【旨そう】50年前の「暮しの手帖」のグルメページが超充実していた!

2016/1/15 17:08 服部淳 服部淳




昭和40年9月5日発行の81号には、グルメとは少し離れるかもしれませんが、「暮しの手帖」と日本冶金工業などと共同研究で作り上げたという、ステンレスの流し台の使い勝手についてがまとめられていました。台所の木製の引き出しって、なにか懐かしいですね。


もちろん、81号にもレシピページは充実しています。そのうちの一つ、「中国ふうとりのからあげ」ですが、鶏のもも肉ではなく「すね肉」を使ったレシピです。牛のすね肉はよく聞きますが、鶏の「すね肉」とはもも肉の下の部分だそうで、「かたいので普通はろくに料理にも使いません」とのこと。ある種、レア肉の料理ですね。


81号からの最後は、おなじみの比較企画「18円の牛乳と25円の牛乳ではどちらがおいしいか」。30人の被験者を集め、18円から25円までの牛乳4種類を味比べしてもらうのですが、なんと事前に瓶を移し替えてテストをしたのだそうです。たとえば、25円の「ハイゴールド」の瓶に18円のふつうの牛乳が入っているという感じです。

結果は圧倒的にふつうの牛乳の瓶に入った牛乳を美味しいと答えた人が少なかったようですが、その瓶に入っていたのは、2番目に高い23円のゴールドという牛乳でした。当のふつうの牛乳は、そのゴールドの瓶に入っていて、20人が美味しいと答えていました。人間の味覚は当てになりませんね。


昭和40年の最終号となるのは、12月5日発行の82号。冬だけに、冒頭特集では「奥さまおでんをどうぞ」という内容を持ってきています。


東京・新橋にあるとあるおでん屋さんの店内だそうです。この写真には女性が2人(1人はカウンターの一番手前に座る人の影で見えない)しか写っていませんが、その2人とも当雑誌の編集者らしく、当時のおでん屋は女性には縁遠い店だと言っています。


こういったおでん屋で日頃食べ慣れている男にとっては、たまに家庭で出される「おでん」と称されるものは、「おでん」ではなく単なる「煮もの」だと嘆いているのだと言います。では、おでん屋で出される「おでん」と同じようなものを作るにはどうすればよいかというのが、今特集の趣旨のようです。面白い切り口ですね。

以後、「タネよりもおつゆに金をかける」など、おでん作りのノウハウが語られていきます。


82号では、他の号に比べてもグルメページに力を入れているようで、貴重なカラーページを8ページさいて紹介しています。一つ目は「いためごはん」。おいしく作るには、「ひえたご飯」を使うことだと言っています。


2つ目は「中国ふうなべもの」。右から「ひき肉だんごなべ」、「たらなべ」、「豚とかぶのなべ」です。真ん中の「たらなべ」は「塩と酢とコショーで、ちょっと変わった味になっています」と説明しています。


可愛らしい見た目のこちらは、「ちっちゃなカナッペ」。パンをこんがり焼いて小さく切った上に、いろいろな具を載せた料理です。美しく盛り付けるコツは「箱に入っている色鉛筆、あの順にぐるっとならべることです」とのこと。なるほど。


最後は「ピーチパイ」。パイ生地を油で揚げて、缶詰のモモを切って載せるだけ。銀食器に囲まれて、とても美しい見映えとなっています。



読めば読むほど引き込まれていく内容の濃さに、すっかり最近の愛読書となってしまった、この「暮しの手帖」昭和40年版。まだまだ興味深い箇所が山ほどあるので、機会があればまた紹介していきたいです。引き続き、歴史の1ページを紐解いていければと思います。

(服部淳@編集ライター、脚本家)



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