究極の親子丼! キャビアとチョウザメの親子丼をつくってみた

2016/7/12 14:35 ニノマ ニノマ



親子丼という料理のネーミングセンスはつねづねクレイジーだと思う。



(親子丼。おいしいやつ)

にわとり(親)と卵(子)で親子丼であるわけだが、これを人間に置き換えれば「ピュレ状にした胎児で煮込んだ成人肉乗せごはん」みたいなことになり、ひとたびそんな地獄のような光景を目にしようものならドン引き、つーか人類史上稀に見る猟奇殺人事件として後世に語り継がれていくことは間違いない。



(これに食欲がわく奴とは友達になれない)


とはいえ、にわとりの親子丼はすごくおいしいから困る。とろとろの卵とだし汁、鶏肉が奏でる調和はまさに絶妙で、丼もののなかでも最高峰の完成度といっていいんじゃないか。

しかし考えてみると、にわとりの親子丼を除けば、親子丼は意外とバリエーションが多くない。パッと思いつくのはサーモンといくらの親子丼くらいだ(地方によってはニシンと数の子の親子丼というのもあるらしいけれど)。



(サーモンといくらの親子丼。これもおいしいやつ)


なんかもったいない話だと思う。親と子がいれば親子丼は成立するわけだから、この料理はまだまだ無尽蔵の可能性を秘めているはずだ。

そこで、今回は究極の親子丼を模索してみたいと思う。



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問題は何を食材とするかだ。

哺乳類は使いづらい気がする。というのも、例えば仔牛と大人の牛の肉を一緒に食べても、大きな味の違いはないからだ。料理としてこれはちょっとさみしい。

やはりお互いが持っていない食感や味を補い合う「肉」と「卵」の組み合わせを狙いたい。となると候補は鳥類、魚類、両生類、爬虫類、節足動物(昆虫とかエビとか)などになってくる、……わけだが、選択肢が多すぎて迷うばかりだ。そこで、こいつはどうだろう。



キャビアである。


なにがいいって、キャビアは市販されている「卵」のなかで一番高いことだ。最高ランクのキャビアといわれる「アルマスキャビア」はなんと12グラムで7万円前後。「もっとも金塊に近い価値をもつ食品」なんて呼ばれているそうな。一番高価な食材を使えば究極の料理ができる、なんてグルメ漫画の最初の方で主人公に瞬殺される悪役みたいな発想だが、今回に限ってはわりといい線いっていると思う。

次はキャビア(卵)の親だ。

……あれ、でもそれって確か、



チョウザメか……。


チョウザメってどこにいるんだっけ? ざっと調べてみたらロシアとかイランとかで、日本ではとれないらしい。たしかにスーパーで見かけたことはないし、食った記憶もない。カスピ海まで行くのか……。

などと考えつつ、念のため「チョウザメ 食肉 販売」でググったところ、



普通に売ってるぅ!!!


……便利すぎるだろインターネット。複数のチョウザメ肉販売業者がヒットしたので、適当にひとつ選んで注文した。ちなみに値段は1kgあたり6000~7000円。キャビアに負けず劣らず高価だ。

さて、準備は整った。いよいよ“究極の親子丼”キャビアとチョウザメの親子丼をつくってみたいと思います!


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注文から数日後、



チョウザメ肉、到着。


おお。


硬いウロコに覆われたイカツイ外見とは裏腹に、タイのような綺麗な白身だ。さっそく調理を開始していく。

といっても、



刺し身を切り出して、


ほかほかのごはんの上にのっけて、


(12g7万円のアルマスキャビアはさすがに買えないので通販で買った3500円のやつ。それでも高いけどな!)
キャビアをたっぷりと添えるだけで、



完成。


……、


想像してたよりも100倍いい感じのビジュアルになったな。


ごはんの余熱でチョウザメ肉がほんのり桜色になってめちゃくちゃおいしそう。

実はチョウザメは約3億6000万年前のデボン紀から地球上に存在していた古代魚の一種で、完全に偏見なのだがその肉となるともっとグロテスクな感じなのではないかとびくびくしていた(さらに補足すると、サメという名前がついているけど、あの怖い鮫とは別の種族)。

しかし、肝心なのはもちろん味である。



(めっちゃどきどきする)


最も高価な卵と最も古くから存在する魚の親子丼……、

いただきます!



……。


……。


……あの、

あれだ、



びっくりするくらいおいしいよ???


なんだこれ……。小学生が書いたステマ記事のようなリアクションをとってしまったが、本当においしい。

チョウザメ肉は淡白な味わいだが、しっかりとした歯ごたえでまったく臭みがない。むしろさわやかな香りだ。そして咀嚼するごとにキャビアがぷちぷちと弾けて、溢れだした魚卵特有の塩気と旨味が肉の味わいを補完する。チョウザメだけだとやや物足りなかっただろうし、キャビアだけではくどすぎたはずだ。いやはや、完璧。完璧に調和してますよこれ。

先述の通り、チョウザメの肉には最初からかなり偏見をもっていて、味も「たぶん微妙なんだろうなぁ……」などと思っていた。とりあえずチョウザメに土下座したい。


キャビアとチョウザメの親子丼、完全にアリです!


確かに、にわとりの親子丼よりうまいのか?と聞かれたら、それはもう好みとした言いようがない。だが、にわとり親子丼と並べても遜色がないほど完成度が高い丼ものになったのは確かだ。ぜひ、みなさんも試していただきたい!


一食だいたい3000円するけど(泣)



▼▼▼おまけ▼▼▼


試食するまで絶対微妙な結果になると思っていたので、おいしく食べられる(であろう)アレンジを考えていた。試したところこれはこれで非常にいい具合だったので、レシピを書いておきますね。


まずボールに白ゴマのペーストを大さじ3、


しょうゆ(刺し身醤油がベスト)を大さじ2、


みりんと日本酒(それぞれ小さじ1)をいれて、


チョウザメの切り身を漬け込む(15分程度)


で、ごはんの上にチョウザメ切り身、キャビア、海苔、わさびを並べて、


熱々のかつおダシ(顆粒のやつで十分)をそそぐと、


キャビアとチョウザメの親子丼Ver.2.0の完成。


ゴマダレとかつおダシがふくよかな旨味をプラスして、すんげぇリッチな味わいになります(キャビアなしで、タイとかの白身魚で代用してもめっちゃうまい)

まぁ、問題としては、このどう見ても「チョウザメのゴマダレ茶漬け キャビア添え」が親子丼と呼べるのかということですが。



(ニノマ)