組(1992年11月25日デビュー)

チェリーさん:
本ユニットは、テレビ朝日系列で放映の「桜っ子クラブ」のマスコットガールたち。ジャニーズのSMAPやTOKIOなども出演していたのでお宝級?
メンバーはおニャン子同様にオーディションで選出され、井上晴美、加藤紀子、胡桃沢ひろ子、持田真樹らを輩出。今だからこその白眉は、現在は人気女優になっている中谷美紀や菅野美穂が在籍していたという事実…これでしょ!



あえて今聴きたい1曲:「DO-して」(1993年7月1日発売)

[選曲理由]菅野美穂が「桜っ子クラブさくら組」時代に参加していた「DO-して」。この曲は1993年7月から「クレヨンしんちゃん」のEDとしてオンエア。この頃の中心メンバーは井上晴美や加藤紀子。菅野嬢は端っこの方でチョコチョコ踊っていた程度だったが、この頃から大器としての片鱗は覗かせていた。参加メンバー全員が"アンナミラーズ"のウェイトレスのような格好で唄うのは、コスプレ好きの方にとってはウハウハものかと。


■アイドル時代を「黒歴史にさせないで」

それにしても、↑の動画のテロップで流れる<さくら組のチカン体験談>がまた…。
「女子トイレの上から男の人がのぞいてた(持田)」、「デパートのエレベーターで、ポロシャツを着たハゲにさわられた(菅野)」というコメントをそのまま放映するTV局側も、まだおおらかな時代でした。

「冬の時代」からおよそ四半世紀。月日は流れ、大女優やママタレとして確固たる地位を築いた元アイドルたちも少なくありません。なかには、プロフィールからアイドル時代のことを消し去ってしまう方もチラホラ。大のオトナがアイドルに夢中になっている現在の風潮もいかがなものか、と思う一方で、“あの頃”が【無かったこと】にされてしまうのも寂しいものがあります。「冬の時代」を過ごしてきたのは、ファンも同じなのですから

アーティストや女優さんたちが胸を張って「元アイドルです!」と言える世の中、大歓迎です!

チェリーさんのコラムはこちらでも!
「歌謡曲リミテッド」 

(バブル時代研究家 DJGB)