アイドルだけど自作自演?「callme」って誰?

2015/10/17 11:00 小池啓介 小池啓介


今回ご紹介するcallmeは、“セルフプロデュース型ユニット”として2014年12月に結成されたグループです。

タイトル未定(CD+DVD)

はい、そもそもセルフプロデュースってなんでしょう?

いわゆる「アイドル」の定義は無数にあります。
楽曲、振りつけ、衣装などを他者からプロデュース(=制作)してもらい、最善を尽くしてパフォーマンスに変換して表現するという点も、そのひとつに数えられるでしょう。いわば、媒介の役割を果たしているわけですね。ときおり、感情がほとばしって作詞をしたりするアイドルもいないわけではありませんが、あくまでも特例でしょう。

セルフプロデュースとはその反対、自分たちで制作するということです。なかにはアイドルが作詞や作曲をすることに対して否定的な意見もあるようですが、誰からの提供だとかセルフなんちゃらだとか、そんな定義はもうどうだっていいわ――と思わせてくれる。それがcallmeというグループです。

callme(コールミー)はKOUMI、MIMORI、RUUNA の三名によるガールズユニットです。ちなみに、KOUMIは振り付けを、MIMORIは作曲を、RUUNAは作詞(他のふたりも書くことあり)とリーダーをそれぞれ担当し、衣装などのビジュアル面にも本人たちの意見が反映されているとのこと。

その結成のいきさつについては非常に説明しづらいのですが、三人はもともとDorothy Little Happy(ドロシー・リトル・ハッピー。以下ドロシー)という仙台を拠点に活動する五人組グループのメンバーでした。

callmeはそのうちの三人が“修行”という名目で組んだユニットなのですが、その後、三人はグループを卒業し本格的に単独活動を開始しています。 かんたんにいえば、アイドルグループの派生ユニットだったはずが分離して単独ユニットになってしまったということで、そのくらいcallmeにかける思いが強くなってしまったということなのでしょう。


■いいものはいいんじゃないか?

しかし、卒業までにはいろいろあったようです。ドロシー五人での最後のライブにおけるアンコールでのすったもんだを会場最前列で目撃した(ドロシー最強説を唱えていた)僕は、危うくcallmeアンチになりかけていました。

そんな抵抗のあった僕と、多分いたであろう少なからぬ同じ気分のオタクからアンチ心理を拭い去ったのは、音楽とパフォーマンスの力にほかなりません。 僕の場合、2015年夏のTIFでのステージを偶然目にしたことで、一瞬でころりとやられました。本当にかんたんでした。いいものはいいんだと頭をぶん殴られた気がしましたね。
まずはデビュー曲「To shine」を。



懐かしさを感じさせるエレポップと耳触りのいいメロディは、聴く人をとにかく気持ちよくさせることを目的につくられているに違いありません。どこかPerfumeを思わせてしまうところは単に同じ三人組だからでしょう。

近年のアイドル楽曲が陥ることの多い“ギミック”入れすぎ状態には陥っておらず、ポップソングとして素直なつくりをしているところにも好感がもてます。 もやもやした気分が抜けないオタクよりも、むしろ何も知らない方にこそ聴いてほしい。


■一見さんいらっしゃい

音の面もそうですが、callmeの現段階での特徴は、とにかく入りやすいことではないかと思います。ライブの場では、オタクのがなり声による“コール”などもさほど多くありません。はじめてその場に足を運んでも、わりとすんなりと溶け込めます。
動画をもうひとつ。



このライブ映像を見るとわかるのですが、振り付けは、自分たちを魅せるパートと会場全体を巻き込むパートにくっきりとわかれ、これもオタク、もといお客に優しいかたちをしています(なかには全部踊るつわものもいて、それもアイドルのライブならではのおもしろさなのですが)。

加えて、実は強烈なキャラクターをもっているのも彼女たちの持ち味。MCで発揮されるリーダーRUUNAによる鉄板の大食いネタ(450gのステーキをたいらげる)やMIMORIの小悪魔のようなちょっかい出しなどは一種の芸風として成立しており、ある意味でベテランの“おもてなし”になっています。

自分たちを見せるのが巧み。最強(僕がいってるだけですが)のアイドルグループでの経歴は伊達ではありません。楽曲、振り付け、キャラクター――どれもが親しみやすさ抜群。誰が制作しているかということ以上に、それらが楽しいものであることが重要であり、callmeの生むそれらは間違いなく楽しい。無理矢理まとめると、一見さんいらっしゃい状態なわけです。

キャラクター以外の部分は、まだまだ何かの借り物と評されることもあるかもしれませんが、それは彼女たちが“好きなもの”に正直だからでしょう。グループとしてはまだまだ出発したばかり。今後オリジナリティが磨かれていく過程を楽しみたいところです。


■激動の一年

振り返れば、今年はアイドル界激動の一年でした。

アイドリング!!!の解散やBerryz工房の活動停止といった、活動そのものが終わってしまう事態、前述したドロシーの分裂、ラップするアイドル・ライムベリー三人のうち二人が卒業(ほぼ同時に一名加入)のようなグループの価値が大きく揺らいだ出来事などが次から次に起こったのです。

定義の話からはじめましたが、最悪がどんどん更新される最悪の定義がわからなくなっていく一年といってもいいかと思います。いや、まだ数カ月残っているのが怖くてなりません。

その激動の一年を締めくくる――わけではありませんが、10月28日には、callmeの1stアルバムがリリースされます。タイトルは『Who is callme?』。 すでに発表されている楽曲は良曲揃い。先日行われた原宿アストロホールのワンマンライブで披露された“新曲”も素晴らしかった! きっとモヤモヤしっぱなしのオタクを納得させる出来になっていることでしょう。

そもそも、そんなことはどうだっていいその他大勢の方々にとっては、おいおいアイドルすげえじゃねえかという内容になっているのではないかと思います。


(小池啓介)