戦国時代を知らないアイドル?「ハウプトハルモニー」って何?

2015/11/27 18:33 小池啓介 小池啓介



Japanische Madchen Ska ep.
「Japanische Madchen Ska ep.」/Kindergarten


今回は“戦国時代を知らないアイドル”というキャッチフレーズを掲げるフレッシュなグループをご紹介します。

本題に入る前に、そもそも戦国時代とは何なのかといいますと――詳細な定義はおいておくとして――2010年以降からのいわゆるアイドル・ブーム、つまりアイドル・グループ(ソロも含め)が乱立していった時期をたとえた表現です。

その戦国時代が“終焉”などといわれたりもし、新たなアイドルの登場もやや落ち着きをみせてきたかに思えた2014年の初夏に、Hauptharmonieというグループがその世界に参入しました。「ハウプトハルモニー」と読みます。

現在活動しているアイドルたちのなかでもかなりの後発組。ブームも落ち着きをみせ、それぞれのアイドルに固定ファンが定着しているのだとすれば、一見不利なようにも思えます。

しかし、後発ゆえに見えるものがある、できることがある。それを全身全霊を使って成し遂げようとしている――僕は、Hauptharmonieとはそんなグループではないかと思っています。
要するに、計算高さと情熱が同居しているわけです。


■そのパフォーマンスが発するのは“無敵”の感覚

あらためまして、Hauptharmonie(ハウプトハルモニー)は、小川花、アイハラエミ、相沢光梨、寺田珠乃の四人組。

キャッチフレーズは「仲睦まじく行儀良く、音楽に遊ぶ“戦国時代を知らないアイドル”」。グループ名はドイツ語です。「haupt」は「主要な」。「harmonie」は「和声」、つまりハーモニーと訳されます。Hauptharmonieとは、意訳するとさまざまな音の主軸となるハーモニーとなり――ここは、アイドル音楽にあって大切なひとつの存在を目指すものだと拡大解釈しておきましょう。

ここまで書いてきてなんなのですが、実は、Hauptharmonieについては一度しかライブを――なおかつイベント(11月14日@心斎橋joule)でしか――観たことがありません。

なのですが、そのたった一度、30分程度の短いあいだに繰り広げられた、スカ、シューゲイザー、ラウド、メロコア、UKロック、北欧感などを飲み込んだカオティックな楽曲をこれでもかと投下する“無敵感”にあふれたパフォーマンスにやられました。なんだこの人たち、めちゃくちゃカッコいい! という思いが何度も何度もこみ上げたものです。格好良すぎて笑ってしまった。
今回は、その時の一瞬の体験で得た感動をおすそ分けさせてください。


■熱過ぎる運営と音楽への強いこだわり

先にも書いたように彼女たちはアイドル・グループとしては後発組ですが、それゆえに“アイドル地図”のなかに誰もいない場所を見つけだし、そこに軸をおこうという明快な活動を展開できています。

その“軸”は、なによりもまず音楽にあります。
運営する人間が、音楽性に非常に強いこだわりを持っている。運営者=プロデューサーは「あーりーしゃん」。TOKYO BOOTLEGという日本語ロックをメインにしたDJイベントを主催する方で、この人がHauptharmonieのキーマンです。

プロデューサーの好む音楽と、アイドル地図にあった空白が幸運な合致をみたことで、Hauptharmonieが生まれたということでしょう。

大きな資本の元に動いているのではない場合、もはや活力になるのは“やる気”くらいのものかもしれません。このグループの運営にはそれがむやみやたらとある。あーりーしゃんのブログなどの発言からわかる通り、良くも悪くも運営者の姿勢が熱い。良い音楽をアイドルを媒介にして届けたいという思いは、ひたすら前のめりです。

一本、結成当初に行われたインタビュー記事をご紹介します。

→ガチ恋!『Hauptharmonie(ハウプトハルモニー)インタビュー 「今、駆け出す女の子たち」』


初期メンバーが今より若干人数が多いのは、アイドル・グループではよくあることです。ちょっと悲しいけれど、気にしない。
このインタビューではグループの目指す音楽の方向性やオマージュの対象が語られています。そこで出てくる名前がなんとL'Arc〜en〜Cielにthe band apartなどなど。バンアパですよ、バンアパ。こういったバンドを引き合いにだすところが最高だと思います。


■観てください、聴いてください

迷いなく目指すところが一貫していること。格好良くいうと音楽的なアティチュードが定まっている――それがHauptharmonieとプロデューサーのタッグに感じられる“無敵感”の正体ではないかと思います。

論より証拠ということで、動画をいくつか挙げましょう。生のライブの迫力には遠く及ばないものの、六割くらいは伝わるかと思います。

まずは去る7月にリリースされた1stアルバム『Hauptharmonie』のトレーラー


続いて本年12月に発売されるニューシングル「Reden ist Silber, Tanzen ist Gold」のMV


最後はライブ映像。結成一周年ライブより「assuage his disappointment」を。



秀逸なトラックもさることながら、ひとりひとりに歌うパートがちゃんと用意されているのもメンバーの個性を引き立たせます。

幅広いオマージュに満ちた楽曲に、メンバーは必死に食らいついている。その必死さゆえか、各人のボーカルにいいしれぬ迫力がある。上にリンクを張ったインタビューで、各メンバーは歌唱面に対する自信のなさを吐露していますが、僕が観たライブではけっしてそんなことはありませんでした。 結成一年と少しで、すでに200回に及ぶライブをこなしているそうですから、彼女たちの成長の早さは急激なものなのでしょう。これからの変化/進化がとても楽しみです。

ともあれファースト・アルバムは、間違いのない名盤。オタクではなくとも必聴です。むしろ趣味は音楽鑑賞という人にこそ、聴いていただきたい。あなたの日常を彩る一枚にぜひ!

(小池啓介)


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